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予選で挽回を見せた佐藤琢磨、7回目のインディ500決勝に向け手応え

2016年05月25日 15:51  AUTOSPORT web

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7度目のインディ500に挑む佐藤琢磨。決勝レースセッティングに手応えも
29日に100回目の開催を迎えるインディアナポリス500マイルレース。AJフォイト・レーシングから参戦する佐藤琢磨は、キャリア7回目のインディ500決勝レースを戦う。

 今年のインディ500予選、琢磨の成績は12位だった。自己ベストグリッドは依然としてKVレーシング・テクノロジー時代の2011年、インディカー・デビューから2年目に記録した10位のままだ。

 今年の琢磨はポールポジションを争うファスト9に食い込めそうなところまでマシンセッティングを向上させていくことができていたが、マシンの用意が間に合わずルールで許されていた2回目のアタックはできなかった。

■出遅れたプラクティス走行

 プラクティスは月曜日に始まった。初日は午後2時から6時の4時間。ここで琢磨が記録したベストスピードは223.826mphで、20番手につけるものだった。翌火曜日が雨になる可能性が高いというのに、琢磨陣営の走行開始は遅く、走れた周回数は35周ですべての基本となる車高の設定程度しか行えなかった。

 これに対し、トップのマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)は61周をこなし、ベストは228.978mphと琢磨より1周につき5.152mphも速かった。アンドレッティ勢は5台体制を活かし、自分たちだけで“パック”(=接近して走る集団)を形勢。レースを想定し、乱気流を浴びた状態でのハンドリングチェックに精を出していたのだ。

 2日目は予報通り雨で走行は中止。プラクティス3日目、琢磨は224.696mphにベストを伸ばすも22番手。周回数は57周。トップはライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)は228.202mphを94周をこなして記録した。

 プラクティス4日目も琢磨はスピードアップを果たした。ベストは225.044mph。しかし、順位は26番手と悪かった。この日も周回数は54周と決して多くはなかった。もっとも多く走ったオリオール・セルビア(シュミット・ピーターソン)は127周も走り込んで決勝用セッティングを詰めていた。トップは66周を走ったギャビー・チャベス(デイル・コイン)の227.916mph。琢磨は着々とスピードを上げていったが、周りの方がスピードの伸びが大きくなっていた。

 金曜日は多くのドライバーが予選シミュレーションを行いスピードアップする“ファスト・フライデー”と呼ばれている。今のルールでは金、土、日曜日はターボのブースト圧を高く設定するので、パワーがアップしてスピードは大幅に上がる。

 この日のプラクティスでの琢磨は、またも順位が下がって、27番手。スピードは228.926mphと、今年の自己ベストにはなっている。しかし、この日は予選シミュレーションを行い44周を走行した。トップは32周を走行したウィル・パワー(チーム・ペンスキー)の232.672mphだった。

■予選で魅せた挽回のアタック

 そして、ついに予選日がやってきた。初日は「ファスト9と、それ以外」を決める。上位9人は日曜夕方にポールポジション争いを行えるが、その他は日中の暑い中で10~33番グリッドを競い合う。

 この日は前日夜から雨が降り、予選直前のプラクティス開始がズレ込んでいった。琢磨は、それでも集中力を維持し、13番手=227.363mphにつけた。プラクティストップは231.249mph。この時点では、ファスト9を狙える状況にはなかった。前日までの上り調子から一転、突然迷路に迷い込んでしまったのだ。

 それでも、予選アタックでの琢磨は16位につける228.096mphの4周平均をマークした。1周目から列記すると、227.221mph 228.339mph 228.637mph 228.194mphという、まずまずのスピードを記録したのだ。マシンは直前のプラクティスでのとっ散らかった状況から一転、安定感を取り戻していた。

 気温低め、湿度高めの1日、最速アタックはジェイムズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)による平均230.946mphだった。彼は二度のアタックを行って最速の座を掴んだ。一方で琢磨陣営は、2回目のアタックに行くかを逡巡した結果、アタックのチャンスを手に入れ損ねた。

 チームのマネジメントは、アタックする場合に備えてクルーたちにマシンの用意を急がせるべきだったし、アタックの決断は自らの1回目のアタック終了後に速やかに下すべきだった。

 明けて予選2日目。この日のアタックは各自1回のみ。前日とは打って変わって暑い1日となり、ダウンフォース量の設定などが難しくなっていた。琢磨はプラクティスで6番手につける229.451mphをマークした。

 そして、2日目の予選アタックでは228.029mphのアベレージを記録し、12番手につけた。10~33番手グリッドを決める予選でトップ3に入ったことで4列目アウト側の12番グリッドを掴み取った。グループ内最速となる229.060mphを出してオリオール・セルビアは10番グリッドを獲得した。

■空回りするAJフォイト・レーシング

 プラクティス初日から、琢磨の周回数は少なかった。抑えているのではなく、準備の遅さにトラブルが重なってのことだった。決勝用セッティングのほぼ最終確認の場となる予選翌日、月曜日のプラクティスで、琢磨は224.629mphで16番手につけた。

 この日は3時間半と短めのプラクティスだったが、琢磨は85周と、今年最多のラップをこなした。それでも、トップだったジョセフ・ニューガーデン(エド・カーペンター・レーシング)の111周より26周少なかった。ドラフティング利用もあるが、ニューガーデンと琢磨との差は2.785mphもあった。

 琢磨がAJフォイトで走るのは、今年で4年目。2013年のロングビーチで共に優勝を飾った彼らは強い結束力で結ばれている。チームは琢磨の能力とキャラクターに全幅の信頼を寄せている。しかし、今年はチームがピリッと引き締まっていない印象だ。

 インディ500のプラクティスから予選までで、モチベーションを高く保てていなかったよう映っていた。フォイトを伝説のドライバーへと押し上げたのがインディ500であるのに、100回目の記念すべきレースで彼らは弛緩している。3台への体制拡大は去年に続いてだが、それは大アドバンテージとして活用されず、逆に足枷になってしまっている。琢磨はいつも通り、いつも以上にヤル気満々だというのに……。

■決勝セッティングに手応え


 そうした中、月曜日のプラクティスでこれまで16番手と中団の上位につけるタイムを出した琢磨は、決勝用のマシンセッティングにそれなりの手応えを感じていたようで、「成果の多い1日になりました。トラフィックでのマシンのフィーリングをようやく確かめることができました。満タンから燃料がカラになるまでの連続走行も行い、乱気流の中での感覚を掴むこともできた。今日テストした項目には、レースでとても有効なものと、そうでないものもありました」

「いずれにせよ、我々はレース用セッティングの良いベースラインを確保しています。決勝前にもう一度走るチャンスがあります。金曜日の最終プラクティスです。そこで幾つかのテストをまたトライしたい。とりあえず、今日の時点での我々は、良い位置につけるパフォーマンスを獲得できていると感じています」とポジティブに語った。

 7回目のインディ500で佐藤琢磨はどんな走りを披露するのか? 第100回インディ500決勝レースは、29日にスタートを迎える。