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大野智の“不自然な演技”はコメディ向き!? ベッドルームの駆け引き描いた『セカムズ』第7話の衝撃

2016年06月01日 06:11  リアルサウンド

リアルサウンド

(C)タナカケンイチ

 鮫島零治(大野智)と柴山美咲(波瑠)の“初キス”に焦点が当てられた『世界一難しい恋』第7話は、ベッドルームでの男女の駆け引きーーいわゆるグダとグダ崩しを、“素人童貞の作戦”というアクロバティックな切り口から描き出すことで、一瞬たりとも気が抜けないスリリングな展開となった。同ドラマには、恋愛指南の要素があることをたびたび指摘してきたが、今回はほとんど何も学ぶところがなかったといって良い。ただひたすら零治のダメ男ぶりに「あちゃー!」と驚き呆れるばかりで、ある意味、大野智のコメディアンとしての才覚を見せつけられた回だった。


参考:ジャニーズWEST・小瀧望、愛嬌のある演技で急浮上ーー『セカムズ』三浦役がハマったワケ


 第6話のラスト、電話で話して仲直りしたことから、美咲は零治の自宅へと向かう。付き合い始めの若き男女が深夜に逢瀬するのだから、視聴者は関係の進展を期待したはずだ。しかし、零治は違った。自分のベッドの横に布団を敷き、そこに美咲を寝かせ、寝顔を見ては嬉しそうにニヤけているばかりである。巷では、いざ女性と一夜を共にしながらも欲情せず、手をつないだりして寝るだけの“添い寝男子”なるものが存在するらしいが、零治はそれ以上の淡白さだ。もちろん、零治の世話役である村沖舞子(小池栄子)が、この事態を黙って見逃すわけがない。「泊まりにきているのにキスもしないなんて、彼女がかわいそう」と零治を責め、まさか経験がないのかと問い詰める。すると零治は「そんなのは相手からされるものだ」と驚きの発言をした。 つまり零治はこれまで、財産目当ての女性から迫られて、なんとなく応じるばかりの“マグロ男”だったというのだ。ただ相手からくるのを待っていれば済むという意味では、そういうサービスを受けているのと大差ないので、明言は避けていたが、事実上の素人童貞と見て差し支えない。


 さらに、部下の三浦家康(小瀧望)が、持ち前の“空気の読めなさ”でトリックスターぶりを発揮。これまで堀まひろ(清水富美加)にアプローチしてきたものの、振り向いてもらえないと悟った彼は、なんと美咲にターゲットを変えるのだ。トリックスター=いたずらものは、物語を引っ掻き回して混乱をもたらすとともに、主人公になにかしらの気づきやチャンスを与えるものだが、彼の軽薄なイケメンキャラは“うざいけれど憎めない”というポイントを突いており、うまくその役回りを演じていたように感じた。妙にガタイが良いことも含め、ジャニーズWEST・小瀧のキャラを活かした配役といえよう。彼にはこのままオモシロ路線を突き進んでほしいものだ。


 さて、三浦が絡んできたことによって紆余曲折があったものの、結果的に美咲と観覧車に乗ることに成功する零治だが、そこでキメるはずだった“キス作戦”もあえなく失敗する。周囲のアベックに感化され、ギラついたところまでは良かったが(表情もなかなかリアルだった)、いざ肩を寄せ唇を奪うとなると、素人童貞の零治にはタイミングがつかめない。「何も考えずにブチュっとやっちまえば良いんだよ!」とエールを送ったのは、筆者だけではないはずだ。


 かくして失敗続きの零治は、専属運転手・石神剋則(杉本哲太)に相談した末に、“ベッドが壊れて転げ落ち、隣の布団で寝ていた美咲に偶然キスしてしまう作戦”という、卑怯かつ姑息な手段を思いつく。石神と夜なべしてベッドにカラクリを施し、うまくいくよう何度も特訓する姿は、側から見ていても悲しくなるものだった。まさか天下のアイドル・大野智にここまでさせるとは、セカムズ制作陣の本気度がうかがえた瞬間だ。もちろん、この作戦も失敗。当然である。迫られもしないからグダることもできない美咲が(こうなったら自分から……)と、大野のベッドに乗った瞬間に装置が作動したため、ふたりしてベッドから転げ落ちた挙句、その魂胆まで見破られるという最悪の結果となったのだった。


 キスが遠のいただけではなく、器の小ささまで露呈してしまい、いきおい美咲にクビまで宣告してしまった零治は、ここからどう挽回するのだろう? 次週予告ではなんと、相談役だった村沖とベッドインする気配を漂わせていたが、まさか……。 『世界一難しい恋』とのタイトルに負けじと、かなりの無理ゲー感が漂い始めた本ドラマ。大野智のどこか不自然な演技が、こんな風にハマるとは驚きである。危なっかしくて、今夜放送の第8話からも目が離せそうにない。(松田広宣)