F1スペインGPレース後の記者会見は、これまでにない温かい雰囲気に包まれていた。あらためて、その様子をお伝えしよう。
たとえば、あと一歩のところで優勝を逃したキミ・ライコネンに司会者が心境を尋ねると、ふだん会見でめったに笑顔を見せないライコネンが微笑みながら、こんな答えをした。
「勝てなかったことには、もちろんがっかりしているけど、予選でのパフォーマンスを考えれば、フェラーリが2台とも表彰台に上がることができて良かったと思っている。負けることは僕たちが望んでいる結果ではないけれど、今日は彼(フェルスタッペン)の初優勝を祝いたい。彼が優秀なドライバーだということは、みんな知っているからね。最年少と最年長とか、関係ないよ。それより僕は、彼のお父さんとレースしたんだってことに、いまは驚いているよ(笑)」
ライコネンでさえ、これだけリラックスした雰囲気だったのだから、ベッテルのノリは、さらに絶好調だった。「マックス、父親とヘルムート・マルコのどちらが、よりあなたの人生において大きな影響を与えましたか」という質問に、フェルスタッペンが「4歳から16歳までは間違いなく父親だけど……」と答えると、隣にいたベッテルが「4歳までは誰だったの? なんか、あったの?」と、すかさず突っ込みを入れていた。
また「フェラーリのドライバーたちが初勝利を決めたときのことを覚えていますか」という質問に、フェルスタッペンが「(ベッテルのほうを見ながら)いつだっけ? 2008年のモンツァだったら、たぶんカートに乗っていたと思う」と答えたあと、ライコネンのほうを見ながら、「(ライコネンが初優勝した)2003年のことは覚えていない。だって、まだ6歳だったからね」と言うと、ベッテルは笑いながら「幼稚園で、お迎えを待っていたんじゃない?」と絡んできた。
さらにフィンランドの記者から質問を受けたベッテルは、質問が終わる前に「彼の質問は99.9%キミ(ライコネン)へのものだから覚えておいたほうがいいよ」と、フェルスタッペンに助言を与え、「あなたから質問をいただけるなんて、光栄です」と、先輩らしく貫禄のある(?)対応を見せた。いつもベッテルは饒舌だが、レース後の会見で、ここまで和やかな姿を見たのは初めてだ。
なぜフェラーリのふたりは敗れたにもかかわらず、フェルスタッペンの優勝を祝っていたのか。ひとつ言えるのは、フェルスタッペンには、どこかベッテルを思い起こさせる雰囲気があるということ。だからベッテルはもちろん、ベッテルと親しいライコネンとも波長が合うのではないだろうか。
レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は言う。
「本当に不思議なことだが、マックスには、セバスチャンを思い出す点が、いくつもある」
ベッテルのF1初優勝は22戦目、フェルスタッペンは24戦目。これからフェルスタッペンはベッテルが歩んだ道を追っていくのか、ベッテルを超えていくのか。どんな道を歩んでゆくのだろうか。