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日本人初、モナコGP2制覇の松下「いままで見たことない景色だった」

2016年05月29日 09:31  AUTOSPORT web

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モナコで行われているGP2決勝レース2で日本人として初めてモナコを制した松下信治
マクラーレン・ホンダのテスト兼開発ドライバーを務め、ホンダの秘蔵っ子としてF1への登竜門カテゴリー、GP2に参戦している松下信治が日本人としては初めて伝統のモナコの表彰台、それもその中央に立ち、モナコに『君が代』が響き渡った。

 レース1で8位入賞を果たした松下は、リバースグリッドでポールポジションから土曜午後のレース2に臨むことになった。木曜に痛めた手首と人差し指はまだ完治しておらず、テーピングが痛々しく、右側のレーシンググローブを自分ではめることもできない状態だった。

 スタートの瞬間は発進加速がやや鈍く、2番グリッドのマービン・ケルコファーにアウト側から並ばれて前に出られてしまった。しかし松下は焦ることなくターン1に向けてイン側のラインをガッチリとキープし、ややレイトブレーキングでケルコファーよりも先にターン1に飛び込んで首位を守りきって見せた。

「クラッチのバイトが強すぎて動き出しでホイールスピンしてしまったんですけど、(ターン1のインを守って)その次の対処がすぐにできたので最悪の結果にはならずにすみましたね。マービンの加速が速かったんで並ばれちゃいましたけど、ブレーキングを我慢してなんとか前を守りました」

 そこからはファステストラップを連発する圧倒的な速さで一人旅に。1周目に2位に2.2秒差を付け、レース1で優勝し6位を走行するノーマン・ナトとファステストラップの出し合いをしながら周回を重ねて、20周目には2位に8.1秒差まで広げた。

「どのくらいのペースで走れば良いかエンジニアと無線で相談しながら、プッシュしたりしなかったり。結構エンジニアが厳しいんですよ(苦笑)。誰かとファステストの出し合いをしていたらしくて、それは絶対に勝ちたかったんでプッシュを続けました」

 ナトに2度に渡ってファステストを更新されたが、最終的に残り3周の28周目に松下がこの日のファステストラップを記録し、2ポイントのボーナスもゲットした。

 アドバイザーとして帯同していた鈴木亜久里は、安心して見ていられたと話す。

「バルセロナからプレッシャーがあって力が入ってしまって上手く走れていなかったよね。でも今日は『楽しんでレースをやりなよ』と話をして、力が抜けて良い走りをしていたね。これで勝ったっていうのはスゴく大きいよ。悪い流れを自分で元に戻せたと思う。次に繋がるレースができたよね」

 最後は2位に13秒の大差をつけて独走勝利。リバースグリッドのポールからの勝利とはいえ、本来の力が発揮できれば充分に速さがあることは証明できた。

 モナコにしかないロイヤルボックス下の表彰台でトロフィーを受け取り、松下は力強くガッツポーズを見せた。しかし、自分には厳しい。

「今まで見たことのない景色でしたけど(笑)、去年の初優勝の時の方が嬉しかったですね。今回だって、まだ100点ではないですから。週末全体を見れば、フリー走行で失敗したのが大きかったし、次のレースではそこもきちんとやりたいと思います」

 だが、これでここまでの悪い流れは断ち切ることができそうだ。次のバクーラウンドでは、レース1から勝利を狙っていくと力強く宣言した。

「もちろん勝ちを狙います。ちゃんと走れればトップレベルの走りができるのは間違いないということは分かったし、それをやるからならいかは自分次第ですからね。2年目だから結果がどうとか変なことを考えないで、純粋にレースだけに集中して走りたいと思います」