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旺文社、紙の入試問題をPDF化するも「著作権者の許諾なし」を理由に削除へ

2016年05月18日 18:22  弁護士ドットコム

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受験参考書などを出版する旺文社は5月16日、教育機関から提供された過去の入試問題に関して、保管方法と著作権処理に不備があったことを発表した。紙で保管していた入試問題をデジタルのPDFデータにする際、著作権者に許諾をもらっていなかったのだいう。同社は今後、すべてのPDFデータを削除し、保管方法を改めるという。


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旺文社のホームページによると、同社は、教育機関などから提供された入試問題を利用して参考書や問題集を出版している。紙の書籍のほか電子書籍などに二次利用する際も権利処理したうえで適正に使っていたという。



入試問題の原本は、社内の倉庫に保管していた。経年劣化への対応と倉庫スペースの関係から、大量の入試問題を安定的に保存するために、PDFデータ化を順次おこなっていた。PDF化が終わった紙の原本は年度ごとにすべて破棄していた。



ところが、入試問題の原本を破棄してPDFデータとして保存する行為が「著作権法上の複製権に抵触するおそれがある」ことが、このほど判明したという。同社は今後、保管しているすべてのPDFデータを削除し、保管方法を改める。



著作権にくわしい高木啓成弁護士は弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「今回のケースは、個人が所有する書籍などをPDF化する『私的複製』と同じとはいえないため、PDF化の段階で『複製権』を侵害する可能性がある。ただ、そもそも法律がこうした事態を想定したものといえず、法律が時代に追いついていないために起きたともいえる」と話していた。


(弁護士ドットコムニュース)