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【詳報】大胆な作戦に出たロッシが第100回インディ500を制覇。琢磨は悔しいクラッシュ

2016年05月30日 12:31  AUTOSPORT web

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第100回インディ500/勝利のミルクを味わうアレクサンダー・ロッシ
100回目の開催を迎えた伝統のインディアナポリス500マイルレース。29日に行われた決勝レースは、ルーキーのアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)が勝利した。佐藤琢磨は、レース中盤に2番手へ浮上するも、163周目にバランスを崩しウォールに接触しスローダウン。悔しいリタイアとなった。

■勝負の分かれ目は終盤に起きたコーション
 アメリカ人ルーキーのアレクサンダー・ロッシが、インディカー・シリーズ初勝利をインディ500で達成した。ホンダは今シーズンの開幕5戦でシボレーに負け続けてきていたが、第100回目の開催という歴史的レースでシーズン初勝利を飾った。

 勝敗の決め手は163周目に起こった佐藤琢磨の単独クラッシュ。その後のレースでゴールまでをどう走るかが鍵だった。コースの清掃が終わってグリーンフラッグが振り下ろされたのは167周目で、ゴールまでは33周。ペースカーの後ろを4周走った後のリスタートで、最後までフルスロットルで戦い抜くのは難しかった。フルタンクで走れるのは30~31周が限度だったからだ。

 レースが再開された時のロッシは9位。トップ争いまでポジションを上げていくのは、オーバルレースが自身にとって2レース目のロッシには難しかった。そこで、ロッシの作戦を仕切るチームの共同オーナー、ブライアン・ハータは燃費をセーブしてゴールまで無給油で走る作戦を選んだ。

 その一方で、チームメイトのカルロス・ムニョスは、全力疾走でゴールを目指すことに。ポールシッターのジェイムズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン)、インディ500優勝経験を持つトニー・カナーン(チップ・ガナッシ)、ジョセフ・ニューガーデン(エド・カーペンター・レーシング)、そしてムニョスといった面々が彼とトップ争いを行うこととなった。

 194周目、ライバル達がピットインしたことでムニョスがトップに躍り出た。しかし、196周に彼も給油のためのピットインをしなくてはならなかった。これでロッシがトップに立つ。

 そして、199周目のターン4でガス欠症状が出ながら、ゴールまでを走り切った。スローダウンしてのゴールとなったが、4.4975秒の差を2位につけてチェッカーフラッグを潜った。
■先輩のアシストが勝利へと導く
 ロッシの優勝には協力者がいた。ライアン・ハンター-レイだ。先輩チームメイトは彼のすぐ前を走り、ルーキーの燃費セーブを助け続けた。

「自分たちがどうやって勝ったのか、まだ完全に理解できていない。共同オーナーのブライアン・ハータによる作戦が見事だった。そして、ハンター-レイが信じられないサポートをしてくれた。彼が自分を引っ張ってくれたから燃費をセーブでき、アンドレッティ・オートスポートの1-2フィニッシュが実現した」とロッシ。

「リードラップの最後尾まで順位が落ちたこともあった。そこから優勝できたのは、大胆な作戦に出て、想定した通りの走りができたから。とても嬉しい。人生が変わるレースになった。そして、伝統に従ってウイナーとして飲むミルクは、今まで味わってきた中で最も美味しいものだった」とも語った。

 ロッシのチームメイトのムニョスは、スピードによる真っ向勝負で勝利したが、燃費作戦を採用したチームメイトに次ぐ2位でのゴールとなった。まだ22歳。しかし、2013年のデビューイヤーと同じく結果は2位。ゴール後に号泣した後、「いつかこのレースで勝つ!」とリベンジを誓っていた。

「勝てるマシンになっていた。それはレース序盤でわかっていた。だから、勝機を待っていた。ホンダエンジンは強力だった。レース終盤の僕は思い切り攻めて走っていた。マシンはコーナーで滑っていたけれど、優勝に向って全力で走り続けていた。それだけに、2位は悔しい。残念な結果だ。あと半周あったら勝てていた。チームとすれば、1-2フィニッシュは素晴らしい結果だ。その点では自分も嬉しい。ホンダも1-2フィニッシュを飾ることができた」とも彼は語った。

 佐藤琢磨(AJ・フォイト・エンタープライゼス)は26位。序盤のハンドリング不調をセッティング変更で解決し、130周をかけてトップ10入り。しかし、フルコースコーションの出るタイミングが悪く、大幅ポジションダウン。リスタート後に前を行くマシンに近づき過ぎてダウンフォースを失い、ターン4でクラッシュした」と語った。