2016年05月24日 11:02 弁護士ドットコム
「深夜1時ごろにインターホンが鳴り、突然のことで何ごとかと驚きました」。東京都新宿区の区議・伊藤陽平氏は5月11日のブログで、嫌がらせの被害にあったことを報告した。
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ブログによると、自宅に注文した覚えのない中華の出前があったという。店側に確認したが、届け先の住所は間違いなく伊藤氏の家。こうした経験は初めてではなく、過去には頼んでいないのに宅配ピザが届いたこともあったそうだ。
伊藤氏は、これらを第三者からの「嫌がらせ」と判断。「政治家に対する嫌がらせは、人権がない仕事、有名税だから仕方がない、などと黙認されてしまいますが、やはりおかしいと思います」と憤った。そのうえで、意見がある場合は、ブログやSNSなどで連絡してほしいとつづっている。
また、出前した料理店は、伊藤氏が注文していないと説明すると、お金を受け取らず、そのまま帰って行ったという。料理や配達の手間が無駄になった形だ。「嘘」の出前をさせる嫌がらせは、法的に罰せられることはないのだろうか。中西祐一弁護士に聞いた。
●店に対しては罪が成立するが…
「注文した覚えのない出前を他人に届けるといった嫌がらせは、それ自体では犯罪にはなりません。従って、今回の行為は、伊藤氏に対する行為としては、罪に問うことはできません。
もっとも、嫌がらせとセットで金品を要求した場合などは、恐喝罪に問われる可能性がありますし、金品以外の何らかの行動を要求した場合には、強要罪に問われる可能性があります。
また、民事上は、繰り返し同様の行為を行うと、伊藤氏の生活の平穏を害したとして、慰謝料等の支払義務が生じる可能性があります」
では、料理店に対してはどうか。
「刑法233条は、『偽計を用いて,人の…業務を妨害した』場合には、偽計業務妨害罪という犯罪が成立すると定めています。今回の事例では、出前を注文した人物は、伊藤氏ではないのに、伊藤氏のフリをして注文をしていますので、『偽計』を用いているといえます。
また、その結果、料理店側は料理を作ったり、配達したりした時間が無駄になり、他の業務に支障が生じたおそれがあります。従いまして、料理店との関係では、偽計業務妨害罪が成立すると考えられます」
どの程度の罪になるのだろうか。
「偽計業務妨害罪に対する刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金と定められています。軽い気持ちの悪戯としては、大きな代償だといえると思います」
中西弁護士はこう述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
中西 祐一(なかにし・ゆういち)弁護士
金沢弁護士会所属。地元の方々の身近なトラブルの解決を目指し、民事・刑事を問わず幅広い分野の案件を取り扱っているが、その中でも、刑事事件には特に力を入れており、裁判員裁判や冤罪事件の国家賠償請求事件などにも積極的に関わっている。
事務所名:中西祐一法律事務所
事務所URL:http://www.nakanishi-law.net