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塚本奈々美のモタスポ界隈「滑ることをコントロールすればいい!」

2016年05月31日 15:41  AUTOSPORT web

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シルエイティ
レーシングドライバーの塚本奈々美です。前回も書かせて頂きましたが、私は日本で唯一、ドリフト競技と本格的なサーキットレースの両方を戦う女性ドライバーです。もしかして、世界で唯一かも知れません(笑)。

 さて、このドリフトとレースは、一般的にタイヤを滑らせるテクニックと逆に滑らせずにグリップさせるレースという相反する性質があります。その両方をやることに、「なぜ?」と質問されることが実に多いのですが、元々ドリフトを始めたきっかけは、『速く走りたい』と思ったからです。

 速く走るためには、タイヤが滑るか滑らないか、ギリギリの領域を使いながらクルマをコントロールしなくてはなりません。滑ることに抵抗があったり、怖がっていては速く走れないのではないか……と悩んでいた私は、「ならば滑ることをコントロールすればいいじゃないか!」と思うに至りました(笑) そこでD1GPのトップドライバーのひとりであり、タイムアタックでも数々の実績を持つ日比野哲也さんに師事、というか2年越しでつけ回して弟子入りしました。そして、競技としてドリフトを始めてわかったのですが、横滑りをするからといって、スピンみたいなことをちょろちょろっとすればいいわけではないということ。ドリフトと言うと、先ずは速さ・動きの鋭さ・エンジン音にスキール音と、見た目の派手さに目が行きがちですが、ドリフト競技も常に進化しており、その裏には実はすご~く高度なテクニックが詰まっているのです。ということで、私はドリフトの奥深さと難しさに日々悩まされながら、少しずつレーシングドライバーとして成長できるように頑張っています。

 2013年、私がドリフトを始めて間もなく、Gazoo 86/BRZ Raceへの参戦が決まったのですが、ドリフトをしていたお蔭でピーキーなFRの操りや、危険回避の際に何度も助けられました。私以外にもドリフトを練習に取り入れる86ドライバーもいるし、スーパーカーレースに参戦するアマチュアドライバーの講師を務める方の中でもドリフトを練習メニューに取り入れたり、また、織戸学選手、谷口信輝選手、片岡龍也選手、山野直也選手など、現役のスーパーGTドライバーでD1GPに出場経験のあるドライバーは意外と多いのです。

 こうしたドライブ技術の習得に加え、ドリフト業界に足を踏み入れて得たことは本当にたくさんあります。自分ひとりでクルマをセッティングしたり、時には修理もする必要があるドリフトは、クルマに関するより深い知識を与えてくれています。

 また、簡単な定常円(円を描いてドリフトすること)でも子どもたちやクルマに興味のない人に興味を持たせ、時には感動を与えることが出来ることに、ドリフトのエンターテインメント性の高さを感じました。そこで私が取り組んだのが、ただ競技に参加するのではなく、常にエンターテインメントと組み合わせたマシンをプロデュースすることでした。2015年には映画「新劇場版頭文字D」のプロモーションアンバサダーに就任し、同コミックに登場する佐藤真子が駆るインパクトブルーのシルエイティを実車で再現、としてD1レディースリーグに参戦しました。おかげ様でとシルエイティはテレビや雑誌でも数多く紹介され、大人気スマホアプリ「ドリフトスピリッツ」のゲームにも登場するなど、大きな反響を得ることができました。

 そして、今季は近い将来のD1GP出場を目指してD1東西日本シリーズ戦に参戦するにあたり、秋葉原系ドール企業の「アゾンインターナショナル」をメインスポンサーに迎え、シルビア(S14)を同社の人気キャラ「えっくす☆きゅーと」でフルラッピング。キャラクターたちと一緒にレディースリーグにもダブルエントリーし、シリーズを制して「ドリフトの女王」の座を勝ち取ろうと考えています。今やクールジャパンコンテンツとして世界で人気があるドリフトに、私ならではのエンターテインメントの要素を加え、内外の多くの方にドリフトの面白さを発信して行きたいと思ってます。

●塚本奈々美プロフィール:
レーシングドライバー(JAF国際Bライセンス、D1-Aライセンス)。今季は、GR86/BRZ、D1西日本・東日本シリーズ&レディースリーグに参戦。MotorFan's YEAR2016 PR大使、映画「新劇場版頭文字D」プロモーションアンバサダー、山梨県やまなし大使、女子カート部(JKB)部長、そのほかモデル・タレントとしてTV・CM・イベントなどでも活躍。
http://nana-jkb.com/