5月25日放送の「おはよう日本」(NHK総合)で、会社員の「副業」について取り上げていた。これまで日本企業は社員の人生を丸抱えする代わりに、あらゆるエネルギーを会社に捧げるよう求める側面があったのではないだろうか。
しかし低成長社会の中で会社もそこまで保障できなくなり、新たな価値を生み出すために「外の空気」を取り込んでくれる人も必要になっている。そんな中、副業に対しても新たな評価がなされているようだ。(ライター:okei)
事業多角化のヒント求め社員を「社外」へ
ひとつめの「副業」は、会社が奨励するものだ。今年2月、大手製薬会社のロート製薬が、社員の副業を認める制度の導入を発表した。会長兼CEOの山田邦雄氏は会見で「今まで社員が副業するのはけしからんということで禁止になっていましたが、第2の仕事を持ってください」と語っている。
4月から会社の許可を得れば副業が可能になり、すでに60人以上が副業中。背景には経営の多角化を一層進めるために、人脈づくりや広い視野を持ってほしいとの狙いがある。同社人事総務部の矢倉マネージャーは、方針をこう語る。
「自分たちの(仕事の)やり方も変えていかなくちゃいけない。社内だけにとどまっていたら、そういう事にも気づかない。社外に出ていくと、自分たちの視点を変えようとか、そういうことにつながるんじゃないか」
目薬で知られる同社だが、3年前からアイスキャンディーの製造販売や飲食店経営、野菜の栽培など事業の多角化に乗り出している。他の仕事で学んで視野を広げることは、留学や他業種研修にも似ているが、それを社員が自主的に行うことを薦めているわけだ。
「自分のスキルに気付き、視野が変わった」
もうひとつの「副業」は、会社で身につけたスキルを活かし、自らの成長の機会としながら副収入を得るものだ。本業でマーケティングの仕事をしているKさん(32歳)は、休日に1時間1万5000円で企業コンサルタントの副業をしている。
「1社に閉じこもっているよりは、社外の人とのネットワークを作って、良い情報を仕事に生かす(方がいい)」
大手事務機器会社で営業を担当するSさんも、同じくコンサルタントとして副業中。「本業外で取り組んでいくことで、自分のスキルに気付き、ものを考える視野や視座、視点が変わってきた」という。本業の会社にもいい影響があるのかもしれない。
マイクロソフトを辞め、国内のIT企業2社と農業法人1つをかけもちする男性(52歳)もいた。もはや本業がどれか、よく分からなくなっているパターンだ。農作業もこなしながら農家の役に立つソフトを開発し、やりたいことが実現できていると語る。
「それぞれの会社で得たものを一つに集約して、新しいことをどんどん作っていける。やりがいは最高にいいですよね」
本業のスキルや実績が高くないと難しい仕事も
これまで副業は「会社への忠誠心に反する」などといった考えからタブー視されてきたが、そもそも終業後の時間を何に使おうが個人の自由であるはずだ。番組で紹介された専門家紹介サイト「ビザスク」でも、この1年で登録者が3倍に増え、1万2000人を超えるという。
リストラや終身雇用の見直しなどで働く側の意識はすでに変わっている。「勤務先ひとすじに一生貢献する気持ち」を持つ方が危険だ。100年以上の歴史を持つ大手製薬会社が副業許可を大々的に打ち出したことで、「副業時代」が到来したように感じた。
ただし「副業」の一部は、本業のスキルや実績がそれなりに高い人でないと引き合いが来ないタイプの仕事だ。結局は「できる人」が本業も副業も持って行くという、二極化になっていくのかもしれない。
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