トップへ

T.M.Revolution、20年の活動支えた“歌唱力” ベスト盤優勢の中に新たな動きも?

2016年05月19日 14:11  リアルサウンド

リアルサウンド

T.M.Revolution『2020 -T.M.Revolution ALL TIME BEST-』(初回生産限定盤)

参考:2016年5月9日~2016年5月15日【2016年5月23日付・ORICON STYLE】(http://www.oricon.co.jp/rank/ja/w/2016-05-23/)


 3週間前にレジーさんが指摘された「J-POPを一度整理しようとする流れ」が、今週のチャートからも感じられます。下位から順に、氷室京介、AI、小田和正のベスト盤がロングセールスを続けており、初登場1位はT.M.Revolutionのオールタイム・ベスト。4.4万枚なのでビッグセールスとは言い難いですが、20年前にデビューし、ラジオパーソナリティや俳優や声優業なども器用にこなしてきた彼が、今も「マルチタレント」ではなく「歌手」としてチャート1位を取れること。なかなかできることではありません。


(関連:小田和正などベテラン勢「オールタイムベスト」ヒット続く “一度整理”されたJPOPが向かう先は?


 デビュー当時の衣装のインパクト、向かい風にさらされるMVのイメージ(今回のジャケも風が吹きまくり!)、さらには芸人やアイドルとも余裕で絡めるトークのうまさが際立つゆえに「おもしろキャラの人」として認知されがちですが、西川貴教は、歌の上手さが実は抜群(これはタモさんがよく感心していますね)。少しハスキーな声質は、普通「陽より陰」の方向、つまり切ないバラードなどで魅力を発揮するものですが、彼の場合はとにかく明るい。そして圧倒的にパワフル。ハスキーなのに高音域でも絶対に潰れない。ハイトーンが得意なだけでなく、低音域になっても声量がまったく変わらない。ふつうに真似すると喉を壊します。これこそが彼の20年を支えてきたのでしょう。


 「J-POPの整理」に加担しているのは、初登場4位となる原田知世のカバーアルバム『恋愛小説2~若葉のころ』も同じです。昨年3月にリリースされたカバー第一弾ではノラ・ジョーンズやビートルズなどの洋楽をアコースティック/ジャズ/ボサノヴァ風に料理していたので、いわゆる「洒落たカフェでかかる名曲カバー」的なニュアンスもありました。が、今回は全編が邦楽のヒット曲。竹内まりや「セプテンバー」、荒井由実「やさしさに包まれたなら」、松田聖子「スイート・メモリーズ」などなど、70年代後半~80年代前半の流行歌が洒脱なセンスでアレンジされているのです。いちシンガーとして、素直に自分のJ-POP史を整理している原田知世。今まではJ-POPから若干距離を置いた、ハイセンス&サブカル方面での音楽活動が多かった人ですから、この作品はひとつの転機になりそうな気がします。


 さて、整理されたJ-POPのあとに何が出てくるのか。ヒントになりそうなのは5位のイトヲカシ『捲土重来』。伊東歌詞太郎(ボーカル)と宮田“レフティ”リョウ(ギター/ベース/キーボード)によるユニットです。ニコ動で話題になった覆面の二人組……と書けばよくいるボカロPかと思われそうですが、彼らが面白いのは、ニコ動で支持を得たあとに全国各地で路上ライブを行い、直接顔を見せて歌うことで確かなファンベースを作っていったというストーリー。わかりやすく力強いメロディ、日本語の熱いメッセージ、ロックとポップスの両方にアピールできるサウンドなども、従来の「ネット発の音楽クリエイター」のイメージを覆すものでしょう。


 おそらく、昔ならば「ストリートで話題→レコード会社の争奪戦→各メディアのパワープッシュ→ヒット」という流れに乗っていたはずのユニット。しかし彼らは「ネット発信→ストリートのリアル・コミュニケーション」だけで、初の全国流通盤をオリコンチャート5位にランクインさせたのです。すごい時代になってきました。(石井恵梨子)