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トヨタ、年間王座よりもル・マンのタイトル

2016年05月20日 20:41  AUTOSPORT web

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TOYOTA GAZOO Racingは20日、都内で今シーズンのWEC(FIA 世界耐久選手権)と目前に迫ったル・マン24時間に向けたメディア説明会を開催し、伝統レースの初制覇へ意気込みを示した。

 今年、新型車両の「TS050ハイブリッド」で2016シーズンを戦っているTOYOTA GAZOO Racing。エンジンを昨年までの3.7リッターV8自然吸気から、2.4リッターのV型6気筒直噴ツインターボに変更し、ハイブリッドシステムのエネルギー放出量も8MJに増量、バッテリーもスーパーキャパシタに代わるハイパワー型リチウムイオンを採用するなど、大幅な改良を加えている。

 その彼らが、今最も手にしたいと考えているのが世界三大レースのひとつ、ル・マン24時間のタイトルだ。2014年のWECでダブルタイトルを獲得したTOYOTA GAZOO Racingだが、これまで30年あまりにわたって挑戦してきた24時間制覇は未だ果たせぬ夢。モータースポーツユニット開発を指揮するプロジェクトリーダーの村田久武氏は「なんとしてもル・マンで勝ちたい」と、強い思いを口にする。

「自分たちはル・マンのコースレイアウトに集中し、それに特化したクルマをずっと開発してきました」
「去年のレースで惨敗し、すべてを一新する以外に勝つ道がなかったので、去年のル・マンで最終的にすべてのコンポーネントを一新することを決断し、そこから超短期の開発を進めてきました」

「開幕戦のシルバーストンはまさにマッチングの作業をしている真っ只中で、本当にドタバタしながら走っていましたが、この前のスパではやっと走れるようになり、ようやくレースをできる状況になりました」

【次ページ以降の内容】
■スパのトラブルはオー・ルージュ特有の原因
■トヨタよ、敗者のままでいいのか

■スパのトラブルはオー・ルージュ特有の原因
 だが、スパではレース中盤まで独走していたものの、2台がマシントラブルで戦線を離脱。特にトップを快走していた中嶋一貴の5号車はリヤから白煙を上げてピットに戻ってしまった。ル・マンを前にした信頼性のトラブル、ファンにとっては24時間の本番に不安が残るかたちとなった。

 しかし村田氏は、スパのトラブルが全くの想定外のもので、原因はスパ名物のオー・ルージュによるものだと明かした。
「オー・ルージュの壁に跳ね返されたというのが印象です。オー・ルージュを上る時に強烈な縦Gでマシンが路面を強打し、それが原因でエンジンにトラブルが出てしまいました」
「あの時はテレメトリー上でも異常なデータは出ていなくて、(中嶋)一貴も気づいていませんでした。ただテレビ映像で白煙があがっていたので、僕らも最初は何が起きているのか分かりませんでした」
「エンジン自体は正常に機能していましたが、強打したことで油が漏れ、排気管で煙が出たということ。それは確実です」

 サルト・サーキットのフラットな路面では、そうした問題は全く心配していないと語る村田氏は、レースペースでもライバルのポルシェやアウディと十分に勝負できる、そんな自信をのぞかせた。
「戦闘力に関してはレギュレーション通りのキャラクターが出ています。エンジン単体の馬力が高いディーゼルエンジンはブーストしていない時の加速力が優れているので、アウディはその点のアドバンテージがあると思います。ポルシェは8MJになって2年目なので、いろいろな面が熟成されています。個々のコンポーネントの比較では全く負けていませんが、その使い方や始めに予選モードで後続を引き離すやり方など、オペレーションに関しては自分たちよりも1年熟成されている分、戦闘力があると思います」

「トヨタはどうなんだということですが、『ル・マンを見ていてください』というのが自分の回答ですね」

【次ページ以降の内容】
■トヨタよ、敗者のままでいいのか

■トヨタよ、敗者のままでいいのか。
 今年のル・マンで初優勝を勝ち取る、この彼らの強い決意はマーケティングの取り組みからも感じることができる。

 TOYOTA GAZOO Racingが今回のル・マンに用意したメッセージは「トヨタよ、敗者のままでいいのか。」。ハイブリッカーの生みの親であるトヨタが、これ以上、ライバルたちの後塵を拝するわけにはいかないと、かなり挑戦的な言葉をファンに、そして自分たちに投げかけている。
 ハイブリッドはトヨタが先駆けた技術。WECを通じてハイブリッド車をさらに喜んでもらえるクルマにしたいという思いを実現するためにも、敗者のままではいけないという思いをストレートに表したという。

 また、ル・マンのレースを見てくれるファンを少しでも増やしたいとの思いから、スマートフォンで中継映像を視聴できる「LINE LIVE」を通じて、レース映像を配信することも合わせて発表した。メインの中継を行うJ SPORTの協力のもと、6月18日(土)のスタートを生中継するだけでなく、2時間ごとにダイジェスト映像も配信する。最初の生中継はスタートの直前からレース経過1時間ほどを検討しているという。

■ル・マンキャラバントレーラーが日本各地を走る
 また、5月27日(金)~6月19日(日)の期間、日本各地を走る「ル・マンキャラバントレーラー」も実施する。2016年カラーをまとったTS040ハイブリッドを載せたトラックが全国を走り、各地で停車。特製のクリアファイルやマシンの基本情報やドライバー紹介などを掲載したハンドブックを配布するという。

 悲願のル・マン24時間初制覇に向け、総力をあげて臨むTOYOTA GAZOO Racing。彼らの決意が試される注目の決勝は18日午後3時(現地時間)にスタートが切られる。