自動車大国ニッポン。その車を整備しているのが国家資格を持つ自動車整備士だが、責任の重さとは裏腹に、低賃金の実態があるようだ。
5月25日、自動車整備士1年目だという人物がツイッターに自身の給与明細を投稿した。手取り額は14万1654円。「車好きなら整備士になるのやめましょう」と呼びかけた。
確かに少ないが、これに対して7年目だという自動車整備士が「多いほうやな」と反応した。「こちらが残業なしでガソリン代を1万弱引かれたディーラー整備士7年目の給与支給額になります」と投稿した給与明細の差引給与額は10万8366円だった。
「整備士ってなんでこんなに儲からないの」「検査員にならないと生活できない」
求人・転職情報サイト「はたらいく」の「2014~2015 職種別平均年収・月収100職種徹底調査」によれば、自動車整備士の平均年収は275万円、月収は20万円となっている。ツイッターに投稿していた2人の収入は平均よりもかなり低いということになる。
このツイートは2300件近くリツイートをされ、話題に。7年目で手取りが10万円台だという事実に、「冗談だろ?バイトだよな?」「生きていけるの」と額が低すぎるという意見があがった。
「自動車整備士が自分の自動車を所有できない収入しかないっての、カカオ農園で働く子供たちがチョコレートを食べられない、の日本版かよって思う」
「自動車整備士の給料が安すぎる問題 命を直接的に預かる医者の給料が高いなら、間接的に命を預かる整備士の給料も高くするべきなのでは?」
また、他の整備士たちからも給与の低さを訴える声が相次いだ。
「毎日のように思うんだけど、整備士ってなんでこんなに儲からないのw 自動車業界離れようかなww」
「自動車整備士で食ってける世の中じゃないんだよなぁ…最低でも検査員にならんと生活すら出来ない、それか似て異なる業種へ進むか」
中には、11時間の残業がなかったら手取り額が10万円を切るという人もいた。また、元整備士で現在はOLをしているという女性は、仕事を変えたことで「給料も休みもストレスも倍以上良くなってる」と投稿。「整備士人口減るのも理解出来る。 今ならあの仕事は1年目で月の手取り30万もらってもいいと思う..」と考えを語っていた。
低賃金のせいで自動車整備士を目指す若者はこの10年間で半減
自動車整備士は国家資格であり、国土交通省が実施する「自動車整備士技能検定」に合格しなければいけない。試験を受けるには実務経験が必要となるので、自動車大学校や専門学校に通うのが一般的だ。
だが、熱意を持って資格を取得し整備士になったのに、給与が見合わないとあれば、整備士を辞めようと考える人が出てもおかしくない。実際に整備士不足は深刻なようだ。2016年4月に国交省の「自動車整備人材の確保・育成に関する検討会」がまとめた報告書によれば、自動車整備士を目指す若者は10年間で半減。また、約5割の整備事業場において整備士が不足しているという。
また、自動車整備業から転職をした100人に取ったアンケート結果では、転職の理由として、「賃金の条件が良くなかった」「労働時間の条件が良くなかった」があがっていた。
そのため報告書では、「自動車整備業の人材確保・育成のための課題、取り組むべき対応」に「『賃金向上』『勤務時間、休日・休暇の確保』『作業環境の改善』『興味にあった仕事、責任ある仕事の割り当て』」をあげている。労働環境を改善しなければ人材の流出は止まらない。ツイッターでは先行きを不安する意見もあがっていた。
「ほんと国家試験とって整備士やってる人間が10万に毛が生えたような給料で仕事してんのが理解に難を覚えるよな… 技術職としてかなりレベルの高い水準に置かれてる日本のサービスマンがこんな扱いだと車直す人がいなくなるぞ」
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