トップへ

阿部寛、カンヌでの『海よりもまだ深く』上映に手応え 「受け入れていただけて嬉しい」

2016年05月19日 18:11  リアルサウンド

リアルサウンド

『海よりもまだ深く』(c)2016 フジテレビジョン バンダイビジュアル AOI Pro.

 第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品された、是枝裕和監督最新作『海よりもまだ深く』の公式上映が、フランス現地時間の5月18日夜に行われた。


写真・動画はこちら


 フランス・カンヌには、是枝監督をはじめ、阿部寛、樹木希林、真木よう子の4名が現地入り。上映前のフォトコールで4人は、カンヌの印象を思い思いに語った。是枝監督は、「マーケット試写を観てきた記者の方たちと取材のときに話したら、意外とみんなちゃんと笑ってくれているようでした。日本と同じようにクスクス笑いながら、後半はちょっとしんみりとしっとりとそういう展開になってくれればなと思っています」と期待に胸をふくらませた。


 多くのマスコミや観客に迎えられレッドカーペットを歩き、上映前の舞台挨拶に登壇した阿部は、「是枝監督作品は2作目ですが、いつか是枝さんの作品でカンヌに来れることを夢見ていました。今日は楽しんでいってください」とコメント。樹木が「今はゆとりのある顔をしていますが、上映が終わったらすぐに逃げられるように準備しております」と話すと、場内には笑い声が響き、和やかなムードの中、上映が行われた。


 上映中は、阿部演じるダメ息子の良多と、樹木演じる母・淑子の会話シーンなどで、度々笑いが起き、上映後は、是枝監督や出演者たちに向けて、約7分間にわたるスタンディングオベーションが続いた。


 4人は上映後、日本メディア向けの囲み取材に出席。是枝監督は、「上映が終わった後のお客さんたちの表情がとてもあたたかく優しくて感動しました」と、上映後の率直な感想を述べる。カンヌ国際映画祭には初参加となる阿部は、「これだけの多くのお客さんが拍手をしてくださって、それが鳴り止まなくて、本当に感動しました」と語り、『そして父になる』に続いて2度目の参加となる真木は、「また温かい拍手に包まれて、反応が予想をはるかに超えて良かったので、とても嬉しかったです」とコメント。初号試写に続き作品を観るのは2回目だったという樹木は、「監督が何か粉を撒いたんじゃないかと思うくらい、みんな上手に見えました!」と笑いを交えながら話した。


 初めてカンヌのレッドカーペットを歩いた感想を聞かれた阿部は、「あの広さはすごい。やっとここに立てたなと思いました。是枝組で立てて本当に嬉しかったです」と答える。是枝監督も「手を振ってあっちを向いたりこっちを向いたりするのは恥ずかしいけれど、あの場は女優さんのためのものだと思うので、みんなのために頑張りました(笑)。でもあそこを歩くのはちょっといい経験だなと思います」とレッドカーペットを振り返りながら、カンヌ国際映画祭については、「ここが一番厳しいと思います。作品に対しても、セレクションに対しても、審査に対しても、批評に対しても。皆真剣に映画に向き合って2週間を過ごす場所。これだけ拍手とブーイングが交錯する場は他にはないので、貴重な経験ができます。この緊張に耐えられる作り手でありたいと改めて思える場です」と、その思いを語った。


 上映中に笑い声が上がったことについての質問が飛び、是枝監督が「泣かれるより嬉しいです。より登場人物を身近に感じてくれた証拠だと思うので、言葉が悪いけれど、してやったり! と思ってしまいました」と答えると、樹木から「それは言葉がダメね。もっと監督は良い言葉を選ばなきゃ」とツッコまれる場面も。「でも伝わったなって思えたわね!」と話す樹木に対して、是枝監督は「この映画の笑いが伝わるかがずっと気がかりだったので、安心しました」と、安堵した。


 カンヌ初参加の阿部に対して、「何か初体験はありましたか?」の質問が上がると、阿部は「お客さんと一緒に映画を見れたというのが、本当に良い経験でした。受け入れていただけて嬉しいですね」と答える。それに対して樹木は「じゃあ、この映画をターニングポイントにしてまた変わるわね。成長しちゃうわね。阿部さんは団地より、カンヌの風景の方が似合うわ。ビシーっとハマってたわ」と絶賛した。最後に是枝監督は作品について、「今回は伝わるか伝わらないかをあまり気にせず、狭く深く描いていった作品だったのですが、きちんと描けば必ず伝わると思っていたので、それを今日の上映で実感しました」と話しながら、「郷土愛が強いタイプではないんですが、自分の地元がカンヌで上映されると、さすがにちょっと感慨深かったですね」と、自身が19年間住んでいた団地に対する思いを口にした。(リアルサウンド編集部)