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【ニュル24顛末記】雹、落雷、豪雨。ノルドシェライフェの洗礼

2016年05月31日 18:51  AUTOSPORT web

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写真
今年もニュルブルクリンク24時間を取材、撮影してきましたので、その顛末記をお伝えします。日本を発つ前、現地の天気予報をチェックするとレースウイークの週末は毎日降雨の予報。ニュルだし雨はまあしかたないなと覚悟していたのですが、決勝日の天気の悪さは予想を遥かに超えていました。

 土曜日の午後3時半にスタートしたレースを、まずは1コーナーで撮影し、そしてすぐに北コースへと移動。その頃、まだ雲間からは時おり青空が見えていました。しかし、直後にコースサイドで赤旗が掲示され、レースはいきなり中断となってしまいました。ニュルの場合、ガードレールが壊れるほどの大きなクラッシュがあっても黄旗止まりのことが多いので、赤旗が出るとはよほどのことが起こったはず。心配しながらレース再開をコースサイドで待っていました。

 やがて、遠くの空が黒い雲で真っ暗になり、稲光がピカピカと。これは確実に降るなとレインウエアを着た直後、大粒の雨が降ってきました。それは、まるで空から無数の水鉄砲で狙われているような強い雨。でも、雨ならまだいいんです。続いて降ってきたのは、アポロチョコほどもある(例えが子供っぽくて恐縮です)雹(ひょう)! 最初はまだ「おいおい雹だよ」と余裕で笑っていられましたが、頭やカメラにカコン、カコンと無数の氷粒が強く当たるようになると、さすがに笑う余裕はなくなり、節分の鬼のようなみじめな気分に。あっという間に、あたり一面真っ白けです。

 しかし、周囲に身を隠すようなところはまったくないため、しかたなくカメラや望遠レンズを地面に置き、その上で四つんばいになり背中で機材を守ります。既に地面は水を含んだ泥でネチョネチョ。そして、背中には容赦なく雹が当たり「痛い、痛い」と我慢できずに声が出ます。雹だけでなく雨もシャワーのように全身に強く降り掛かり、靴の中やスボンの中(つまりパンツですね)は、あっという間に水でグチャグチャに。レインウエアがまったく役にたたないほどの強い雨と雹に、「勘弁してくれー」と、つぶやきながら傘を持ってくるべきだったと心から後悔しました。

 しかし、ニュルのお天道さまは、それだけでは許してくれませんでした。雷の音がだんだん大きくなってきたと思ったら、すぐそばに「ドカーン」と落雷が。一緒にいた日本人カメラマンが「昔、ここで雷に打たれて亡くなったカメラマンがいるんだよね」と、ナイスな情報を伝えてくれました。想像してください。泥の上で雹に打たれながらビショビショで四つんばいになり、雷に怯えおののくオッサンの姿を。まるで宗教画のような、それは凄惨な光景だったに違いありません。

 雨も雹もなかなか降りやまず、そんな厳しい状況が永遠に続くように感じられました。時間にして20~30分ぐらいだったと思いますが、ようやく雹がやみ、雨足も少し弱まったので立ち上がると、次は濃い霧があたり一面に。その頃コース上では雹に乗ってスリップやクラッシュするマシンが続出していたようですが、こんな悪天候の宝石箱みたいなコースで、24時間レースをするドライバーたちは本当にスゴイと改めて思ったのでした。

 さて、肝心の雹の写真ですが、カメラを守るのに精一杯で撮影できませんでした(雹の写真は広報サイトより拝借……)。報道カメラマンとしては失格だと反省していますが、ひたすら湿っぽいハナシが続きうんざりだと思いますので、最後は太陽のようにキラキラしたお姉さまの写真を、どうかお楽しみください。