レッドブルリンクで開催されたF3ヨーロピアン選手権決勝で、マシンが宙に舞い上がる多重クラッシュが起きた。幸い命にかかわる怪我を負ったドライバーはいなかったものの、F1を含め、ドライバーの低年齢化を懸念する声が改めて上がっている。
ターン2出口でカーリンのライアン・トベターがスピンし、砂煙を巻き上げながらレーシングラインに戻ってきて止まった。チームメイトの黎智聰(リー・ジー・コン)が視界が悪いなか、避けられずにトベターのリヤにクラッシュ、マシンが大きく舞い上がった。続いてやってきたペドロ・ピケもトベターのマシンにヒットし、3台がかかわる大アクシデントに発展した。
黎智聰はヘリコプターで病院に移送され、検査を受けた結果、椎骨およびかかとを骨折していることが判明した。かかとは手術の必要があるが、椎骨についてはその必要がないということだ。
トベターも病院で診察を受けたが、ひざの打ち身のみで済んでいる。
「ピーター(黎智聰)は192km/hで静止物にヒットした。そのためにあれほどの衝撃となった」とチームボス、トレバー・カーリンが語る。
「砂埃が上がっていたため、(前にマシンが止まっていることに)全く気付かなかった。5メートル手前の時点でフルスロットルだったのだ」
「フロントクラッシュストラクチャーとモノコックが衝撃を受けたことで足をけがしたが、シャシーのその他の部分が負傷をそれ以上のものにするのを防いでくれた」
「背中の怪我は逆さまに着地した際に大きな圧力がかかったことが原因だった」
■高い安全性確認も、低年齢化に懸念の声
この事故は地元オーストリアで「この10年の中で最も激しいアクシデント」とも報じられ、カーリンは、安全性の高いマシンが3人の生命を救ったとして、FIAとダラーラに感謝している。
「FIAとダラーラに感謝する。彼らの作ってくれたマシンのおかげでドライバーたちは衝撃から守られた。だがこのアクシデントから学び、これまで以上に怪我が最小限で済むよう、さらなる対策を講じる必要がある」
最初にクラッシュしたふたりはいずれも10代ではないが、これまでF3では多数のアクシデントが起きていることから、年齢制限を厳しくするべきであると、メルセデス・モータースポーツのボス、トト・ウォルフは述べている。
「少年たちにあまりにも大きなプレッシャーがかかる。16歳でF3のレースに参加するのはいいことであるはずがない」とウォルフが述べたとF1todayが伝えた。
「年齢制限を下げるべきだ。F3は18歳に、F1は20歳にね」
前戦スペインGPでF1初優勝を飾ったマックス・フェルスタッペンは17歳でF1デビューを果たした。彼のケースをきっかけに、FIAはF1ドライバーの低年齢化を食い止めるため、2016年からスーパーライセンス取得の条件のひとつに18歳以上であること、という規定を定めた。