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小林靖子インタビュー“牙狼は正統派ヒーローもの” 「牙狼〈GARO〉-DIVINE FLAME-」脚本

2016年05月19日 17:52  アニメ!アニメ!

アニメ!アニメ!

小林靖子インタビュー“牙狼は正統派ヒーローもの” 「牙狼〈GARO〉-DIVINE FLAME-」脚本
2005年に深夜帯で放送された特撮ドラマを皮切りに、さまざまな作品が作られてきた『牙狼〈GARO〉』シリーズ。太古より人知れず“ホラー”と戦ってきた魔戒騎士や魔戒法師たちの熾烈な戦いを描いている。
2014年には監督に林祐一郎、シリーズ構成・脚本に小林靖子を迎え初のテレビアニメとなる『牙狼〈GARO〉-炎の刻印-』が放送された。魔女狩りで炎に焼かれ殺された母親から産み落とされたレオンが魔戒騎士として成長していく同作は、躍動感にあふれた戦闘シーンやキャラクターたちの葛藤、人間の美しさ、そして醜さが生む悲劇など、様々な要素をもつアニメとなった。

5月21日に全国公開される劇場版『牙狼〈GARO〉-DIVINE FLAME-』に先駆け、脚本を担当した小林靖子さんにインタビューを敢行。劇場版の見どころや、TVシリーズを制作した頃についてのお話を伺った。
[取材・構成=川俣綾加]

『牙狼〈GARO〉-DIVINE FLAME-』
5月21日(土)全国公開
http://garo-divineflame.jp/

■ 「牙狼〈GARO〉」は正統派な作品

──劇場版の制作が決定した時のお気持ちはいかがでしたか?

小林靖子さん(以下、小林)
シリーズ構成・脚本を担当したTVシリーズ『牙狼〈GARO〉-炎の刻印-』の放送が終了してまだそんなに時間が経っていないので、私としてはすんなり自然に入っていくことができたと思います。

──印象に残っているシーンを教えてください。

小林
終盤にヘルマンが「さあ、誰でしょう」とひとこと言うシーン。アフレコも見にいったんですが、ヘルマン役の(堀内)賢雄さんのお芝居と映像が合わさって、ぐっときますね。最初にレオンが登場するシーンも盛り上がります。物語において始まりはとても重要なので、あそこで一気に世界に引き込まれると思います。私の担当はシナリオですが、映像になって音楽と合わさると面白さが倍増されるというか。今回の牙狼でもアクションシーンがたっぷりで、全てが見どころです。

──以前にも、特撮ドラマ『牙狼〈GARO〉』の脚本を何度か担当されていたんですよね。どんな作品だという印象でしたか。

小林
残酷なシーンや女性の裸も出てくるけれど、実は正統派だなと。そういう描写を除けば正統派ヒーローもの。主人公はすごく正義の人で、間違ったことはしない。監督の雨宮(慶太)さんはそこを徹底していると思いました。

──脚本を担当する際、大人向けということで作り方など意識したことはありましたか?

小林
そこはあまり意識しなかったですね。難しい単語をわかりやすいものに置きかえる必要がないとか、夜のシーンをたくさん描けたり、残酷な描写をしてもOKなので幅が広がりました。


──特撮ドラマでは日本が舞台で、アニメ版では中世ヨーロッパを思わせる世界ですよね。この西洋風の舞台は誰の発案だったのでしょうか。

小林
確か私が「中世ヨーロッパで」と言い出したはず。雨宮さんは「自分ではやらないようなことをやって欲しい」とおっしゃっていると聞いたのと、プロデューサーの方も海外でもどこでも自由に、とのことだったので。鎧を召喚しホラーと戦うという軸さえブレなければOKで。
設定を考えるにあたり色々な資料を見ていたら、たまたま拷問の歴史や魔女狩りのお話があったんです。牙狼の世界に合うのではないかと考えプロデューサーに叩き台を出したら、すんなりOKが出たんです。そこから基本的なキャラ造形をこちらで決めていって。

──そして、作品の根本的な部分を小林さんとプロデューサーのみなさんで練っていったんですね。オリジナル作品をつくる時は、最初にテーマを決めてそこから進めていくのですか?

