日本の高校生ドライバー、佐藤万璃音が参戦するイタリアFIA-F4は、いったいどんなマシンで争われているのか、2シーズン目を戦う佐藤万璃音がその印象を語った。
「自動車レースに詳しくない方にはスマートフォンで写真を見せて、“こういうクルマで競争しています”と伝えますが、ここではもう少し詳しく説明しましょう」
立ち上がりをより重視する走らせ方
「シャシーはタトゥースというイタリアのレーシングカー・コンストラクターのワンメイクで、モンツァ郊外に本拠地を構える会社です。ジュニア・フォーミュラが得意分野で、現在はフォーミュラ・ルノーやドイツ、イタリアのFIA-F4、過去には日本のフォーミュラチャレンジ・ジャパンにも供給していました」
「エンジンはアバルトのワンメイクで、直列4気筒1.4リッター・シングルターボです。公称200馬力にも満たないパワーユニットですが、約600kgと軽量のフォーミュラカーなので十分です。日本のFIA-F4のエンジンは直列4気筒2.0リッター自然吸気と異なりますが、最大出力は同じくらいと聞いています」
「緩やかながらもターボが効き始めるまでの時間差を見込み、自然吸気のエンジンよりは早めにアクセルを大きく開けてスピードを乗せるようにと、チームのトラック・エンジニアからはアドバイスされました。つまりコーナリングでは突っ込みだけでなく立ち上がりをより重視する必要があり、早めにクルマの姿勢を直進状態に整えてフルスロットルに備えなくてはいけません」
ピレリタイヤにF1のようなネガティブな印象はない
「F1ではあまり評判が芳しくないようですが、イタリアFIA-F4はもちろん、ヨーロッパのツーリングカーやGTカーで幅広く供給されているタイヤに問題はありません。実際、ピレリの供給体制は大規模かつきめ細やかで、F1では諸事情で悪い評判が立つのかもしれませんが、少なくとも僕らの周りではそんな話は聞きません」
「1大会、週末を通して供給される新品タイヤはドライ/ウェットとも2セットで、予選、2回の予選レース、1回の決勝レースに使います。今季はドイツのFIA-F4のドライバー/チームが多く参戦するようになり、レースの方式が昨季から少し複雑に変更されました。それはともかく、抜きにくいコースでは予選で新品タイヤを2セットとも使いきりますが、マシンのセットアップが決まっているときなど、状況に合わせて新品タイヤを残すケースのほうが多いですね」
「サーキットよって異なりますが、新品タイヤは4、5周目に最大のグリップが得られるので、それを見込んで予選のタイムアタックを実施します。基本的に予選レースや決勝レースは予選で使った中古タイヤで走り始めますが、極端なグリップ低下はありません。タイヤマネジメントをしっかり考え、25分間+1周の各レースを戦い抜きます」
「ギアのシフトチェンジは、現在のフォーミュラカーで標準的になっているステアリング裏のパドルを使います。フォーミュラ・ルノーやF3、GP3やGP2、もちろんF1も同じですよね。F1などではクラッチもステアリングの裏に装備されているパドルを使いますが、僕らのマシンは足下に装備されたペダルを使います」
「以上、マシンそのものはワンメイクなので、あとはチームとの共同作業によるセットアップとドライバーのスキルで勝負は決まります。ビンチェンツォ・ソスピリ・レーシングでの2シーズン目、エンジニアやスタッフとのコミュニケーションはより緊密なものとなりました。いまは、その成果をレースの結果として早く報告したい気持ちでいっぱいです」
佐藤万璃音の次戦は、今週末の5月27~29日にイモラで開催される。