トップへ

娘から借金する夫、イビリが生きがいの姑…解放されて感じた「空の青さ」【私の離婚】

2016年06月01日 10:02  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

日本では、年間約23万組もの夫婦が離婚しています(平成25年「人口動態統計」より)。離婚の数だけ、様々な苦悩や葛藤、夫婦の道のりがあったはず。今回、弁護士ドットコムの体験談募集コーナーに投稿した岡田アキコさん(58=仮名)にとって、30年間の結婚生活は、同居する姑からのイビり、夫の女遊びに借金・・・。苦行のデパートのような毎日でした。


【関連記事:夫が死んだら義母と縁をきる「姻族関係終了届」の書き方】


アキコさんは高校卒業後に上京、知人の紹介で知り合った呉服屋の2代目の男性タカシさんと結婚します。結婚と同時に、義実家での同居がスタート。3人の子に恵まれましたが、夫の浮気と借金、そして横暴な姑に苦しんだ末に「離婚」を決意したアキコさんが得た「幸せ」とは―—。


離婚によって、ようやく「笑えるようになった」というアキコさんが、「平穏な毎日を送れ、空の青さや星の輝きに感動出来る今は幸せです」と語りました。 


****


アキコさんの結婚生活は、苦労の連続でした。しかし、30年もの長きにわたる我慢の日々が限界を迎えたのは、夫が、娘に100万円以上の借金をしていることがわかった時だったといいます。この時、アキコさんの勘忍袋の緒がきれました。


アキコさんと夫のタカシさんが出会ったのは、1980年代のことです。生まれ育った福島県を離れ、千葉県内の歯科医院で歯科衛生士として働き始めたアキコさん。まだ歯科衛生士の資格をもつ女性が珍しい時代でした。当時は今とは違って、結婚も早い時代でしたから、就職の次は結婚。「誰か紹介してください」と冗談まじりに先輩に持ちかけ、紹介されたのが、呉服屋の二代目だった近藤タカシさん(当時23=仮名)でした。


初対面はあまり良い印象ではなかったものの、タカシさんの積極的なアプローチで交際がスタート。タカシさんを知る人からは「あの人は遊び人で離婚歴もあるから止めた方がいい」と忠告されました。しかし「元来人を信じてしまう性格」のアキコさんは、「私の住まいとしていた古い風呂無しアパートで神田川生活を楽しんでいました」といいます。 交際から2年で結婚。歯科衛生士の仕事を辞め、呉服屋を営むタカシさんの家に嫁ぎました。ここから、アキコさんの苦労が始まっていきます。


同居する義母は、この家でアキコさんをイビることに生きがいを感じるような人でした。朝早くから、家中の床拭きを命じられますが、どんなに丁寧に拭いても姑から駄目出しされ、一度では終わりません。妊娠が分かった時には、「どうせそんな子無事に良い子に生まれる訳ないだろ」と言われ続け、笑うことすらできなくなりました。


臨月を迎えると、実家近くの助産院で、無事、健康な女の子を出産します。しばらく実家で過ごしていましたが、出産から約1ヵ月後、嫁ぎ先に戻ることに。「辛い日々が始まるかと思うと嫁ぎ先が近づくに連れ涙が出てきました」。赤ちゃんとアキコさんを出迎えてくれたのは舅ただ1人。惨めさと不安から、長女を抱いてただ泣いたことを、その日の夕食に食べたレンコンの炒め物の味とともに、今でも思い出すそうです。


自宅に戻った後は、姑から女中のようにこき使われる日々が再び始まりました。赤ちゃんの布オムツを洗うのは、まだ誰も起きていない朝4時。姑が「臭い」と文句を言うからです。おっぱいをあげている最中に、買い物にすぐ行けと命じられることもありました。


姑のいじめに耐えられず、何度も子どもと実家に帰りましたが、そのたびに、「自分が我慢すればなんとかなる」と考え、嫁ぎ先に戻ったそうです。しかしあるとき、積もり積もったストレスに耐えきれず、同居を解消し、タカシさんと3人の子どもたちとでアパート暮らしを始めました。不安はあるけれども自由な暮らしが始まるはずでした。


●女に目がくらみ、「商店街の金600万円」を使い込んだ夫


思いがけず、一番自由を満喫したのはタカシさんでした。姑の監視がなくなったことで、ほとんど家に帰らないようになり、たまに帰った時に持ち物を探ると、飲み屋の領収書やソープ嬢の名刺が出るわ出るわ。問いつめると浮気を白状しましたが、悪いとは思っていないようで、女遊びをやめません。


それどころか、タカシさんは呉服屋の仕事で集金した金を仕入れ先に支払わず、全て女と酒に使うようになったのです。アパートの家賃も滞りはじめ、アキコさんは幼い3人の子どもの世話をしながら、内職をする日々が続きました。


そしてとうとう、事件が勃発しました。家庭を顧みず、火遊びを繰り返していたタカシさんが、マリエという女性に本気になってしまったのです。呉服屋の客だった、マリエさん(35)は、シングルマザーの美人でした。タカシさん以外にも関係をもつ男性はいましたが、マリエさんの美貌と身体に溺れたタカシさんは、借金を重ね、数百万円を貢ぐようになります。


夫に会うことを辞めてほしい、アキコさんがそう頼み込んでも、「(タカシさんが)勝手にやっているだけ」と開き直るばかり。あろうことか、タカシさんは、商店街の会計という立場を悪用して、600万円を使い込んでしまいます。 使い込みの発覚後、タカシさんと舅は商店街の集まりで土下座して謝ったそうです。


しかし、その後も懲りずに、別の韓国人女性に数百万円を貢ぐ有様。さらには、シングルマザーの実の娘にまで、100万円以上の借金をしていたことがわかったのです。 この時、タカシさんのだらしなさに呆れ、アキコさんは別れる決心をします。


●「お母さん(姑)を連れて川に飛び込む」と舅が離婚に反対


 しかし、唯一の味方だった舅が、離婚を許さなかったのです。


舅は「そんな事するならお母さん(姑)を連れて川に飛び込む」と言い、首を縦に振りませんでした。ちなみに、アキコさんをいじめていた姑はこの頃、「自分は病気だから何もやらない」と「鬱病宣言」をし、少しおとなしくなっていたようです。


舅は離婚を認めませんでしたが、アキコさんの中ではもう、1人で生きていく覚悟ができていました。20年ぶりに歯科衛生士に復帰し、仕事に没頭することで、辛い日々をやりすごします。成人した子どもたちの勧めもあり、ついに離婚に踏み切りました。


離婚が成立した時、手元にはほとんど預金がありませんでした。姉に借金し、中古の家を購入すると、次女夫婦がローンを支払ってくれることに。さらに彼らは、薬学部の学生だった末の息子が一人前になるまで、一緒に面倒を見るとも言ってくれました。「いつの間にか子供たちはみんな成長してくれていたのです」。


中古の家に引っ越してからは、ふつうの日常や、四季の移り変わりがただ嬉しくて、「やっと笑う事ができるようになった」といいます。


嫁ぎ先を出てから、舅はガンを発症し、わずか3ヶ月で亡くなりました。タカシさんに貸した金は返らず、毎月支払うと約束した慰謝料も支払われていません。しかし、姑のいじめやタカシさんの女遊び、度重なる借金から解放された今、アキコさんは、こう語ります。


「平穏な毎日を送れ、空の青さや星の輝きに感動出来る今は幸せです」。


(この記事には、不倫や離婚、借金など、法的な問題に発展する可能性があるキーワードがたくさんあります。下記の関連記事に類似テーマの法的解説を掲載しています)