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熊本地震被災地支援に向け『SAVE JAPAN』始動。モータースポーツを通じ協力

2016年05月20日 21:01  AUTOSPORT web

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『SAVE JAPAN Action! KUMAMOTO』発表記者会見の様子
2011年に発生した東日本大震災の際、当時スーパーGT500クラスで戦っていた脇阪寿一が立ち上げた被災地復興支援プロジェクト『SAVE JAPAN』。これまで継続した復興支援を続けてきたが、寿一は5月20日に東京・恵比寿のレーサーズカフェで記者会見を行い、2016年4月に発生した平成28年熊本地震に対して『SAVE JAPAN Action! KUMAMOTO』として、新たな活動を展開することを発表した。

 当時ドライバーだった寿一が、東日本大震災後すぐにネット上で声を上げ、「今、僕たちができること」をテーマにモータースポーツ、クルマ業界を通じた復興支援活動を展開してきた『SAVE JAPAN』。この活動を通じて集められた義援金約1億9000万円が、日本赤十字社を通じて、被災地に届けられていた。

“レーシングドライバー”という本業のかたわらで、スタッフはじめ多くの人々に支えられながら活動していた『SAVE JAPAN』だが、一方で「何に使われているか分からない」という声、さらに、いまだにガチャガチャのカプセルに“気持ち”を入れてお金を持ってくる子どもたちに、「分かりやすい形で活動の成果を示したい」という悩みも寿一にはあったという。

 そんななか発生した熊本地震。日本のモータースポーツ界にとっては、大分県日田市にあるオートポリスでレースをする際、熊本、大分はいつも関係者を温かく迎えてくれた土地。寿一としても「もちろん動き出さなければいけなかった」が、2011年とは寿一の立場も異なり、多くの“声”があったものの、「自分を取り巻く環境が本当に忙しく、正直厳しいところもあった」という。モータースポーツ界のなかでも、寿一がさまざまなところに気を回すタイプなのは有名な話。やるからにはきっちりとやらなければならないという思いもあったはずだ。

 ただ、「『SAVE JAPAN』は熊本地震に対してどうするのか?」、「『SAVE JAPAN』で何をしましょう?」、「ロゴを使わせてほしい」という声が多く寿一のもとに届き、「仲間たちの声には応えないわけにはいかない」と、今回『SAVE JAPAN Action! KUMAMOTO』として新たな活動を展開することになった。

■「支えてもらった思いを自分も」国本雄資の決意
 寿一を後押しすることになったのは、ふたりのモータースポーツ仲間の思いだ。まずひとりは、スーパーGT500クラス、スーパーフォーミュラで活躍する国本雄資だ。国本はカート時代からその持ち前の速さを期待され、国内トップカテゴリーにステップアップしたものの、思うような成績を残せなかった。とくに昨年は、両カテゴリーともに苦しい戦いを強いられた。

 そんな国本は昨オフから、「僕自身なにか変わらなきゃいけないと思い、私生活やトレーニングを見直してきました」と、非常に厳しいトレーニングを積み、心身ともにハードなオフを過ごしてきた。そしてその成果は、スーパーフォーミュラ第1戦鈴鹿で、2位表彰台という結果に表れた。

 そして、国本はその2位表彰台獲得で得た賞金の一部を、『SAVE JAPAN Action! KUMAMOTO』を通じて熊本地震の被災地支援に役立てたいと寿一に申し出た。「自分が苦しいなかで多くの人たちの助けや支えがあって、鈴鹿で表彰台を獲ることができた。自分が困っているときにまわりに支えてもらったので、熊本の人たちが困っているときに、支えになるようにしたいと考えました」と国本は言う。

