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深まる謎と勢力図刷新。今季のSFの難しさが第2戦岡山予選で明らかに

2016年05月28日 20:31  AUTOSPORT web

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スーパーフォーミュラ第2戦岡山の予選の模様。セッション開始を前にピットロードに並ぶ各マシン
昨年チャンピオンの石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING)が開幕戦での面目躍如と言わんばかりに見事にポールポジションを獲得した、スーパーフォーミュラ第2戦の岡山予選。一見、昨年どおりの見慣れた展開とも言えるが、今回の予選内容は昨年とはまったく異なった。昨年の岡山で2位表彰台を獲得した小林可夢偉(SUNOCO TEAM LEMANS)がQ1で脱落して、VANTELIN TEAM TOM’Sの2台、中嶋一貴、アンドレ・ロッテラーがQ3に残れないという、勢力図の大刷新がこの岡山で如実になったのだ。

 PPを獲得した石浦も、実は危うQ1落ちの危機を感じていた。「1セット目のニュータイヤが不発で全然グリップしなくて『これはヤバい』と思った」と石浦が話すように、石浦車はQ1に向けて良かれと思って試したセットアップが外れて、全然タイムが出なくなってしまっていた。石浦担当の村田卓児エンジニアは「頭が真っ白になった」と、その瞬間を振り返る。

「タイムを見てヤバイと思って、石浦のコメントを聞いて『ここじゃないか』と思った部分を変えて、それでなんとか良くなった。結果は出たけど、とにかく、タイヤと路面に振り回される形だった」と、村田エンジニアは今回の予選の難しさを語る。PPを獲得しながらもこれだけ苦労さしたということは、他のチームは、さらに難解な状況に陥っていたことになる。

 今回の岡山戦の難しさの一端は、タイムにも現れている。土曜日の練習走行のトップタイムは1分13秒622、当然、その後に行われる予選Q1は、練習走行以上のタイムが想定されているが、実際Q1のトップタイムは1分14秒0でコンマ4秒も遅くなっている。気温と路温はほとんど変わらず、理由はどのエンジニアに聞いても「?」で、挙げられる理由としては、セッションの間に入っているF3などのサポートレースの影響で路面コンディションが変化してしまったのではないかという仮設のみ。Q1を走行していたドライバーたちも、「フィーリングはいいのにタイムが出ない」と声を揃えて首を傾げる。

 昨年、石浦とタイトルを争った中嶋一貴もQ2で落ちてしまい、「感触としてはQ3に行けたかなと思ったのですが、周りがもっと速かった。アタックは失敗はしていないし、クルマのパフォーマンスを出し切って、これ以上何かできたかという気もしないけど、単純に速さが足りない。(原因は?)それが分かれば苦労しないです」と苦笑いを見せる。一貴担当の小枝正樹エンジニアも「タイヤを機能させられていない。原因がわからない」と、出口の見えない状況に陥っていることを明らかする。
■「人生で一番、史上最強に遅い」と嘆く可夢偉

 開幕をポール・トゥ・ウインの圧巻の強さで制した山本尚貴(TEAM 無限)も「フィーリングとしては悪くはなかったのですが、アタックを終えてタイムを見たらQ2とあまり変わっていなかった」と、6番手スタートに唇を嚙む。

Q1落ちで予選17番手となった可夢偉も、「まさかでした。ひとり、雪の上を走っているような感じだった。タイヤが温まらない。今回は人生で一番、史上最強に遅かった」と、敗北を認める。可夢偉を持ってしても、この岡山の不調の理由はまったく分かっていないという。「要するにこれはハマっているんでしょうね。脱出しないとヤバイ」「わからないんです。教えて下さいよ」と、メディアに答えを求めるほど、可夢偉の状況は深刻なようだ。

 今年からのヨコハマタイヤの特性を、まだまだ誰も掴みきれておらず、ほとんどのチーム、ドライバーが手探りで答えを探っている状況がこの岡山で明らかになった。明日の決勝はドライならばタイヤは無交換で走り切れる状況だが、雨の予報があり、ウエットコンディションになる可能性もある。ドライを望むドライバー、そして雨を望むドライバー。今のスーパーフォーミュラの難しさと、昨年と完全に変わってしまった勢力図。悲喜こもごもの声が予選後に聞こえた。