第100インディアナポリス500マイルレースのスターティンググリッドを決定するポールデーが22日に行われ、ジェームズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン)が会心のアタックを見せポールポジションを獲得した。佐藤琢磨(AJフォイト)は、4列目12番手から決勝レースに挑む。
予選1日目は雨で始まり、涼しく、湿気の多いコンディションで夕方7時まで予選が繰り広げられた。明けて日曜日。インディアナポリスは快晴に恵まれ、朝から気温は上昇。日中の気温は摂氏28度を越えた。
10~33番グリッドを決める予選は、午後2時45分にスタート。暑さの中でマシンセッティングは難しくなり、風も強く吹いていた。
このセッションでトップになったのはオリオール・セルビア(シュミット・ピーターソン)。暑さのため、スピードは229.060mph止まりだった。彼は10番グリッドを獲得した。
2番手タイムで11番グリッドをゲットしたのは元F1ドライバーのルーキー、アレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)。予選を前にNAPAオートパーツという新スポンサーが決定。黄色と紺のマシンで彼は228.473mphをマークした。
3番手は佐藤琢磨。前日の予選前のプラクティスでは連続走行不能なマシンとなってチームがパニック状態に陥りかけたが、セッティング変更が成功して予選16位につけ、暑さへの対応でも多くのライバル勢を上回ってグリッド4列目外側にスタート位置を確保した。
チーム・ペンスキーやチップ・ガナッシ・レーシング・チームズのドライバーも含まれていたため、「今日と同じポジションをキープできたら御の字」と前日に琢磨は話していたが、ファスト9以外でのトップ3に食い込むパフォーマンスを見せた。
スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)は琢磨の後ろの予選13位。ポールポジション候補だったマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)は予選14位、昨年度ウイナーのファン・パブロ・モントーヤ(チーム・ペンスキー)は予選17位、トニー・カナーン(チップ・ガナッシ)は予選18位だった。
「今日のコンディションにマシンのセッティングを合わせ込むのは難しかったのですが、我々のチームは冷静に対処し、とても良いマシンを用意してくれました。これで7回目のインディ500ですが、予選でのマシンは今日のものがいちばん良い仕上がりだったと思います」と琢磨は改めて手応えを感じていた。
最速9人=ファスト9によるシュートアウトは夕方5時にスタート。気温は依然として高く、28度もあった。
最初のアタッカーはポイントリーダーのサイモン・ペジナウ(チーム・ペンスキー)。今日もっともスピードアップしてくる可能性が高いと見られていたチーム・ペンスキーだが、彼の4ラップは229.139mph止まりだった。
プラクティスからずっと速さを誇示してきているカルロス・ムニョス(アンドレッティ・オートスポート)は、暑いコンディションでも230.287mphをマーク。
3番目にコースインしたミカエル・アレシン(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)は、229mph台中盤を出すにとどまった。
そして、4番目のアタッカー、ジョセフ・ニューガーデン(エド・カーペンター・レーシング)登場。彼は1ラップ目に231mph台を出し、230.700mphでムニョスをトップから押し出した。
スポット参戦ながらポール候補に名乗りを上げタウンゼント・ベル(アンドレッティ・オートスポート)は、シーズンレギュラーのチームメイト、ムニョスを上回るスピードで走ったが、230.481mphでニューガーデンは抜けずに2番手。
この後にはペンスキーのふたりにアタック順が回った。難しいコンディション下で最良のセッティングを見出す戦いを何度も見せてきた実績を持つエリオ・カストロネベス。彼のアタックは、229.115mphと振るわなかった。まさかの、この時点での最下位だ。
続くウィル・パワー(チーム・ペンスキー)も、初のインディ500ポールに意欲満々だったはずだが、スピードは229.669mphと冴えなかった。彼はこの時点で4番手。彼だけでなく、ペンスキー勢はひとりも今年のフロントローには食い込めないこととなった。
231mph台を1周だけ記録したニューガーデンがこのままトップを守り切るのか。残るアタッカーはふたり。どちらもホンダユーザーだ。
まずは、昨日2番時計だったライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)がチャレンジ。1周目が230.595mphだった彼は、2周目に230.858mphへとスピードアップ。2周平均ではニューガーデンを上回っていた。3周目も230.738mphとハイレベルで、3周平均は230.730mph。この時点でもニューガーデンの230.700より0.03mph速かった。そして4周目は230.401mph。平均スピードは230.748mphとなって、0.048mphニューガーデンより遅くなった。最後の1周で2番手に後退してしまった。
最後のアタッカーは昨日最速だったジェイムズ・ヒンチクリフ。彼の1周目は230.885mphで、ニューガーデンの平均よりは速かったが、彼の1ラップ目よりは遅かった。2周目以降が231mph台に乗ってくるとは考えにくく、その場合は残る3周を230mph台の高い方に保ち続ける必要があった。
2周目は230.940mphにアップ。平均は230.913mphでヒンチはトップを保った。3周目は230.738mph。少し遅くなったが、平均は230.864mphで引き続きトップ。しかも、ハンター-レイの3周目終了時点よりニューガーデンに大きな差をつけていた。
これなら2番手に下がることはないか? 4周目にタイヤのグリップが大きく下がるケースもある。注目の4周目、ヒンチもスピードダウンは避けられなかったが、230.450mphまでに留めることに成功。4周平均は230.760mphとなって、僅か0.07mphの差ながらインディ500での初ポール獲得を果たした。シュミット・ピーターソン・モータースポーツにとっては、2011年のアレックス・タグリアーニに続く二度目のインディ500ポールだ。
ホンダは2014年6月のヒューストン以来となる今シーズン初PP。インディ500でのポールは、シュミット・ピーターソン・モータースポーツ同様に2011年以来だ(当時はホンダ・エンジンのワンメイクだった)。ホンダとシボレーとのマニュファクチャラーによる戦いは2012年に始まったが、ホンダは今回、彼らを倒して初めてのPP獲得を達成した。
「去年はプラクティスで大アクシデントを起こし、瀕死の重傷を負った。今年は、みんなが語り継いでくれる新しいストーリーを実現したい。そう考えて今日の僕はスピードウェイ入りした。信じられないことだが、僕らはそれをやってのけた。言葉も無いほどだ」とヒンチクリフは喜んだ。レースへの復帰も危ぶまれる負傷だったのだから、驚くべきカムバックストーリーだ。
2位となったニューガーデンは、「受け入れるのが難しい結末だ」とコメント。ヒンチクリフとの差は0.0758秒しかなかったのだ。「今日はヒンチクリフとシュミット・ピーターソン・モータースポーツというチームを讃えたい。しかし、戦いは今日だけで終わりじゃないんだ。来週のレースで勝つことこそが、僕らのいちばんの目標。それを忘れてはいない」ともニューガーデンは語った。