2016年F1モナコGP初日のフリー走行2回目は、メルセデス勢を退け、レッドブルのダニエル・リカルドがトップタイムを刻んだ。2番手となったルイス・ハミルトンとのギャップは、コンマ6秒。決定的とも言える差だ。
リカルドのアタックランは、クリアラップだった。その一方でメルセデス勢のアタックは、ややコース上の渋滞に阻まれたというところもある。だがハミルトン個人の感触としては、どこかで重大なタイムロスがあったというわけではなかったようだ。さらにクルマの状態にも不満はない。それで0.6秒もの巨大なギャップは、明らかにハミルトンを困惑させていた。
「彼ら(レッドブル)のクルマにはダウンフォースがあって、ここで速いことはわかっていた。だけど、もっと接戦になると思っていた」
3番手には同僚ハミルトンからコンマ3秒弱の遅れでニコ・ロズベルグが続き、次いで僅差にマックス・フェルスタッペン。初日トップ4は、レッドブルとメルセデスで形成される。
加えて、首位リカルドから4番手フェルスタッペンまでが1秒以内の差に収まり、他車たちはオール「圏外」だ。約3.3kmと短いモナコのコース距離を考えれば、5番手以下のクルマたちが予選日までに、この1秒以上のギャップを覆すのは難しいのではないか。その「圏外」には、フェラーリの2台も含まれる。
フェラーリはトロロッソ勢にも後れをとって、キミ・ライコネンが7番手。さらにセバスチャン・ベッテルはフォース・インディアのセルジオ・ペレスを挟んで、9番手に沈んでいる。
ただし、ベッテルにはクイックラップで複数回コースサイドのガードレールに触れるということがあり、タイムはポテンシャルを正確に示したものではないのかもしれない。しかし逆の見方をすると、まだ予選本番のような真のリミットとは言えない走りで、ベッテルは少なくとも2度、リヤのコントロールを失った。そういう意味で、この市街地コースでフェラーリの挙動は、ドライバーにとって、かなり扱いづらいものとなっているのではないか。
前戦バルセロナで、フェラーリは対レッドブルでの敗因は予選で先行されたことと分析しており、居残りの合同テストで弱点の改善に努めた。つまり、改良パーツの投入も含めて、クルマを変えてきたということだ。まだ初日段階では、そのセットアップが煮詰まっていなかったのかもしれない。
フェラーリにとってだけではなく他すべてのチームに言えることだが、ここモナコだけに許される変則スケジュールは、予選日までに丸1日のインターバルが空く。その間エンジニアたちは、いかにクルマの最適なセットアップに思いをめぐらすことができるか。しかし、この1日がリカルドにとって不利に働くかどうかは、わからない。
迎え撃つ初日首位のリカルドは「かなりのコンディション変化でもない限り(予選とレースに向けて)もう、どこかを大きく変える必要はない」と好調な仕上がりを豪語する。今回投入されたルノーがトークンを使用した新パワーユニットは、諸説あるが30~50馬力の出力アップを達成。リカルドの弁を借りれば「ドライバビリティも飛躍的に良くなった」。ルノーのエンジン開発トップ、レミ・タファンによれば「1周0.5秒の向上」が見込めるという。
となれば、製作が間に合わず、今回その最新型を手にすることができなかったマックス・フェルスタッペンに同僚リカルド逆転の目はないと見ていいだろう。予選トップ3は、まずリカルドとメルセデス2台の間で争われる。
リカルドとメルセデス2台が取り組んだ、フリー走行2回目でウルトラソフトタイヤでのロングランデータを比較すると、1周のペースとしては、ほぼ同等。ただメルセデスのほうが、遅めの周回を多く挟む傾向が見られた。初登場のウルトラソフトには、とくにリヤのオーバーヒートによる性能低下が危惧されている。
メルセデスのほうがレッドブルに較べると、よりタイヤの問題が深刻なのか。そのためタイヤを冷やす周回を、より多く挟まざるを得なかったのか。ウルトラソフトについて、ピレリは決勝レースで「15周以上カバーできる」としている。
モナコの全周回は、78周にも及ぶ。予選上位勢がスタートで履くことになるウルトラソフトで少なくとも25周ほどを稼がない限り、次にスーパーソフトへとつなぐ1ストップ戦略は機能しない。そこで最も硬いソフトタイヤを使うという策が登場するのか? あるいは抜けないモナコで、リスクをはらむ「2ストップ」に切り換えるのか? また、セーフティカーの登場で戦略シャッフルはあるのか──最後の不確定要素は、そこだ。決勝日わずかな可能性のある、雨の到来を除いては。