トップへ

ドナルド・トランプを映画人はどう見ている? 米大統領選で揺れるハリウッド事情

2016年05月20日 14:41  リアルサウンド

リアルサウンド

リアルサウンド映画部

 今年11月に予定されているアメリカ合衆国大統領選挙において、共和党大統領候補としての指名獲得が事実上確定した実業家のドナルド・トランプ氏。民主党はヒラリー・クリントン候補の勝利がほぼ決定しており、今後ヒラリーVSトランプの熾烈な選挙戦が予想される中、ジョニー・デップやジョージ・クルーニー、オスカー女優ジェニファー・ローレンスなど、ハリウッドスターたちによる“反トランプ発言”が世間をにぎわせている。


参考:『シビル・ウォー』、海外の反響は? 世界各国の興行収入とその評価
 
 不動産王として名を馳せるトランプ氏だが、これまで数々の過激な発言でも注目を集めており、「不法移民防御のため、メキシコとの国境に“万里の長城”を築いてその費用はメキシコ政府に支払わせる」だの、「イスラム教徒のアメリカ入国完全禁止」だの、「在日米軍・在韓米軍の駐留費は100%それぞれの国に負担させる」だの、どれもが実現可能かどうか首を傾げたくなるような内容ばかり。最初は誰もがトランプ氏の発言は悪い冗談だと笑い飛ばしていたものの、実際のところ彼が共和党大統領候補に指名されるのも秒読み段階に入った今だからこそ、“反トランプ”VS“親トランプ”の対立が激化しているとも言える。


 「トランプ自伝ー不動産王にビジネスを学ぶ」をパロディ化したコメディ映画『ジ・アート・オブ・ザ・ディール』(日本公開未定)でトランプ氏を演じた俳優のジョニー・デップは、イギリスのテレビ放送局チャンネル5の質問に答え、「もしドナルド・トランプが次期大統領に選出されたら、歴史的に見たら非常に面白い展開になるだろうね。僕らはアメリカ最後の大統領を目にすることになるわけだから。そうなればアメリカという国は滅びるだろうね」と皮肉たっぷりに語った。彼は以前にもアリゾナ州立大学で行われた質疑応答で、トランプ氏を「手に負えない悪ガキだ」とこき下ろしている。(参考:ジョニー・デップ「ドナルド・トランプは、アメリカ最後の大統領になる」、トランプ旋風を止めろ! ハリウッドスターが相次ぎ批判 ジョニー・デップは風刺映画で「あいつはガキだ…」)


 予測不能の破天荒な行動で知られる女優のジェニファー・ローレンスは、「彼が大統領になったらこの世も終わりね」と一刀両断。さらにトランプ氏がリアリティ番組で有名になったいきさつをうけ、「アメリカという国の未来を占う大統領選ですら最高のエンターテイメントになってしまうなんて、リアリティ番組はやり過ぎだと心から感じているの」とかなり手厳しい。さらにイギリスBBCのテレビ番組「グラハム・ノートン・ショー」では、コンサート会場でのプロモーションビデオ撮影中、トランプ氏に対し“F**k you!”と中指を突き出してみせたという過激っぷりをその場で再現し、同席していたジョニー・デップらから拍手喝采を受けていた。(参考:ジェニファー・ローレンス、ドナルド・トランプを批判、ジェニファー・ローレンスが米大統領選を斬る! 「ドナルド・トランプが大統領になったら世界の終わりよ!」)


 俳優、映画監督、プロデューサーと多才ぶりを発揮するジョージ・クルーニーも、イギリスの新聞ガーディアン紙の取材に応じ、トランプ氏を「外国人嫌いのファシスト」と猛烈に批判。今回参加した第69回カンヌ国際映画祭でも「ドナルド・トランプ大統領が誕生することはないね。それは“恐怖”がわれわれの国を動かすことはないからだ。われわれはイスラム教徒や移民や女性を恐れないからね」と語っている。(参考:George Clooney interview:‘Donald Trump is a xenophobic fascist’、George Clooney: 'There’s not going to be a President Donald Trump')


 あまりの嫌われようのトランプ氏だが、『ダーティーハリー』シリーズで人気を博し、近年は『許されざる者』『ミリオンダラー・ベイビー』でオスカーを手にするなど、監督業でも才能を発揮しているクリント・イーストウッドは、彼の移民政策への支持を表明。あくまでも個人的にではあるが、カリフォルニア州、アリゾナ州、ネバダ州でのキャンペーン参加への意思表示を示していると、アメリカのWeb媒体ポリティカル・インサイダーが伝えている。(参考:Director Clint Eastwood Just Made a HUGE Announcement About Donald Trump!)


 女優アンジェリーナ・ジョリーの父親で、オスカー俳優であるジョン・ヴォイトもトランプ氏支持を表明しているとアメリカのE!Onlineが報道。「ドナルドがベストだとは言わないが、私は彼のことを気に入っている。彼は現在アメリカが抱えている問題解決への答えだと思う」とコメント。もともと民主党支持者が多数派を占めるハリウッドで、少数派のトランプ支持者であるヴォイトは、「彼にはユーモアのセンスがあるし、人々を飽きさせない。それに何と言っても彼は正直な人物だよ」とトランプ氏の長所を挙げる。だが、娘のアンジェリーナの意見は正反対で、トランプ氏のイスラム教徒や不法移民に対する発言は「聞くに堪えない」とロンドンでの難民関連のイベントで語っている。(参考:Jon Voight Endorses Donald Trump for Presiden、EXCLUSIVE: Jon Voight Endorses Donald Trump for President、アンジェリーナ・ジョリーがトランプ氏批判「失望」)
 
 もともと人々に夢や希望を与えるハリウッドのショウビズ界は、その存在自体が強大な“エンターテイメント帝国”だと言える。そしてその中から俳優から大統領にまで登り詰めたロナルド・レーガンや、人気俳優からカリフォルニア州知事に転身したアーノルド・シュワルツェネッガーといった政治家を生み出した。ある意味ショウビズ界のノウハウを生かしたアメリカ大統領選を、“最高のエンターテイメント”と言ったジェニファー・ローレンスの指摘は正しい。果たしてショウビズ界を制する者は、政治をも制するという結末を迎えることになるのだろうか!?(平野敦子)