今年も、第一生命が毎年行っている「サラリーマン川柳コンクール」の結果が発表された。3万9551句の中から1位に選ばれたのは、「退職金 もらった瞬間 妻ドローン」。熟年離婚と無人航空機ドローンを組み合わせたこの句は特に男性からの支持が高かったという。
1987年から始まり、今年で29回目となるサラリーマン川柳。例年、メディアなどで注目を集めて入るが、もはや時代にそぐわないのではないかという見方もあがっている。
「サラリーマン川柳と言うより、シルバー川柳」「退職金があるだけ恵まれてる」
サラリーマン川柳が始まった1987年といえば、バブル真っ盛り。雇用も安定しており、正社員が多く労働者における非正規労働者の割合は約21%だった。だが、2015年はその割合が37%と1.8倍になった。
生涯未婚率も急上昇した。1985年は男女ともに4%だったが、2010年には男性20%、女性11%と大幅に上がっている。結婚をしない理由には金銭的な理由をあげる人も多い。
そのため、いかにも「正社員・男性・既婚」の人が詠んだと思われる句が多いサラリーマン川柳に疑問の声が出ている。5月25日、はてな匿名ダイアリーには、
「サラリーマン川柳って、もう既に一部の人向けだよな。派遣とか期間工とか増えてきてる今の時代で、あんなの一流企業に勤めるおっさんたちの遊びだろ」
という投稿がされた。同様の指摘はツイッターでも相次いでいる。
「非正規4割といわれる、この時代に、退職金がある事と逃げられても、いま現在に妻がいる時点で羨ましいと思う、悲しいおっさんでした」
「サラリーマン川柳と言うより、シルバー川柳じゃん。それだけ若い世代は非正規で、サラリーマンがいないことの証左だな」
「退職金あるだけでも、今の派遣や非正規世代より恵まれてるだろ!これからの若者は退職金も年金も無いんだぞ」
非正規川柳の方がしっくり来る? 「クレームも 社員じゃわからん パート出せ」
今年の1位には「退職金」というワードが入っており、それだけでも働き盛りの世代と隔たりがあることが分かる。2位の句も「じいちゃんが 建てても孫は ばあちゃんち」と、シルバー感が満載だ。仕事が一段落して暇な世代が入賞を目指して一生懸命川柳を考えているのだろうか。
また、サラリーマン川柳は「サラリーマン」と冠がついているものの、第一生命のサイトでは「OL、主婦、学生など、サラリーマンに限らず参加できる」と説明されている。しかし、入賞作品を見てみると、男性が投稿したと思われる作品がほとんどだ。
たとえば、この5年間の3位までの入賞作品のうち、妻をテーマにした句は15句中7句。「妖怪か ヨー出るヨー出る 妻の愚痴」、「うちの嫁 後ろ姿は フナッシー」といったものでどことなく視点が中年男性っぽい。最近は企業の中で男性以上に活躍する女性も多いのだから、女性視点の句がもう少しあってもいいだろう。
ちなみに、第24回(2011年)は非正規社員に頼る正社員の様子や、安定雇用にあこがれる様子を詠んだ句が上位にランクインしていた。
「クレームも 社員じゃわからん パート出せ」(第24回2位)
「何になる? 子供の答えは 正社員」(同3位)
こちらの方がよほど腑に落ちる、という人も多いのではないだろうか。
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