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今年もニュルブルクリンク24時間がアツい。見どころをチェック

2016年05月23日 20:51  AUTOSPORT web

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ニュルブルクリンク24時間 予選レーススタート
今年も5月26~29日、ニュルブルクリンク24時間レースが開催される。難攻不落の“グリーンヘル”を舞台に争われる過酷なレースだが、第43回目の今シーズンの見どころをチェックしておこう。

■激化するSP9の争い。もはや“草レース”とは呼べない!?
 1970年に初開催されて以来、“偉大なる草レース”とも称されてきたニュル24時間。しかし近年は、牧歌的な雰囲気を随所に残しながらも、ドイツの自動車メーカーを中心に戦いのレベルは大いにエスカレートしており、今シーズンはさらに高い次元の争いとなることが予想される。

 その主役となるのは、SP9クラス。スーパーGT等で日本でも見ることができるGT3カーのクラスだ。スーパーGT300クラスでも今シーズン、多くのニューマシンが投入されたが、それらのマシンが“ニュル24時間デビュー”となる。主な車種としてはBMW M6 GT3、メルセデスベンツAMG GT3、ポルシェ911 GT3Rといったところだ。

 これらのマシンが、ディフェンディングチャンピオンであるフェニックス・レーシングのアウディR8 LMSに挑むことになるが、今季アウディはセミワークス格の台数を減らしている。昨年までは強固な陣容を敷いていたアウディだけに、今季も勝利を守り3連覇を達成できるかが注目だろう。

 対する陣営のなかで、勝利奪還に燃えているのはBMWだろう。2011年からBMW Z4 GT3でニュルに挑み続けて来たが、結局Z4では一度も勝利を飾ることができなかった。当然M6での雪辱を狙っているのは間違いなく、シューベルト、ローヴェといったチームが強力な体制を敷いている。また、ポルシェも通算5勝を誇る名門マンタイが3台のGT3Rを走らせる予定で、こちらも勝利を狙っているのは間違いない。メルセデスベンツ勢もブラック・ファルコン、HTPといった強力なチームをセミワークス待遇としている。

 難攻不落のニュルで24時間を走りきり、かつ勝利を得ることができれば、すなわちそのメーカーの車両の信頼性と性能の高さを証明することに他ならない。ニュルでの勝利は市販車はもちろんGT3カーの売り上げにも大いに関係するはずで、近年、ドイツの各メーカーの力の入れようはル・マン24時間に迫る規模と言っていいだろう。

■表彰台も狙える目標。ニッサンGT-Rの健闘に期待
 これらのドイツメーカーの争いに割って入る存在が、アストンマーチン・レーシングが走らせるV12バンテージGT3、アプトが走らせるベントレー・コンチネンタルGT3、そしてニッサンGTアカデミー・チームRJNが走らせるニッサンGT-RニスモGT3だ。

 とくにGT-Rは、2015年モデルのポテンシャルの高さとタイヤへの優しさ、信頼性の高さは昨年世界中で実証されたとおりで、その強さは今年もかなりの部分がキープされている。昨年のニュルブルクリンク24時間では非常に厳しい性能調整をかけられていたが、それでも強豪相手にジワジワとポジションを上げ9位フィニッシュを飾っている。

 今季はミハエル・クルム/ルーカス・オルドネス/星野一樹/アレックス・バンコム組でニュルに挑むが、すでに予選レースで10位を得ており、トップ30クオリファイへの資格も獲得。表彰台圏内へのチャレンジに期待が高まる。

 また、日本人ドライバーとしては、グランツーリスモシリーズの生みの親、山内一典が今年もニュルに挑戦する。今季はチームを移り、ワーケンホルスト・モータースポーツのBMW M6 GT3をドライブする。プレイステーションカラーの美しいM6 GT3は、その走行シーンも必見だ。

■独自の挑戦続けるTOYOTA GAZOO Racing。“モリゾウ”出走も!?
 ニュルブルクリンク24時間に“クルマを鍛え、人を鍛える”目的で独自のアプローチをみせるTOYOTA GAZOO Racingは、今季は3台をニュルブルクリンクに送り込む。2016年でチャレンジ10年目の節目となるが、そのアプローチ方法を今季は少々変えてきた。

 トヨタの社員メカニックらがメンテナンスするのは2台。昨年の課題克服に挑むレクサスRC、そしていまだ市販車が販売されていないクロスオーバーSUV車両のトヨタC-HR Racingをニュルに投入する。RCはSP3Tクラス優勝、C-HR Racingはまずは完走が具体的な目標だろう。ちなみに、公式サイトのエントリーリストでレクサスRCを見ると、木下隆之、松井孝允、蒲生尚弥の3人のドライバーに加え、『MORIZO』の名が記されている。ドライブするかどうかは不明だが、トヨタ自動車豊田章男社長の出走もあり得る。

 また、今季は新たに、日本の誇る名門トムスとコラボしたTOYOTA GAZOO Racing with TOM'Sから、トムスのノウハウを注ぎ込んだレクサスRC Fが参戦する。熟練したレースメカニックからの刺激をトヨタ社内に還元しようという狙いだが、これまでのVLN等のレースでは、このRC FがGT3カーに迫る素晴らしい速さを発揮している。

 ドライブするのもエンジニアを務めることができる土屋武士、抜群の安定性を誇る片岡龍也、スピードを担う大嶋和也、井口卓人とバランスが取れている。属するSP PROクラスはエントリーが1台だが、総合順位でも面白い位置が見えてくるかもしれない。

■クラッシュを乗り越え連覇狙うスバル
 WRX STIでの挑戦を続けるスバル/STIは、今季もSP3Tクラス連覇を目指し年明けの東京オートサロンで体制を発表し、3月に富士スピードウェイでシェイクダウンに臨んでいた。しかし、テスト中の1コーナーで激しくクラッシュ。ドライブしていた山内英輝は幸い軽傷で済んだものの、マシンは大きく損傷してしまった。

 チームは一時参戦断念を検討したというが、強い思いでマシンを修復。本番2週間前となる5月14日のVLNに間に合い、4台のSP3Tクラス中2位でチェッカーを受けた。

 とは言え、今季WRX STIはライバルであるアウディに対して非常にリストリクターが厳しく設定されており、さまざまな改良が施されているものの、連覇は高いハードルとなっている。ただ、シェイクダウンでのクラッシュ、厳しい性能調整といった障害を乗り越えクラス連覇を飾ることができれば、素晴らしいストーリーとなるはずだ。チームの奮闘を大いに期待したい。

■テレビで、ネットでニュルを楽しもう
 そんなニュルブルクリンク24時間だが、日本ではテレビで、そしてネットで楽しむことができる。テレビでは、スポーツ専門テレビ局のJ SPORTSで5回に分けて放送予定。解説陣やレポーター陣も非常に豪華で、ニュルの奥深さを感じながら放送を楽しむことができるはずだ。放送予定等はHP(http://www.jsports.co.jp/motor/nurburgring/)まで。

 また、インターネットでもTOYOTA GAZOO RacingがHP(http://gazooracing.com/pages/special/nurburgring/2016/lp/)でYoutube Liveを使って放送する。日本勢の応援ももちろんだが、ニュルブルクリンクでしか走らないようなマシンも見ることができるはず。また、TOYOTA GAZOO Racingを支えるブリヂストンや、スバルなど多くのマシンを支えるファルケン等、タイヤメーカーの戦い等見どころは尽きない。クルマの聖地である奥深き“グリーンヘル”での戦いをぜひご堪能あれ。