周囲とうまく同調して生活するためには、迷惑をかけないようにすることは大切だが、それも行き過ぎると息苦しくなってくる。
5月19日、情報番組「とくダネ!」(フジテレビ)では、周りからの非難に対して過剰反応する「萎縮社会」という特集が放送された。
募金活動を批判され「このまま続けていいか…」と悩む学生
番組では、熊本地震の義援金の募金活動を行う学生たちを紹介。新宿駅前で「誠に勝手なお願いではありますが」「ご迷惑をおかけしていることを重々承知しています」とかなり遠慮がちなと呼びかけている。
その理由は、周囲からの非難への恐れだ。熊本地震後には「不謹慎狩り」が話題となった。義援金の寄付を行った芸能人に対して偽善者、売名行為だという書き込みが見られたニュースは記憶に新しい。
募金活動を行う学生メンバーの一人は帰宅後、「新宿 募金」といったワードでツイッターの反応をチェック。「自分でバイトして募金すればいいのに」というコメントが寄せられていた。面と向かって批判されたこともあると言い、そのときの気持ちを「頭では気にしない気にしないと分かっていても、正直傷つきます」とコメントした。
非難の対象は妊婦にまで及ぶ。厚生労働省は、「妊産婦が交通機関等を利用する際に身につけ、周囲が妊産婦への配慮を示しやすくするもの」として、マタニティマークの着用を勧めているが、とある調査によれば、妊娠中にマタニティマークを着用しなかったり、途中で外したという女性は約4割に上る。
着用しない理由について番組の取材に応じた妊婦は、自身は嫌な思いをした経験はないものも、「マタニティマークをつけていたら、同性の方にぶつけられたという(ネットの)書き込みを見て怖いなと思った。妊婦だから優先席に座って当たり前みたいな顔しているって思われるのが、ちょっと怖い」と話す。
スタジオの梅津弥英子アナも、電車の中で「妊婦はそんなに偉いのか」と言われて困惑したと自身の体験を語っていた。
「萎縮社会」とネタにすることで余計萎縮が進む?
萎縮社会は、子どもたちの遊び場まで奪っている。近隣住民からの苦情に配慮して、ボール遊びができる日時を制限している公園も。子どもたちは「迷惑がかかるから」と、思うように遊べず元気がない。
この特集についてについてネットでは、
「マタニティマークをつけることを萎縮させる社会って、猿以下の社会ですね」
「日本は絶対いつか滅びると思ってるけど、予想以上に早く滅びそう。少子高齢化社会がすすんで私なんか年金もらえないだろうし」
など、怒りの声が多く書き込まれていた。
一方で番組では、産婦人科医の宋美玄さんがこうした「萎縮」ネタを紹介すること自体を疑問視。「マタニティマークをつけると妊婦が嫌な目にあう」と話題にすることで「さらにみんながつけなくなるという悪循環を生み出している」と指摘し、
「ノイジーマイノリティはどこにでもいるけど、人口比でいうとほんのちょっと。それを炎上した、とネタにすると余計萎縮社会が進むので、あまり話題にもしない方がいいのではないか」
とも語っていた。
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