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サービス残業「みんなやってるから」はおかしい! 現役弁護士が「残業証拠レコーダー」を開発した理由

2016年05月27日 20:40  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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昨今、ブラック企業に関する問題意識が高まっているが、サービス残業は依然としてなくならない。連日遅くまで働いたとしても、正当な対価が支払わなければ疲弊するばかりだ。

残業代を請求したいと思っても、そもそも残業代についての知識がないし、周りもみんなサービス残業をやっているのに自分だけ声を挙げるのは気が引けるという人も多いだろう。

GPSで残業時間を計測、サーバー側でデータ管理して証拠力を強化

そんな中、「サービス残業問題」をテーマに興味深いアプリが5月23日にリリースされた。『残業証拠レコーダー』というもので、日本リーガルネットワークが開発。現時点ではAndroid専用だが、今後はiOSにも対応していく予定で、利用者の増加を見込む。

同アプリは弁護士が労働基準法や実際の示談・裁判の流れをもとに開発。「残業代概算シミュレーション」では勤務地や、住宅手当の有無、業種など10問ほどの簡単な質問に答えることで、法律上残業代がいくらぐらいかを知ることができる。

残業代を支払わないブラック企業では、何らの理由をつけて残業代を払わないケースが多いため、労働時間の立証に役立つという。

そのほかの機能として、GPSにより会社のオフィスや取引先などにいた時間を計測。示談交渉や裁判での証拠になる「労働時間記録の証明書」を発行することもできる。データはスマホのアプリ内ではなく、日本リーガルネットワーク社のサーバーに保存されるため、残業証明の際に客観性を与えられる、としている。さらに、アプリからワンクリックで弁護士に相談・依頼することもできる。

「サービス残業は当たり前という社会的空気」を変えたい

日本リーガルネットワーク代表の南谷泰史弁護士は、「残業証拠レコーダー」の開発に至った理由を次のように語る。

「1つは『サービス残業についての知識のなさ』です。サービス残業など、労働条件に関する教育があまりされないので、知識がない人が多いのが現状です。そのため、会社から『うちは裁量労働制だから』など、残業代を支払えないもっともらしい理由を説明されると納得し、結果として泣き寝入りをすることになってしまうのです」

「労働時間の証拠が手元にない」という状況にも異を唱える。従業員の労働時間の記録にはタイムカードを使うことが多いが、出退勤時間を企業側に改ざんされる恐れがあるといい、「そもそも勤務時間の記録が従業員の手元に残らないことがおかしいと考えています」と指摘する。

このアプリを契機に「サービス残業は当たり前という社会的空気」という空気も変えていきたい、とする。

「『サービス残業はみんなやっている』という空気があると、『自分だけ請求しにくい』という気持ちになり、残業代を請求するというアクションを余計に起こしにくくしてしまいます。こうした空気を変えたいと思っています。このアプリが、多くの人に残業代について知り、残業代の請求は悪いことではないことをわかるきっかけとなれば嬉しいです」

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