「僕たちがいつもオートポリスでレースがあるたびに訪れる熊本で、こういった地震が発生してしまった。被災された皆さんが一日も早く復興して欲しいと思っています」

■モータースポーツを通じた台湾からの思い
 もうひとつは、クリアプレックス社でアジアパシフィック地域のマネージングディレクターを務める、台湾のジェントルマンドライバー、クレイグ・リウだ。クリアプレックス社は、欧米ではメジャーな自動車のフロントウインドウ用飛び石対策フィルムを手がける会社。スーパーGTはもちろん多くのレーシングカーで、オイル等の汚れをすぐにはがせる『ティアオフフィルム』が活用されているが、クリアプレックスのフィルムは多くのチームが使用している。

 クレイグはそのマネージングディレクターを務める一方、ジェントルマンドライバーとして台湾国内のレースやGTアジアで戦っている。2013年12月、台湾の大鵬湾国際サーキットで開催された『TSFアジア オールスターチャレンジ』にクレイグは参戦していたが、そこで寿一や、20日の会見にも出席した密山祥吾、横溝直輝、さらに平中克幸や吉本大樹、藤井誠暢といった多くの日本人ドライバーが参戦し、台湾のジェントルマンドライバーたちの“先生”としてコンビを組んで戦っていた。

 寿一、密山ら日本人ドライバーたちとクレイグら台湾人ドライバーたちはあっという間に意気投合し、その後も「友人のような間柄(密山)」として、モータースポーツを通じた日台の交流を深めていた。今回の熊本地震に対し、クレイグ、そしてクリアプレックス・ジャパンは、『SAVE JAPAN Action! KUMAMOTO』を通じ100万円という多額の寄付を申し出た。

「僕は台湾で生まれ育っているけれど、台湾はご存知のとおり地震が多い国だ。日本と同様、被災したときに生活を立て直し、ふだんの生活に戻すことがいかに大変なことか、身をもって知っている」とクレイグ。

「私たちは小さな組織で、クリアプレックスでできることには限りがある。でも、私たちがとった行動がモータースポーツや自動車業界を通じて、小さな“気づき”になってくれればと思っている。寿一さんがやっているチャリティ活動というものは、志があっても非常に困難もともなうものだ。それをイニシアチブをとってやっているのは素晴らしいことだ」

■被害が大きい町村へ、密着した支援を
 こうして義援金の募集をスタートした『SAVE JAPAN Action! KUMAMOTO』だが、今回、「公的機関としてSAVE JAPANを成り立たせたかったこと、それに使い途がある程度分かる形でやりたかった、国よりも県、県よりも町という形で規模が小さくなってくると、関わる人が減って、その人たちと密に連絡を取ることができれば、何に使われたのかを知ることができる。そこで、市町村に直接連絡することにしました」という形をとるという。

 ただ、「僕の性格からして、被災されて大変なときに、その手続きの連絡をするのが、先方にとってどれほど大変かを想像した」と、ある程度時間をおいて落ち着いてから寿一は被災地の自治体にコンタクトを取った。当初、オートポリスがある大分県日田市に連絡したが、「我々よりも大変なところがあるから、そちらを助けてあげてほしい」という返答があり、『SAVE JAPAN Action! KUMAMOTO』では大きな被害があった熊本県西原村、益城町、南阿蘇村の3町村に絞って連絡をとっているという。

 21日から、寿一は熊本へ向かうという。「僕はたまたま、2011年にどこよりも早くネット上で声を上げた存在。その続きの活動です。モータースポーツ界では『SAVE JAPAN』以外にもさまざまな活動が行われています。オートポリスはモータースポーツ界にとって非常に大切な場所ですし、一日も早く熊本地震で被災された方々が復興されますよう、モータースポーツ界全体で祈っています」と寿一は語った。

SAVE JAPAN 熊本地震復興支援 銀行口座
みずほ銀行 高輪台支店 普通預金 1119260
※ SAVE JAPANの義援金専用口座に義援金を振り込まれた場合、その振込控えが、所得税法78条第2項第1号及び、法人税法第37条第3項第1号の「国または地方公共団体に対する寄付金」に該当する事の証明書となりますので、大切に保管ください。