2016年05月19日 16:51 弁護士ドットコム
日本弁護士連合会は5月19日、夫婦同姓や女性の再婚禁止期間を定めた民法の改正を求める院内集会を東京・永田町の参議院議員会館で開いた。東京大学の高橋和之名誉教授(憲法学)や夫婦別姓違憲訴訟を担当した弁護士らが登壇し、民法の規定や最高裁の判断の問題点について意見を述べた。
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最高裁大法廷は昨年12月、夫婦同姓を定めた民法の規定は「合憲」だとして、夫婦別姓を認めない判決を下した。一方で、離婚などで婚姻を解消した後、女性にのみ半年間再婚を禁止していた民法の規定は「100日を超える部分について」違憲だと判断した。
高橋名誉教授は、夫婦同姓を定めた規定を合憲とした最高裁の判決について、「国民の最も知りたかった点の判断を巧妙に回避した」と批判した。
「最高裁は、人格権、平等権、婚姻の自由という原告が主張した人権について、(夫婦同姓の規定は)そもそも人権の制限はないと判断した。人権の制限がない以上、その正当化を判断する必要もないということだ。国民がもっとも知りたいと思っている点を、最高裁は巧妙に回避した。
少なくとも婚姻の自由については、(夫婦同姓の規定が)人権の制限にあたると考えている。仮に合憲だと判断するとしても、その制限が正当化されるかどうかを、立ち入って判断し、国民に考え方を示すべきだった」
そのうえで、婚姻の自由について次のような考えを示した。
「憲法24条は、1項で婚姻の自由を規定し、2項で婚姻制度について定めている。なぜ1項に婚姻の自由を規定したかといえば、制度の上に自由があると考えたからだ。人権と制度との関係について、最高裁は、制度の範囲内に人権がある考え方をしているように思えるが、逆だ。人権が許す範囲内での制度でなければならない」
NPO法人mねっと・民法改正情報ネットワーク理事長の坂本洋子さんは、女性の再婚禁止期間について、そもそも前提となっている嫡出推定の規定に疑問を投げかけた。
嫡出推定を定めた民法772条には、次のようなルールが設けられている。
(1)結婚中に妻が妊娠した場合は、夫の子と推定される。
(2)離婚した日から300日以内に生まれた子は、離婚した夫の子と推定される。
(3)再婚した日から200日を経過した後に生まれた子は、再婚した夫の子と推定される
再婚禁止期間が設けられている理由は、離婚後すぐに再婚を認めると、前の夫と新しい夫、両方の子どもと推定されてしまう事態が生じてしまうからだとされてきた。
坂本さんは、嫡出推定の規定が明治時代当時の医学水準で必要だった規定であることを指摘。現代では(1)のルール以外は「必要性はない」と主張した。今回の最高裁判決で、再婚禁止期間については、100日を超える部分については違憲となったが、合憲となった100日間についても不要だという考えを示した。
「昭和15年の民事局長通達で、法律婚をした場合、(再婚も含めて)その後に出された出生届は(婚姻後200日経っているかどうか関係なく)夫婦の子どもとして扱う運用になっている。200日規定はすでに形骸化している。再婚禁止期間はこうした形骸化したルールを前提にした規定だ。100日に短縮されたからといって、女性にとって差別的な規定が残っていることには変わりはない」
(弁護士ドットコムニュース)