今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、22人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選ぶ。レース結果だけにとらわれず、3日間コース上のプレーを重視して採点する。
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☆ エステバン・グティエレス
ロマン・グロージャンばかりが開幕から目立つ一方で、トラブルまみれが続き不機嫌だった彼。流れが変わったのは予選Q1、8位に飛び込んできたのに驚いた。Q2ではアタック決まらず16位、そこから2ストップ作戦の力走、相棒とバトルしながら一時8位。ミディアム最長35周は終盤つらくてフェリペ・マッサ、ジェンソン・バトン、ダニール・クビアトに譲らざるを得ず、入賞目前11位。今季ハースでやっとレースらしいレース。
☆ マーカス・エリクソン
マノーに追いまくられる厳しい現状のザウバーでルノー勢を抑える12位。次々に相棒フェリペ・ナッセ、ケビン・マグヌッセンを抜いた「ベストレース」と本人も、その気持ちすごくよく分かる。
☆ ジョリオン・パーマー
“交代説”の噂が騒がれ集中するのも難しかった週末、激しい中位集団戦を切り抜けた。最後ソフトを履いた相棒マグヌッセンとデッドヒート、ハード・タイヤで対抗した13位。(パーマー、グティエレス、エリクソンの3人ともチームメイト相手に戦った健闘に揃って☆を)。
☆☆ バルテリ・ボッタス
ロシア予選2位からここで7位ダウン、コース特性によって乱高下するFW38。低速シケインに限らず、高速3コーナーでもダウンフォースが不足気味。マッサは予選で18位に転落してしまった。単独走行の2ストップ・レースを5位で仕上げることができたのはQ3アタックで7位に食い込んだから。現在、彼らウイリアムズだけが今季ダブル入賞100%(!)。
☆☆☆ ダニール・クビアト
むしろトロロッソに戻り精神衛生上すっきりした、と顔に書いてあるようだった。RB12と空力特性が違いすぎるSTR11なのでフリー走行は完熟ラン、予選も彼にしてはやや控えめ。レースも控えめに進めていたが51周目にソフトを履くやいなや、53周目に初めて最速ラップ。トロロッソ・チームも初めて(!)、“フェルスタッペンMAXムード”のこの1戦に意地を見せた。
☆☆☆ セルジオ・ペレス
かみ合わない不運なレースが続いている彼らが大規模アップデートを実施。その効果はセクター1に表れ、ペレスがフェラーリ勢に肉薄、マクラーレンのフェルナンド・アロンソを従えて予選9位確保。タイヤ・ケアをしっかりやり、長いスティントの前半ペースを抑えた7位ゴール。自身スペインGP最高成績。
☆☆☆ セバスチャン・ベッテル
表彰台や会見では明るくはしゃぎ、コース上ではリカルド相手にやりあい、無線では感情むき出し。最近ベッテルには奔放さを感じる。チームがとった3ストップ作戦を特に批判する言動もなかったが、アロンソだったら、相当もめることになっただろう。周囲の雑音を気にせず、チーム結束力を引き締めようとする2年目のエース。
☆☆☆☆ ダニエル・リカルド
みせどころを何度もつくった。56周目に1コーナーでジャブを放ち、59周目も1コーナーでまたインサイド急襲、人車一体のブレーキング・パワーはスリリング。一瞬抜いたかに見えたがベッテルに跳ね返された。でも60周目にもう一度、64周目は一転シケインで攻撃。この何度も襲い続けた精神力が彼らしい。しかし左リアがパンク、20秒落ちタイムでピットまで戻り、交換後5位ボッタスを1.321秒差に退ける。あの3輪走行ペースがわずかに遅かったら4位を失うところ、不屈の「ミツアナグマ・スピリット」。
☆☆☆☆ カルロス・サインツJr.
スペイン男児の魂――。昨年ベスト予選5位、今年ベスト決勝6位、母国戦に結果を出し切るメンタルを称えよう。先日あったスペインでのテニス大会で彼は地元ナダル戦を見物、TV中継に映った時にはそのプレーを食い入るように見ていた。スタート後3位に割って入ると後続フェラーリ2台を簡単に行かせず、1-2レッドブルの盾となって防御。これは目立たないがフェルスタッペンへのアシスト、ゴール後かつての僚友をアスリートらしく祝福、立派な態度だ。
☆☆☆☆ キミ・ライコネン
ありとあらゆる手を用い、最年長ベテランは18歳レースリーダーを揺さぶっていた。個人的には「キミ・レーシングスクール」のように思えた。周回遅れが前方にいるときにうまくさばけるか、背後でつつきまわしたが18歳はしのいだ。51周目10コーナーでロックを誘い、57周目最終コーナーでは急接近、64周目には諦めたとみせかけて間隔を置き、65周目とファイナルラップにスパート。そういろいろやってもフェルスタッペンは動じなかった。思い出すのは05年サンマリノGP、2位ミハエル・シューマッハーは1位新鋭アロンソに何度も波状攻撃をかけたが0.215秒差。ライコネンもあの時のシューマッハと同じ思いを抱いたのではないか。「きっといつかおまえの時代がくる」と――。
☆☆☆☆☆ マックス・フェルスタッペン
106人目GP勝者は0.616秒差。これまで105人目リカルドは4.236秒差、マルドナドは3.195秒差、ロズベルグは20.626秒差、ウェバーは9.252秒差、101人目ベッテルは9.252秒差。初めて乗るマシンで独走ではない勝利に、フェルスタッペンの堅い意志と鋭利な闘争心を見定める。年齢のことよりそれを絶賛したい。