トップへ

嵐・大野智主演『世界一難しい恋』第6話で描かれた“携帯コミュニケーション”のリアル

2016年05月25日 06:11  リアルサウンド

リアルサウンド

『世界一難しい恋』公式サイト

 鮫島零治(大野智)と柴山美咲(波瑠)の交際が本格的にスタートした『世界一難しい恋』第6話。魚好きの零治が美咲を水族館に連れて行ったり、美咲が祖父の影響で好きになったという落語に零治を連れて行ったりと、微笑ましいデートを重ね、お互いに「レイさん」「ミサさん」とふたりだけの呼び名を決めるなど、その仲は順調に見えた。しかし、中盤からは仕事とプライベートをどのように分けるかでふたりの間にすれ違いが起こる。さらに、零治はかねてより連れて行きたがっていたホテル協会のパーティーに美咲を呼ぶことに成功するものの、パーティー会場で会ったステイゴールドホテルの社長・和田英雄(北村一輝)に、「パーティーに女を連れて来るために付き合った」と誤解を招く物言いをされてしまい、それを聞いた美咲は怒って帰ってしまう。


 そんなふたりの仲をつなぎとめたのは、携帯での何気ないコミュニケーションだった。序盤では美咲に送るメールの文面で、絵文字を使うか否か、それとも敬語にするか、大いに迷う零治の姿が描かれていた。昨今の恋愛において、同じようなシチュエーションで悩む男性は少なくないだろう。とくに絵文字は鬼門である。普段クールに振舞っている人物、それも年上から絵文字が送られてくるとなると、女性によってはそのギャップに引いてしまうかもしれない。かといって、あまりに固すぎるのもどうか。相手は絵文字を使うのだから、そこに合わせるのが筋かもしれないが、普段使い慣れぬ絵文字はどうにも自分にフィットしない。LINEのスタンプも然り、である。使い慣れている人物なら気の利いたスタンプのひとつやふたつで相手を笑わせることも可能だろうが、そうではない場合、とくに30過ぎの男ともなれば、余計になにを選んでいいのかわからない。迷った挙句に選んだクマかなにかのスタンプは果たして彼女の心を射止めるのか、つまらない男だと思われるのではないか。そんなことを考えると、メールの一本も送れなくなってしまうものだ。今回の零治の逡巡には、昨今の男性の小さな、しかしリアリティのある悩みを垣間見ることができた。


 一方で、携帯があるからこそ可能なコミュニケーションの長所も、しっかりと描かれていた。夜中の異様なテンションでつい電話してしまう零治と、それを優しく受け止める美咲。まだ電話を切りたくない零治が、“おやすみなさい”を逆から読むと“イサナミスヤオ”となることを伝えると、それが作家の名前のようだといって、ふたりで“イサナミスヤオ先生”の細かな設定を考えて笑いあう。くだらない“もしも話”を繰り広げるふたりの姿は、側からみると気恥ずかしいものだが、恋愛の初期なんてそんなものだし、プライベートな会話を気軽に楽しめることこそが、携帯の良さでもある。結果として、ふたりの間だけで通じる話題ができたことが、仲直りのきっかけにもなった。


 今夜放送される第7話では、いよいよふたりが一夜をともにすることが明かされている。しかし、公式ホームページの予告を読むと、どうにも気になる点があった。それは、零治がこれまで自らキスをしたことがない、との設定だ。明言は避けつつも、零治が童貞であることを暗にほのめかしているといえよう。30代半ばの敏腕社長が童貞とは、いくらコメディとはいえ無理があるのではないか。そもそも、性格に難があるため女性にモテない社長との設定だが、彼くらいのミリオネアであれば、多少性格が悪くても個性と割り切って付いてくる女性はいそうである。となると問題は、性格ではなく“性癖”にあるのではないかーー。


 しかし、これは筆者の心が汚れているからそう感じてしまうのだろう。実際のところ、最近では30代男性の4人に1人が童貞ともいわれているので、零治がそうであっても不思議ではないのかもしれない。前回、このドラマには“恋愛指南”の要素があると指摘したが(参考:嵐・大野智主演『世界一難しい恋』が、男性からも支持される理由 主題歌のメッセージを読む)、そうした観点から考えても、主人公は童貞の方が望ましいといえる。なにせ『世界一難しい恋』なのだから、それくらいのハードルはあって然るべきだ。それに、大野智は非現実的なキャラクターを演じることにかけては定評のある役者である。金持ちでイケメンの童貞というファンタジーも、うまく着地させてくれるだろう。我々は余計なことを気にせず、その“キス作戦”の失敗から学ぶべきなのだ。


 とかく、これまでコミカルな色の濃かった同作だが、だんだんと生々しい展開になってきて、筆者としては嬉しい限りである。どうしていつも恋がうまくいかないのか、同作から少しでも汲み取ることができれば良いと思う。普通に恋愛するだけでも“難しい”時代だからこそ、希望の持てる展開を期待したい。(松田広宣)