5月28~29日に開催された第44回ニュルブルクリンク24時間レースで、激戦のSP3Tクラスに参戦したスバルWRX STI NBRチャレンジ2016は、困難なレースを素晴らしいペースで走りきり、2年連続のSP3Tクラス優勝を達成。総合でも20位に食い込む大健闘をみせた。
■リストリクター、大クラッシュ……。16年の挑戦は苦難の連続
カルロ・バンダム/山内英輝/マルセル・ラッセー/ティム・シュリックという2015年と同様のラインナップで、2016年のニュルブルクリンク24時間に挑んだスバル。しかし、連覇を目指した2016年の挑戦は、プロジェクト開始から苦難の連続となった。
昨年の勝利によりエアリストリクターは縮小され、エンジンのパワーダウンを強いられたWRX STI。このクラスで最大のライバルなのは例年クラス首位を争うアウディTT勢だが、スバルは車体面での改良で、足りなくなったパワーを補い、アウディ勢に対抗しようとした。その改良を盛り込み、3月22日に例年どおり富士スピードウェイでシェイクダウンを実施した。
山内がステアリングを握ったWRX STIは、午前中こそ順調に走行を進めていたが、午後の走行の際、1コーナーで激しくクラッシュしてしまった。山内は右肩を打撲。WRX STIは「全損では……!?」と思われるようなダメージを負ってしまった。
しかし、スバル/STIはそこから懸命の努力でマシンを作り上げ、24時間レース2週間前に迫ったVLNニュルブルクリンク耐久シリーズにWRX STIを持ち込むことに成功する。迎えた24時間レースでは、予選でバンダムがアタックし、一時クラス首位を得るものの、最後は104号車アウディTTに逆転され、クラス2位となってしまった。
■雨のなかWRX STIが激走。会心の成績でクラス連覇達成
28日、24時間レースの火ぶたが切って落とされたが、レースは序盤から混乱を極める。突如として降り出した豪雨に、スリックを履いていたマシンたちが続々とコースアウト。バンダムがドライブしていたWRX STIも、コースアウトを喫してしまう。しかも眼前にはすでにクラッシュしていた車両が……。しかし、AWDのポテンシャルが発揮されたか、バンダムは間一髪で車両を避け、コースに復帰してみせた。
その後、雷雨や雹の影響でレースは3時間中断されたりと荒れに荒れたが、スバルWRX STIは、抜群の安定性をみせ快走。山内もクラス首位を奪う走りをみせ、大いに勝利に貢献。15年に続く連覇を飾った。しかも、完走101台中20位という成績は、雨でAWDのポテンシャルが発揮されたとは言え素晴らしい結果と言えるだろう。何しろ21位は名門クレマーが走らせた格上のポルシェで、多くのGT3カーをも上回った成績なのだ。
「スバルグループのチーム力を結集し、そしてスバルファンの皆さんに後押ししていただいたおかげでここまで来ることができました。しかし、やはりニュルは簡単に攻略できるものではないと実感しました」とチームを率いる辰己英治総監督はレースを振り返った。
「SP3Tクラストップでゴールできたことで、ファンの皆さんにも喜んでいただけたと思います。応援をありがとうございました。心からお礼を申し上げます」
スバル/STIがニュルで培った技術は、今後もSTIのパフォーマンスパーツ等に活かされてくはずだ。