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八田鮎子インタビュー 映画『オオカミ少女と黒王子』原作“何かひとつでも感情を動かせたら嬉しい”

2016年05月20日 13:52  アニメ!アニメ!

アニメ!アニメ!

八田鮎子インタビュー 映画『オオカミ少女と黒王子』原作“何かひとつでも感情を動かせたら嬉しい”
廣木隆一監督の実写映画『オオカミ少女と黒王子』が5月28日より全国公開される。
同作は、恋愛経験ゼロなのに彼氏がいると嘘をついてしまった篠原エリカと、彼氏のふりをすることになったドSな“黒王子”佐田恭也の嘘から始まる、不器用ながらピュアな恋愛模様に目が離せなくなる青春ラブストーリーだ。

2011年から「別冊マーガレット」(集英社)で連載中の原作は、既刊15巻の累計発行部数540万部を突破した超人気作。
劇場公開を前に改めてその魅力を探るべく、作者である八田鮎子に映画を観ての感想やマンガ執筆の裏側について話を伺った。
[取材・構成:川俣綾加]

映画『オオカミ少女と黒王子』
5月28日(土)全国公開
http://wwws.warnerbros.co.jp/ookamishojo/

──実写映画化が決定したときの心境を教えてくだい。

八田鮎子さん(以下、八田)
すごく嬉しかったです。同時に「なんだかすみません!」という気持ちも(笑)。私の作品に目をつけてくださった方がいたんだなと思って。本当にありがたいです。『オオカミ少女と黒王子』は私にとって、単行本が一冊だけで終わらなかった初めての作品。アニメにしていただいて、そして実写……もう、満足です(笑)。

──エリカ役の二階堂ふみさん、佐田役の山崎賢人さんほか、各キャスト陣についてはどう感じましたか?

八田
実は、最初は少しだけ不安があったんです。佐田くんってニ次元の良さがある、マンガっぽいキャラクターなので。マンガの世界ではカリスマ性がある高校生だし、生身の人間が演じるとなると一体どうなってしまうのだろう、と。
でも山崎さんが金髪にしてイメージを作ってくださったおかげで、映画を観て「佐田くんだ」と納得しました。私はとても好きです。

──髪といえば、原作でも佐田の髪を描くのが大変と言われたことがありますね。

八田
そうなんです、今も大変ですよ。デジタルではなくアナログ作業で描いているのもあって苦労しています。いっそのこと髪を切らせちゃえ! と何度も考えました(笑)。人間は8割がた髪型だと思っているので気合を入れて描いている部分ですね。だから映画でも、山崎さんが金髪にしてイメージを寄せてくれたのは大きかったです。


──映画は原作のお話をきれいにまとめていたと思いました。

八田
映画の物語はおまかせでお願いしていました。原作をうまくまとめてくれた上に、私が描けなかった部分も掘り下げてくださったおかげで原作ファンの方にも新たな楽しみがあるのではと思います。

──作中には佐田のドSな黒王子だけでなく、色々な王子様がいます。印象に残っているのは?

八田
日下部くんを演じた吉沢亮さんです。私がエリカだったら日下部くんを選びます!(笑)。エリカに対する慈愛に満ちた表情がすごく良くて。じわっと泣かせてくれるお芝居でした。

──原作の日下部は女の子っぽさがあるのですが、実写で吉沢さんが演じる日下部はまた違ったかっこよさがありました。

八田
原作では女の子っぽくて頼りない日下部が、ちょっと男らしくなっていましたね。メガネなのもまたいいです! 吉沢さんが演じる日下部だったらついていけそうな感じがします。あとは、健も好きです。男らしくて明るいし、一緒にいて楽しそうにしてくれるのがいいですね。読者に人気なのはダントツで佐田くんです。

──印象に残っているシーンはありますか?

八田
エリカが隠し撮りした佐田くんの写真をマリンたちに見せて、同じ学校にいる佐田くんだと気づかれたあと「見に行こう!」とみんなで廊下を走っているところ。リアルな感じもあって、楽しそうで可愛いシーンです。エリカが「待ってよ~!」と追いかけていくのもいいなと思います。


──八田先生は撮影現場も見に行ったそうですね。

八田
最後のシーンの撮影は見に行きました。神戸は地元なのですごくなじみのある場所で。この作品のロケ地だと思ったらもう、いつもと同じ目線で中華街を見られなくなってしまいました(笑)。この場所でエリカがこうしてたな……とか、佐田くんが……とか、絶対に思い出しちゃいそう。

──現場の雰囲気はいかがでしたか?

八田
二階堂さんも山崎さんもすごく仲良しでした。「これが今時の若者か~!」なんてこちらも眺めるのが楽しかったですよ。本当に高校生がそこにいるという感じで。最後のシーンはふたりのそんな仲の良さがフィルムに反映されているので、注目して欲しいですね。

──この作品を描こうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

八田
とにかくインパクトがあるものを描いてみようと考えたんです。ドS男子がいるワンシーンが頭に浮かんで、何を伝えたいかよりも先にそこを描こうと思って生まれたのがこの作品です。そのあとどんなお話にするかで苦労することになるのですが……(笑)

──『オオカミ少女と黒王子』はとても胸キュン要素が多い作品。どのようにこの胸キュンを生み出しているんですか?

八田
実は、あまり胸キュンしてもらおうとは思っていないんです。そこを考え始めると空回りしてしまいそうなので、佐田くんらしさを出していくようにしています。物語としても佐田くんにスポットを当てているのでそこが中心。寂しがる佐田くん、謝る佐田くん、「会いたい」とポロリとこぼす佐田くん……という風に、あまり感情を表に出さない佐田くんに何をさせるか、どう掘り下げるか、そうした佐田くんのちょっとした行動や感情から思考をスタートさせていて。読み切り形式が多いのはそれが理由でもあります。

──最後に、読者にメッセージをお願いします。

八田
『オオカミ少女と黒王子』を実写でやるとこんな作品になるんだと、とても入り込みやすい映画になっていると思います。「可愛かった」と言ってもらえたり、ニヤニヤしたり、何かわき上がってくる感情をお持ち帰りいただけたら嬉しいです。「面白かった」よりは「かわいい」「ニヤニヤした」のほうが率直な感想のような気がして、感情を揺さぶることができたのかなと思っています。同じように「ムカついた」も作り手としてはしめしめ、と(笑)。何かひとつでも感情を動かせたら幸いです。原作ももうすぐ終わりなので、ぜひ最後までお付合いください!