伝統のF1モナコGPと併催される重要なラウンドで、松下信治がGP2決勝レース2のポールポジションにつくことになった。スタートは日本時間の5月28日(土)23時10分の予定だ。
ここまで松下の週末は決して順調ではなかった。26日(木)のフリー走行では、わずか9周で、まさかのクラッシュ。サン・デボーテでタイヤをロックさせてバリアに刺さり、手首と指を痛めてしまった。
「バーチャルセーフティカー(VSC)が出てタイヤが冷えていて、ブレーキングしたらタイヤロックして、まっすぐバリアに突っ込んじゃいました。早めにブレーキングしたんですけど、それでも足りなくて。良い流れで来ていたんですけど、完全に自分のミスでした。ずっとステアリングを持っていたんで、衝撃で捻ってしまって、腫れています」
マシンの仕上がりは良く、チームメイトのセルゲイ・シロトキンは予選でポールポジションを獲得。しかし松下は走り込みが足りなかったせいで12位に終わってしまった。
F1が休日となる27日(金)に行われる決勝レース1、松下は「確実に走り切って何ポイントかでも獲りたい」という姿勢で臨んだ。上位勢がソフトタイヤでスタートする一方、スーパーソフトを選択する。
「上位と同じ戦略にしても意味がないですからね。チームからも確率論的にそっちの方が良いと言われたので、スーパーソフトでスタートしてクリーンエアで走れるような戦略にしました」
松下はスタート加速は良かったものの、1コーナーの混雑で13番手に後退。その後は追い抜きができないまま周回が進み、7周目にスーパーソフト勢が一斉にピットインしてソフトに交換しはじめた。これを見て松下は1周長く引っ張り、8周目にピットインをして、前を走っていたアーサー・ピックの前でコースに戻り、ひとつ順位を上げた。
「またスタートはバッチリだったし、モナコなのにターン1までに2台抜きました。でもターン1でアウト側にいったら、グチャグチャになっていて僕のブレーキングもちょっと早かったんで、結局そこでまたポジションが戻っちゃいましたね。その後クルマはすごく良かったんですけど、やっぱりここは抜けないですね」
コースの各所でクラッシュが相次ぎVSCが散発し、タイトル候補のピエール・ガスリーまでがフリー走行に続いてのアクシデント。ガスリーは18周目にプールサイドシケインふたつめの進入で前走車に追突して後退となる。23周目には首位ノーマン・ナトを追いかけていたシロトキンがプールサイドシケインふたつめの出口で縁石にヒットし、カウンターを当てたところ、バリアに一直線にクラッシュしてしまった。
松下はレース前の言葉どおり粘り強い走りに徹し、上位勢の自滅によって少しずつポジションを上げていった。ペースは1分22秒台後半を維持しており、上位勢よりも速い。
26周目を過ぎるとソフトタイヤでスタートした上位勢がピットインを始め、31周目には首位ナトもピットイン。これで15番グリッドからタイヤを保たせていたアルテム・マルケロフだけがタイヤ未交換で首位に立った。ここからマルケロフは1分22秒台前半のハイペースでプッシュし、実質トップのナトとのギャップを6秒から15秒まで広げる。そして停止車両の処理のために出されたVSC解除直後の38周目にピットインすると、なんとVSCのタイミングが有利に働いて、首位のままコースに復帰。驚きの自身GP2初優勝を飾ることになった。
松下は入賞圏内まで駒を進めて9位でフィニッシュしたが、7位のアントニオ・ジョビナッツィが再三に渡りヌーベルシケインでコースオフしながら順位を守っていたことが審議対象となり、5秒加算ペナルティが科されたため11位に降格。松下の最終結果は8位となった。
これによって28日(土)に行われる決勝レース2で、松下はリバースグリッドによってポールポジションからスタートすることになった。
「もちろん勝ちますよ。スタートさえ、ちゃんと決められれば負けないと思います。ビッグポイントが獲れれば、スペインから続いている悪い流れも、この気分も変えられると思う。いまは、それが一番欲しいんです」
ライバルのペナルティとリバースグリッドによるものとはいえ、苦境から這い上がって得たポールポジション。サポートレースを含めてもモナコGPで日本人ドライバーがポールポジションからスタートするのは初めてのことだ。伝統ある地で優勝する姿を、ぜひ見せてもらいたい。