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MICHIが語る、アニソンシンガーとしての責任と海外進出への展望 「アニメは地球語」

2016年05月18日 17:11  リアルサウンド

リアルサウンド

MICHI

 MICHIのニューシングル『リアリ・スティック』が5月18日にリリースされる。通算3作目のシングルとなる本作の表題曲は、4月からスタートしたテレビアニメ『クロムクロ』のエンディングテーマ。過去2作とは一線を画する、シリアスな世界観の中に冷たさと熱が同居する聴き応えのある楽曲に仕上がっている。アニソンシンガーを目指して歌手になったMICHIは、この難易度の高い曲とどう向き合ったのか。前回のインタビュー(参照:MICHIが語る“アニソン愛”とシンガーとしての夢「アニソン界に新しいジャンルを作れたら」)同様に持ち前の明るさで、新作の聴きどころやアニソンに対する考え方を説明してくれた。(西廣智一)


(関連:MICHIが語る“アニソン愛”とシンガーとしての夢「アニソン界に新しいジャンルを作れたら」


・「夢のまた夢ですけど……ワールドツアーをやりたい」


ーー前作から4ヶ月経たずして3rdシングル『リアリ・スティック』がリリースされます。アニソンシンガーは1クール(3ヶ月)ごとに新曲を発表する方も多いと思いますが、今回のように2クール立て続けにアニメ楽曲を発表するサイクルはどうですか?


MICHI:まさかデビューして1年も経ってないのに、早くも3rdシングルまで出させていただけるなんて正直思ってもみなかったので。しかも3作とも全部アニメとのタイアップが決まって、どれも素晴らしい作品でビックリしています。


ーー昨年7月にテレビアニメ『六花の勇者』のオープニング&エンディングテーマを収録したシングル『Cry for the Truth / Secret Sky』でメジャーデビューしたので、まだ1年経ってないんですよね。


MICHI:そうなんです。そこから今年1月に『だがしかし』(のオープニングテーマ『Checkmate!?』)、そして今回の『クロムクロ』なので。皆さんビックリしますよね? だって私もビックリしてますから(笑)。


ーーさらに、この夏はロサンゼルス『Anime Expo 2016』、上海『Bilibili Macro Link STAR★PHASE 2016』、ボルチモア『OTAKON』と海外の大型イベントへの出演が立て続けに決まっています。


MICHI:しかも聞いてくださいよ! 『OTAKON』出演はこのインタビューが始まる直前に知らされたんですよ? 『Anime Expo』から2ヶ月連続でアメリカに行けるんだと思うと……感激です。でも行けるのなら、まだまだいろんな国に行ってみたいですね。


ーー『Anime Expo』や『OTAKON』はアニメファンなら一度はその名を耳にしたことがあるくらい有名なイベントですし、そこで歌えることは本当にすごいことだと思いますよ。


MICHI:本当に幸せです。私の間違いじゃなければ、映画『テッド2』に『OTAKON』って出てきたと思う。ストーリーの中でアニメのところで戦うシーンがあって、それが『OTAKON』だった気がするんですけど……そんな名前の覚え方で申し訳ないのですけど、それくらい知名度のあるイベントにデビュー1年目で出られるなんてビックリです。


ーーこれだけ立て続けに海外の大型イベントに出演する日本の新人アーティストって、すごく限られてくると思うんです。


MICHI:自分が今置かれている環境がどれだけ幸せなのかは常に実感していて、「これが当たり前じゃないんだぞ」と毎日自分に言い聞かせてます。私、運だけは特別いいんです(笑)。なのでそこに実力が伴っていけばいいなというか。運と仲良くなって、世界中にMICHIんちゅ(=MICHIのファン)を増やしていきたいと思ってます。そして本当に夢のまた夢ですけど……ワールドツアーをやりたいな。


スタッフ:……えっ?


MICHI:えっ、ダメですか?(笑) 海外にはお仕事でまだ2回(ジャカルタとシンガポール)しか行ったことがないですけど、2回ともお客さんがみんなアニメに対して熱かったんです。そこは世界共通、アニメは地球語なんだなと思って。今初めて口にしたんですけど、ぜひワールドツアーを実現させたいです(笑)。


・「近未来感が感じられるのがアニソン」


ーー前作「Checkmate!?」がテーマソングに起用された『だがしかし』も話題作でしたが、今回「リアリ・スティック」がエンディングテーマに採用された『クロムクロ』もこの春注目のアニメですよね。


