2016年05月29日 09:32 弁護士ドットコム
夫の不貞(浮気相手との性交渉)が発覚。離婚する気はないけど、慰謝料は支払わせたい!弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、ある女性からこんな相談がありました。
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投稿者はすでに、夫の不倫相手の女性と話をして、慰謝料150万円を受け取っています。一方、夫は、一度は不貞の事実を認めたものの、今は否定しているそうです。
投稿者の女性は「結婚を機に仕事を辞め、賃貸を解約し、車も売り、夫しか頼る人がいない土地へ来た私を放置」と悲痛な境遇を打ち明け、さらに「過度な外泊をし、ギャンブル、暴言、この前は鏡を投げられ私に当たりませんでしたが割れガラスが散らばり、私の口座から勝手に預金を引き出したり…喧嘩のたびに生活費を取り上げる、自分は好き勝手に遊び回る…」と夫に対する恨み節をぶちまけていました。
投稿者は夫から離婚を切り出されているそうですが、「離婚せずに夫にもこの苦しみをわかってほしいので50万程慰謝料請求したい」と相談しています。しかし一方で、「相手女性から150万いただいているのでムリなのでしょうか」と気にしているようです。
夫が不貞行為をした場合、相手と夫の双方に慰謝料を請求できるのでしょうか。また、夫と離婚しない場合でも、「お仕置き」的な意味で、夫に慰謝料を請求できるのでしょうか。柳原桑子弁護士に聞きました。
●家計内での金銭の移動にしかならない場合も
不貞行為は、配偶者とその相手との2人による共同不法行為です。慰謝料は2人ともが全額を支払う義務を負います。ただし、一方がいくらか支払いをした場合、その金額分については、もう一方が支払う分も減ります。
そもそも慰謝料とは、精神的苦痛を和らげるためのお金で、金額は当事者間の話し合いで決めることができます。当事者間でまとまらない場合は、訴訟において、不倫の期間や、不倫の結果、離婚に至ったか否かといった諸事情を考慮し、裁判所が決定します。
今回のケースで、慰謝料の全額が150万円だとすれば、不貞相手の女性からすでに全額支払われたことになるため、妻はそれ以上の額を夫に請求することはできません。いっぽう、慰謝料の全額が200万円だとすると、残りの50万円を夫へ請求することができます。
配偶者の不貞行為が発覚した結果、離婚には至らなかった場合でも、配偶者に慰謝料を請求できます。
ただ、配偶者に慰謝料を支払わせることが「お仕置き」になるかどうかは、慰謝料の原資が何かによります。例えば、結婚した後に夫婦で一緒に貯めた貯金などが原資であれば、その慰謝料は夫婦の共有財産という性質をもつため、結局は家計内での金銭の移動にしかならないともいえます。
逆に、夫婦間でお金の管理がきっちり分けられており、配偶者の貯金などから慰謝料が支払われる場合は、解決方法のひとつとして「お仕置き」もありうるかもしれません。
今回のケースでは、不貞をした夫から離婚を切り出されているということですし、どういう解決が良いのかは、今後のことをいろいろ考えて検討するべきでしょう。
【取材協力弁護士】
柳原 桑子(やなぎはら・くわこ)弁護士
1998年弁護士登録 第二東京弁護士会所属
離婚事件・遺産相続事件などの家事事件、破産事件、不動産関係事件等を中心に、民事事件を扱っている。「離婚手続きがよくわかる本」、「よくわかる離婚相談」、「相続・贈与・遺言」監修(いずれも池田書店)。
事務所名:柳原法律事務所
事務所URL:http://www.yanagihara-law.com/