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GP topic:メルセデス全滅につながった、ロズベルグの「うっかりミス」とは?

2016年05月20日 22:01  AUTOSPORT web

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F1スペインGP決勝後のパドックは、マックス・フェルスタッペン史上最年少優勝の歓喜にわく一方で、メルセデスは同士討ちという最悪の結末に沈んでいた。事故直後にルイス・ハミルトン、ニコ・ロズベルグとともに非常勤会長のニキ・ラウダ、ビジネス面を統括するトト・ウォルフ、技術部門を率いるパディ・ロウらがチームのトランスポーターに集結し、データを解析しながら、事故に至った経緯を検証。レース終了後に開かれた記者会見は、ウォルフ、ハミルトン、ロズベルグの順で個別に行われ、みな重苦しい雰囲気だった。

 最初に会見を行ったウォルフは「両ドライバーと話したが、ふたりとも憤慨している。かなり難しい状況だ。もう一度、話し合う必要があるだろう。ただ、2014年のベルギーとは完全に違う状況にある。今回いくつかの不運が同時に起こったようだが、まだ明確な結論には達していない。レース審議委員会の判断を待つことにする(その後、レーシング・インシデントとしてペナルティなしの裁定が下った)。いずれにしても我々としては、どちらのドライバーも非難はしたくない。今後も彼らに自由にレースをさせたいと考えている」と、コメントした。

 続いて現れたハミルトンは、事故時の状況を次のように説明した。
「3コーナーでニコが間違ったエンジンモードに入っていて、パワーが低下していたことがわかった。スタートに関しては、いろいろと手順があり、グリッドに止まったらレースモードに切り替えなければならないんだけど、ニコはフォーメーションラップで使ったモードのままになっていたんじゃないかな。いずれにしてもニコとの差が急速に縮まったので、僕は左に行くか、右に行くかを決めなければいけなかった。その時点では、ニコの右側に1台分のスペースがあったから右を選んだけど、ニコも同じ方向へ進路を変更したから、僕は接触を避けるために芝生に飛び出し、ああいう結果になってしまった」

 ロズベルグが「間違ったエンジンモードに入っていた」というのは、どういう状況だったのだろう?



 現在のF1では、フォーメーションラップの発進時と、本番のスタート時ではエンジンモードを異なるセッティングにしておく必要がある。フォーメーションラップでは燃料流入量を極力抑えて燃料を節約するとともにERSエネルギーを蓄電しておきたいからだ。逆に、本番のスタートでは燃費よりもフルパワーで走ることを優先する。ロズベルグの場合、これはステアリングの左下にあるエメラルドグリーンのダイヤルを回して切り替えている(トップ写真:赤の矢印で示している部分/写真はオーストラリアGPのもの)。



 しかし、本番のスタート時はボタン(上写真:赤の矢印/写真は2015年ベルギーGPのハミルトン)を押して、レーススタートモードを適用する。今回ロズベルグは1コーナーまでは間違った設定のままスタートしていることに気がつかなかった。ロズベルグのマシンに異変が起きたのは2コーナーを立ち上がって、モードがリセットされた直後だった。3コーナーへ向けて再び加速を始めたとき、エンジンが回生モードに入ってしまい、加速が鈍ったのである。それはハミルトンのオンボードカメラの映像で、ロズベルグのテールランプが点滅していることからもわかる。

 最後に会見を行ったロズベルグも、その件は認めている。



「3コーナーへ向かってアクセルを踏み込んでいったら、一瞬エンジンがパワーダウンしていくように感じた。適切じゃないモードになっていたんだと思う」

 とっさにロズベルグはエンジンモードを左手で切り替えたものの、すでにハミルトンとのスピード差は時速17kmにも及んでいた。

 なぜロズベルグは、ハミルトンと同じイン側へと進路を変えたのか。「エンジンモードを左手で切り替えることに頭がいっぱいで、ハミルトンが見えていなかったのではないか」と記者に指摘されたロズベルグは、こう弁明した。

「ルイスの動きは把握していた。パワーを補うためにオーバーテイクボタンを押してルイスに対抗したときだって、きちんとミラーで確認していたよ。オーバーテイクボタンは普段からよく使うから、どこにあるかなんて見なくてもわかる」

 ロズベルグの言う「オーバーテイクボタン」はトップ写真のステアリング左上に見えるオレンジ色のボタンである。そもそも、なぜ不適切なモードに陥ってしまったのかについては、チームからもロズベルグからも明確な説明はなかった。おそらくは、ロズベルグがフォーメーションラップ終了時に切り替えるのを忘れたという説が有力だ。



 スタート時の無線による指示が禁止された昨年のベルギーGPから、ロズベルグのステアリングには多くの注意事項が書かれたシールが貼られるようになった(上写真:赤の矢印/写真は2015年ベルギーGPのもの)。このような指示はハミルトンのステアリングには見られないもので、ロズベルグがスタート時の手順を自分で行うことが苦手であるか、忘れやすいことを意味しているように思える。

 今回の一件で、ロズベルグの脳裏には「スタート時のモード切り替えを行う」ことが強く刻まれたに違いない。したがって続く数戦で同じミスはしないだろう。しかし、フォーメーションラップがやりなおしとなったり、シーズン後半に緊張した場面を迎えたときに、再び同じミスを犯す可能性は否定できない。