MICHI:P.A.WORKSさんの15周年記念アニメで、しかも初ロボットアニメなんです。15周年記念とか初ロボットアニメとか、そんな記念作品のエンディングテーマを歌えるなんて本当に恐縮しています。


ーーさらにオープニングテーマは同じレーベルの大先輩、GLAYですし。


MICHI:そうなんですよ! まさかポスターに「オープニングテーマ:GLAY/エンディングテーマ:MICHI」と名前が並ぶとは思ってなくて、もうビックリです! 今置かれている現状が夢か誠かって感じで(笑)。


ーーGLAYのように、今やJ-ROCKやJ-POPのフィールドからもたくさんのアーティストがアニメに楽曲提供する時代ですが、MICHIさん自身はアニソンというとどういう曲が印象に残っていますか?


MICHI:一番印象に残っているのは『ギルティクラウン』のテーマソングで、EGOISTさんの「The Everlasting Guilty Crown」。あと、沖縄でオタク活動をしていたときにみんなで歌っていたのは『銀魂』の……DOESさんの「修羅」や「曇天」。『BLEACH』だと、miwaさんが歌ってた「chAngE」もかな。他にも『家庭教師ヒットマンREBORN!』とか『Free!』とか『神様はじめました』とか……好きなアニメのテーマソングを挙げたらきりがないですね(笑)。


ーー今挙がったDOESやmiwaさんはまさにJ-ROCKやJ-POPのフィールドでも活躍しているアーティストですが、MICHIさんの中ではアニソンとJ-POPの違いはどう考えてますか?


MICHI:アニソンはちょっと近未来感がある曲調が多いじゃないですか。それとアニメの異世界観を反映した歌詞。それこそElements Gardenさんが作る楽曲がまさにそうで、それが私の中でのアニソンというイメージ。そしてJ-POPはもっと音も歌詞も現実味があって身近という印象かな。


ーーアニソンはもうちょっと現実離れしている?


MICHI:そうですね。ストリングスの音色とか、それこそ私の「リアリ・スティック」にもそういう近未来感があると思うので、「これぞアニソン」という気がします。


・「この歌詞は由希奈ちゃんの心情を描いたものなんだ」


ーー今回のシングル表題曲は過去2作とは異なる、シリアスな作風ですね。


MICHI:そうなんです。実はレコーディング前に『クロムクロ』のシナリオを先に読ませていただいて、アニメの世界観を把握してから臨んだんです。でも歌詞はそれよりも前にいただいていたんですけど、最初は「えっ、意味がわからない。『クロムクロ』ってどんなストーリーなんだろう? しかもなんでロボットアニメなのに、この曲は愛についてこんなにリアルに描かれているんだろう?」という印象で。それからシナリオを読んだので「ロボットアニメなのに、なんて面白いヒューマンストーリーなんだ!」と感動したんですよ。私、今まであまりロボットアニメを観てこなかったんですけど、まさかこういうストーリーだと思ってなかったのでビックリしました。さすがP.A.WORKSさん!


ーー(笑)。


MICHI:あと、この歌詞はヒロインの(白羽)由希奈ちゃんの心情を描いたものなんだってことを、シナリオを読んだことで理解できて。由希奈ちゃんは親の愛情不足の中で育ったからこそ、愛についてこんなにもリアルに描かれているんだと気づいたんです。


ーーなるほど。それを知ってから聴くと、また歌詞の印象が変わりそうです。実際にアニメも観ましたけど、現代を舞台にした物語なんですよね。


MICHI:そうです。2016年の物語なんですけど、ちょっと近未来感がありますよね。あと、すごく和の要素が強くて。それこそ私の衣装もなんですけど。


ーーアーティスト写真に登場する、和洋折衷の衣装のことですね。


MICHI:私、ずっと和風の衣装を着たいなと思ってたんですけど、まさかこのタイミングで着られるとは思ってなくて。古風な和の要素自体が特に好きで、京都にも憧れがあるし、勉強はそんなに好きではなかったんですけど(笑)、日本の歴史にはすごく興味があって。この衣装は『クロムクロ』の世界観に寄せて作られていて、赤と黒という色使いもまさにそうなんです。そこに私のロゴに登場する「∞(インフィニティ)」と羽の要素が散りばめられているし、付けている指輪の色はクロムクロの目の色だし、すごく凝っていて。デザインの時点から意見を出し合いながら作ったというのもあって、すごく気に入ってます。


