トップへ

フォーリミ、ビーバー、妄キャリ、直太朗、櫻子…6月1日発売新譜から注目作をピックアップ

2016年05月31日 13:51  リアルサウンド

リアルサウンド

04 Limited Sazabys『AIM』

 その週のリリース作品の中から、押さえておきたい新譜をご紹介する新連載「本日、フラゲ日!」。6月1日リリースからは、04 Limited Sazabys、SUPER BEAVER、妄想キャリブレーション、森山直太朗、大原櫻子の作品をピックアップ。ライターの森朋之氏が、各アーティストの特徴とともに、楽曲の聴きどころを解説します。(編集部)


(関連:04 Limited Sazabys、SUPER BEAVER、妄想キャリブレーション、森山直太朗、大原櫻子の最新MVはこちら


■04 Limited Sazabys『AIM』(SG)


 今年4月に念願だった地元・愛知での野外フェス『YON FES 2016』を開催(クリープハイプ、WANIMA、KEYTALK、キュウソネコカミ、BLUE ENCOUNT、SUPER BEAVERなどを招き、2日間で2万人を動員)、バンドシーンにおける知名度と影響力の高さを改めて示したフォーリミ。メジャー2ndシングル『AIMからも現在の彼らの勢いがリアルに伝わってくる。印象的なのは、収録された4曲それぞれの“狙い(AIM)”がはっきりしていること。メロコア直系の高速2ビートとポップなメロディという自らの武器を強調した「climb」、陰のあるメロディラインとともに別れに伴う喪失感を描いた「fog」、めまぐるしく展開する楽曲構成のなかでメンバー個々のプレイヤビリティの高さが感じられる「cubic」、穏やかな幸せが伝わってくるウェディングソング「Give me」。自分たちの出自(メロコアシーンからスタート)、現在置かれている場所(本格的ブレイクのチャンス)、これからの展望(ロックシーンを超え、メインストリームへ進出)を過不足なく伝える、本当にバランスの取れたシングルだと思う。メインソングライターにしてフロントマンのGENは本当にクレバーでしたたかだ。


■SUPER BEAVER『27』(AL)


 “みんなで声を合わせて歌い、踊る”というフォーマットが主流になって久しいバンドシーンにおいて、あくまでも“1対1”のコミュニケーションを追求してきたSUPER BEAVER。彼らのライブ動員が上がり続けているのは(今年春のツアーでZepp DiverCity TOKYO公演をソールドアウトさせた)、安易なトレンドには乗らず、しっかりと自分たちのスタイルを貫いているからだと思うが、その姿勢はニューアルバム『27』にも強く反映されている。“僕らは大人になったんだ”という宣言(「27」)から始まる本作で彼らは“自分が好きなもの、正しいと思うことを貫き、人としてカッコよく生きよう”ということだけを何度も何度も主張している。それがまったく鬱陶しくないのは、その生き方を彼ら自身が体現していること、そして、そのことをオーディエンスのひとりひとりに本気で伝えようとしているからだろう。1対1の関係性を強く結びながら、そのまま大きなムーブメントへとつなげていくーー『27』が目指すところは、バンドシーンの在り方に大きな風穴を開ける可能性を持っている。


■妄想キャリブレーション『ちちんぷいぷい♪』(SG)


 秋葉原ディアステージでデビュー、アニメ、アイドル、コスプレなどに精通するメンバーが揃う、でんぱ組.incの妹分的グループ「妄想キャリブレーション」による1stメジャーシングル。和テイストのメロディとスカビートが共存する「幻想恋花火」、トランス的シンセとギターロックが絡み合うサウンドが印象的な「悲しみキャリブレーション」など、これまでにも音楽的なトライアルを重ねてきた“妄キャリ”だが、メジャー進出第1弾となる「ちちんぷいぷい♪」はバッキバキのエレクトロ・サウンドと超キュートなアイドルポップを見事に融合させたナンバーに仕上がっている。作曲・編曲はDJ’TEKINA//SOMETHING(ボカロPとして活動を開始、アイドル、ボカロ、EDMなど幅広いジャンルで活躍する“ゆよゆっぺ”の別名義)。BABYMETAL、バンドじゃないもん!などの楽曲を手がける彼の鋭利なクリエイティビティと“妄キャリ”メンバーの濃密なキャラクターが合致した本作は、特異な進化を続けているアイドル文化の新たな到達点と言えるだろう。夏祭りを舞台にした胸キュン恋愛を妄想交じりで描いたリリックも秀逸。


■森山直太朗『嗚呼』(AL)


 「どこもかしこも駐車場」(2013年)「コンビニの趙さん」(2014年)は森山直太朗の巨大な才能を証明する名曲だと思うが、優れたな現代詩でもあるこれらの曲は一般的な理解を得られたとは言い難く(実際「ああいう面白い曲もいいけど、「さくら(独唱)」「生きとし生ける物へ」みたいな曲を歌ってほしい」という声も少なくない)、それが2015年9月から半年間に及んだ“小休止(活動休止)”の遠因になったところもあると思うのだが、ニューアルバム『嗚呼』で直太朗は、“圧倒的な普遍性ゆえの前衛”と“大衆音楽としてのわかりやすさ”をギリギリのラインで結び付けてみせた。そのことをもっとも端的にしているのがタイトル曲「嗚呼」。喜び、悲しみ、怒り、驚き、絶望、気付きなど、つまり意味を超えた響きである“嗚呼”という言葉にこれほどまでに豊かな情感を含ませることができる歌い手は、彼以外にはいない。ただただ“嗚呼”というだけのこの曲のサビに触れるだけでも、あなたには生きる価値がある(って言い切る)。


■大原櫻子『大好き』(SG)


 藤原さくら、新山詩織、chay、HARUHIなど個性豊かな女性シンガーソングライターが数多く存在する音楽シーンにおいて、“王道”という言葉がいちばん似合うのは大原櫻子ではないだろうか。映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』のヒロイン役としてデビュー、そのままソロのシンガーソングライターとしての活動を軌道に乗せ、昨年末にはNHK紅白歌合戦に出演。その圧倒的なメジャー感は、5thシングル『大好き』にも受け継がれている。作曲は亀田誠治、作詞は大原と亀田の共作による表題曲のキャッチフレーズは“セツナくも POPなラブソング”。Aメロ、Bメロ、サビ、Cメロ、落ちサビというJ-POPド真ん中の構成、真っ直ぐで爽やかな声質を活かした旋律、“君の夢を追いかけてほしいけど、ホントはもっと一緒にいたい”的な歌詞を含め、ツッコミどころがまったくないプロダクションが実現しているのだ。8月から始まる全国ツアーのファイナルは初の日本武道館公演。アーティストのイメージに合った質の高いポップソングをマスに向けて発信するというスタイルが現在も有効であることを、彼女はひとりで証明し続けている。(森朋之)