昨年チャンピオンの石浦宏明のリベンジか、それとも開幕戦を制した山本尚貴が2連勝を果たすのか。今週末に開催されるスーパーフォーミュラ第2戦岡山ラウンドは、金曜日の占有走行から緊張感の高まる展開となった。この金曜のセッションの模様などから、第2戦の展開を探った。
「『ふざけんなよ!』というものすごく悔しい気持はありますけど、じゃあ、それを誰にぶつければいいのか。別に誰も悪くはないから、何とも言えないですよね」
この岡山までの1か月間は、精神的にも辛い日々だったようだ。開幕戦の予選Q1のことを石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING)に振り返ってもらったとき、石浦は包み隠さず、悔しさを表現した。開幕戦の鈴鹿、石浦は予選Q1の最後のアタックで、前のマシンがスピンしてイエローフラッグが出されたことで、その後ろでアタックをしていた石浦の予選タイムは抹消された。
抹消されたのは、たまたまスピンした車両の後ろを走っていた2台だけ。そのウチの1台の昨年チャンピオンが予選Q1で落ちてしまうという、不運極まりない、まさかの予選となったのだ。
今回の金曜占有走行でも3番手から14番手までがコンマ2秒以内というように、現在のスーパーフォーミュラは、超僅差の接近戦。そのため、予選グリッドと決勝スタートが結果の8割を占めると言っても過言ではなく、文字どおり1000分の1秒を争う際どいタイムバトルが繰り広げられている。予選の失敗は即、レースの勝負権離脱に繋がる。石浦も当然、それをわかりきっているだけに、開幕戦のQ1敗退を嘆いたのだ。
「開幕戦の黄旗はルール通りなので、誰にも責任はないと思う。だけど、自分のことだけで言えば、悔しさは尋常じゃないですよ。年間7戦しかないのに、そのひとつを落としたわけで、開幕戦の時点で今年のチャンピオン争いから『ハイ、消えた』と思ってしまうくらいの出来事でしたから。でも、それは別に誰も悪くはないから、何とも言えないですよね」
石浦はレースでは優勝した山本尚貴と同等以上のペースで周回しており、予選さえ普通にクリアしていれば、レースでは確実にトップ争いに加われるパフォーマンスはあった。ただ、リザルトからは第1戦の石浦は予選15位、決勝11位という数字しか残っていない。
「ファンの方でも、開幕戦の詳細を知らない方が多くて、『今年はダメだね~』みたいな声を聞いたので、見てろよ! と心の中で思っています」(石浦)
石浦の今回の岡山に懸ける意気込みの強さは想像に難くない。昨年の石浦はこの岡山でトップフォーミュラ初優勝を飾り、その勢いのまま、シーズンを制した。今回の岡山戦は開幕戦の不運を一掃するきっかけになるか、この第2戦が早くも正念場になっている。その背水の陣の石浦が金曜の占有走行のタイムを見てライバル視しているのが、開幕戦を制したTEAM 無限の山本尚貴だ。石浦が語る。
「ほぼ僅差だと思います。山本選手の1分16秒3(4番手)も、僕より条件の良くないタイヤで出しているタイムですので、その状態を考えると速いなと思いました。実質、超僅差だと思います。開幕戦も今回も彼があれだけ速いということは、ヨコハマタイヤへの合わせ込みがきちんと出来ている、何かを掴んでいるということですから、自分もそれを追いかけなきゃいけないと思っています」
一方、開幕戦を制した山本も、この金曜占有走行を見て、ターゲットを石浦に絞っていた。
「クルマの出来はそんなに悪くはないですけど、石浦選手が速いので、それを上回るにはもうちょっと合わせ込みが必要かなと思います。前回のテストからはかなり気温が変わっているので、そこの合わせ込みは、もっとベストのものがあると思う。ベースはいいですがもう少しプラスしたいですね。明日に向けての項目も出せたので、周りもまだタイムが延びてくるでしょうけど、僕らもまだまだ伸びシロはあると思っています」(山本)
開幕戦を山本が制したことによって、今年のホンダエンジンの出来の良さが評判になっているが、「たしかにエンジンも使いやすくなって、ドライバビリティは確実に良くなっていますけど、まだまだ開発を続けないと、すぐに相手に離されてしまいますから」と、山本は満足はしていない様子。
トヨタの石浦、ホンダの山本という構図とともに、今シーズンのスーパーフォーミュラの主導権をどちらが掴むのか。開幕を制した山本がこの岡山でも結果を残すことができれば、今季は間違いなく山本を軸にチャンピオン争いは展開することになる。その山本に昨年チャンピオンの石浦が待ったをかけることができるのか。それとも、新たな主役が名乗りを挙げるのか。この岡山戦が早くもシーズンの天王山になりつつある。