昨今のブームで、ペットショップで売買される猫の値段はこの1年で2倍ほど跳ね上がり、経済効果は「ネコノミクス」とも呼ばれている。それだけ大量の猫が繁殖させられ、商品として流通すれば、多くの「売れ残り」も生じるが、彼らはどこへ行くのだろうか――。
5月30日放送の「バイキング」(フジテレビ)で、猫ブームに怒る愛猫家たちが生出演し、ブームを煽るマスコミや悪徳ペット業者への憤りを訴えた。東日本大震災での現地取材をきっかけに、猫の保護活動を始めたジャーナリストの山路徹氏は、悲痛な面持ちでこう語る。
「コンビニの食品と同じで、要らなくなったら廃棄される」
「爪が伸びっぱなしで肉球に食い込んじゃってる子も」
山路氏が明かしたのは「引き取り屋」という商売の存在。ペットショップで売れ残ったり、繁殖能力がなくなったりした犬や猫を、1頭あたり数万円単位で引き取るビジネスのことだ。昨年5月23日の朝日新聞で、驚くべき劣悪な環境で飼養されている「引き取り屋」の犬猫たちの存在が報道された。
番組には、記事を書いた朝日新聞の太田匡彦記者がVTRで登場。取材した引き取り屋は、従業員が3人しかいない中、「200~300頭の犬や猫を抱え、動物愛護法違反に相当するようにみえる状態で飼養管理していた」と振り返る。
記者は悪臭のひどさや、プレハブの中にビッシリと置かれたケージ全て犬が入っていたこと、吠え声がうるさく「悲惨という言葉では言い表せない」状況を淡々と説明した。犬がいる建物は3、4棟あり、猫は1つの棟に50匹弱詰め込まれていたという。
「疲れ切ってグッタリしている子がほとんどでしたし、爪が伸びっぱなしになって肉球に食い込んじゃってる子もいました。ノミやダニに感染するような環境ですので、耳の後ろを掻いてしまって肉が見えるような状況にまでなっている猫もいました」
さらに「ペットショップ等で子犬や子猫を買われる一般の飼い主さんからしてみたら、想像を絶するような環境であることは間違いないと思います」と断言する。
ペット業者からの持ち込みを拒否できる「改正法」がアダに
現在の法律では、「引き取り屋」の存在は違法ではない。すべての引取り屋が同じではないにしろ、こうした劣悪な環境での飼育が問題視されているという。
しかし引取り屋の男性の言い分は「殺さないで、死ぬまで飼う。僕みたいな商売、ペットショップや繁殖業者にとって必要でしょう」(朝日新聞より)というもの。背景には、2013年9月に施行された動物愛護法の改正がある。
一度飼ったら一生面倒をみるよう徹底させ、安易な殺処分を避けるため、ペット業者からの持ち込みを自治体が拒否できるようになったのだ。結果として、「引き取り屋」ビジネスが、今まで以上に活用されるようになってしまった。山路氏は、こう指摘する。
「殺処分数は減ったけれど、見えなくなったってことで、それをどう考えるのか」
坂上忍「もう繁殖すんのやめてくんないかな」
これにMCの坂上忍は、「結局改正した意図が伝わってないで、一番弱い生き物がたらいまわしになってるという印象を受けちゃうよね」と怒りをあらわにした。
「劣悪な環境で生き残って、生きてるだけで、それが果たして生きてるのかっていえるのかって話じゃないですか」
「ワンちゃんも猫ちゃんも、もう繁殖すんのやめてくんないかなって。いま現存している子たちだけで(十分)。それでも多いくらいだと思うんですよ」
太田記者が語った「飼い殺し」状態は悲惨を極めるものがある。その状況を作り出したのは業者だけでなく、安易に可愛さや癒しを犬猫に求め、ブームを作り出した我々の意識の問題も大きいのではないだろうか。(ライター:okei)
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