小林
説教くさくなってしまうのでがっちり決めて取り組むことはないですね。進めていくうちになんとなくできてくるというか。『牙狼〈GARO〉-炎の刻印-』に関してはシリーズ構成の作業があったのでその時点である程度全容が見えているし、だからといって計算づくでもありません。最後のことはあまりわかっていなかったりもします。

──苦労したことがあれば教えてください。

小林
やっぱり最初の頃にシリーズ構成をみんなで悩んだことですね。オリジナルなお話をもんでいくのがすごく大変で。林(祐一郎)監督とプロデューサー陣で合宿もしたんですよ。部活の合宿のように和気藹々とお互いにアイデアを出し合って、いい雰囲気でできました。

──そうして作り上げたTVシリーズ。今振り返ってみて、小林さんにとってどんな作品になったのでしょうか。

小林
携わった他の作品もそうですが、ひとつひとつ大切な作品です。そして牙狼も私にとって大切な作品。牙狼では林さんの監督としてのデビュー作なので、初監督作品をご一緒できたのがとても嬉しかったです。



■ 鎧の系譜を下の世代が受け継いでいく、

──小林さんから見た林監督はどんな印象の方ですか?

小林
物静かな方ですが、やりたいことに対してはとても熱い方。上がってくる映像はアクションもすごく激しくてかっこいいんです。静かなのは、たぶん頭の中で色々なことを熟考されているから。

──劇場版『牙狼〈GARO〉-DIVINE FLAME-』でもアクションシーンはとても引き込まれて、目が離せませんでした。今回は、別のキャラクターを立てて新たな物語を描くのではなく、レオンたちのその後の物語を描いていますね。

小林
劇場版が決定した際にヘルマンを登場させることだけは決定していたんです。この作品を好きな方はやっぱりその後を見てみたいんじゃないかと話し合ってそうしたお話になっています。同時に、TVシリーズ最後のほうでヒメナのお腹にはヘルマンの子供がいたので、その子も見せよう、ということでロベルトも。鎧の系譜を下の世代が受け継いでいく、血で次に繋げていくさまを見て欲しいですね。

──劇場版ならではのポイントは?

小林
TVシリーズはレオンの成長物語。劇場版はレオンが成長後のカッコイイ姿を堪能できるところかなと。少し大人になっていますよ。アルフォンソは肩の荷が下りたのか以前よりやわらかくなって、レオンとのいいコンビ感も。

──私も映像を見ましたが、最後の最後まで、本当に目が離せませんでした。ラストはほっとしたと思ったら……。

小林
そこは林さんのアイデアですね。シナリオの段階だと「あっさりしてしまうかも」なんて不安もあったのですが、アクションシーンがたっぷりあったおかげで熱くなる展開になっています。林さんやスタッフのみなさんのおかげです。


■ レオンは陰陽の陰、けれど心の内に秘める熱いものがある

──それぞれのキャラクターについて、小林さん目線の印象を教えてください。

小林
普通ならアルフォンソが主役でその相棒がレオンなのが王道なんですけど、主人公はレオン。陰陽でいうなら陰だけど、心の内に秘める熱いものがある。そのレオンが主役なのは面白いですよね。アルフォンソは「清く正しく」を地でいく青年で、コメディ部分を担えるかわいげがあるキャラクター。ヘルマンは私がよく出しがちというか、馴染みのあるタイプというか。ルパンや冴羽?もだけど、普段はおちゃらけてるけれど強い昭和のかっこいいちょいワル親父。賢雄さんの声がすごくのっていていいですよね。

──エマは女性キャラクターですが、あまり女性っぽさみたいなものがあまり出てこないですよね。女性だけど行動も考え方も男性にすんなり置き換えられる。

小林
色気があるけれどそれを売りにしない、本当に独立したキャラクターですね。お姉さんっぽさがありつつ、面倒見がいいわけではない。常に一匹狼。本来なら男性キャラクターとして登場させるところですが、男性だと嫌味っぽい一匹狼になってしまうので、女性にすることでバランスがとれるかなと思いました。エマは朴ろ美さんの声が本当に素敵です。バゼリアの姫・サラ役の小宮有紗ちゃんも、お姫さまでない部分のお芝居にびっくりしました。声だけ聞いていると有紗ちゃんだとわからないくらい。『特命戦隊ゴーバスターズ』からのお付き合いですが、今後がますます楽しみです。


──特撮ドラマのスタートから現在まで、ファンに長きにわたって愛される牙狼シリーズ。その理由は何だと捉えていますか。

小林
ハリー・ポッターシリーズと似たようなもので、世界観とその世界におけるルールが完成されていて、世界観を好きな人はずっと追いかけてもらえる作品なのではと思っています。

──最後に、メッセージをお願いします。

小林
『牙狼〈GARO〉-DIVINE FLAME-』はTVシリーズを見ていなかった方も存分に楽しんでもらえる作品です。劇場の大画面で観るとさらなる迫力。劇場で映像に酔いに来ていただければなと思います。後悔はさせないのでぜひ観にきてください。