・「ネガティブな感情を表現するのはすごく難しかった」


ーー楽曲自体も4つ打ちを基調としたカッコいいサウンドに仕上がりましたね。


MICHI:前回の「Checkmate!?」とはガラリと変わって、シリアスな雰囲気になりましたね。毎回新曲を歌う際には「今回が一番難しい」と思いながらレコーディングしてきたんですけど、この「リアリ・スティック」ほど難しい曲はなかったと思います。「Cry for the Truth」も「Checkmate!?」も訴えかけるようにありのままの私を出して歌えばよかったところがあったんですけど、今回みたいにシリアスなものになると……私、普段はあまりそういう面を表に出さないんですよ。常にポジティブで笑顔なので、あまり人に見せたことがないネガティブな感情を表現するのはすごく難しかったです。特に今回は由希奈ちゃんの心情を演じながら、その演じている姿を見てもらう感じなのかなとも思っていて。そういう表現方法は今までしたことがなかったので本当に大変でしたし、だからこそすごく気に入ってます。


ーーストリングスが入った瞬間に世界が開けるというか、あのアレンジは本当に気持ちいいですよね。


MICHI:そうなんです。私もあのアレンジが大好きで。実はサビに入る前に私の声を使ったエフェクトが入っているんですけど、そこで何を言ってるのかも注目ポイントですね。それにしても本当に近未来感あふれる曲に仕上がっていて、これぞロボットアニメって感じがしますよね。


ーーその「これぞロボットアニメって感じ」というのが、J-POPにある身近さとはまた違うものなんでしょうね。


MICHI:そうですね。特にこの曲はバックトラックだけ聴くと、本当に非現実的で近未来感が強いというか。だけど歌詞はすごくリアルに描かれていて、そのギャップがまたいいんですよ。


ーー僕は最初にこの「リアリ・スティック」を聴いたときに、MICHIさんが言う近未来感と同時に、どこか懐かしさも感じて。90年代のアニソンはこういうサウンドや曲調が王道だったなと思ったし、同時にやっぱりアニソンにはこういう王道感を常に持っていてほしいなとも思ったんです。そういう意味では理想のアニソンじゃないかなと。


MICHI:あー、よかった! ありがとうございます! 言われて気づきましたけど、確かにどこか懐かしさもありますよね。新しいんだけど、どこか親しみやすさがあるのはそういうことなのかな。さすがElements Gardenさんですね。


・「曲調はシリアスなんですけど、MV撮影では終始笑ってました」


ーー「リアリ・スティック」のミュージックビデオも、また現実離れした作品になりましたね。


MICHI:そうなんです。実はMV、デビューから3作連続で埼玉で撮影しまして(笑)。意図的ではないんですけど、「ここ、いいよね?」って場所が全部埼玉だったらしくて。今回は春日部にある首都圏外郭放水路で撮影したんですけど、生で見るとすごく神秘的でした。3月中旬に撮ったんですけど、地上は気温が10℃以上あったのに地下に入ると6℃ぐらいしかなくて。しかも水を張ってたところが凍ってるぐらいの寒さのなかこの衣装で歌ったら、なかなか体が言うことを聞かなくて大変でした。


ーーあの柱が独特な雰囲気を醸し出していて、ちょっとラビリンスで歌ってるみたいですよね。


MICHI:あの感じが1kmぐらい続いているみたいなんですけど、奥は真っ暗で見えないから、そこがまたミステリアスというか。しかも放水路なので、当日だけでなく数日前でも雨が降ったら撮影中止になっていたので、当日も見事晴れて運が良かったです。私、晴れ女なんですよね(笑)。アーティスト写真の撮影日も直前まで雨が降ってたんですけど、撮影を始めた途端に雨が止んで太陽まで出てきて。これには私もビックリしました。


ーー持ってますね、それは。


MICHI:なのでこれから野外で何かするときは、MICHIが行けば晴れるぞと(笑)。


ーー(笑)。それにしても、本当に楽曲の世界観とMVの世界観が見事に合致した、本当に素晴らしい仕上がりですね。


MICHI:私も完成したMVを観てビックリしましたもん、「こんなにピッタリ合うのか!」って。あと、MVには白壁で歌うシーンもありますけど、あれも楽しかったです。


ーー薄暗い放水路との対比がいいですよね。


MICHI:しかも箱の中に閉じ込められてるような感じで、その中で真っ赤な衣装を着た私が動くという。こういうことをやってみたいなと思っていた内容だったので、全部楽しくて終始笑ってました。曲調はシリアスなんですけどね(笑)。


・「アニソンは音数や音色で変化を付けていくところが独特」


ーーそしてカップリング曲「真夏のオーケストラ」は今までになかったタイプの、開放感に満ちあふれた楽曲です。


MICHI:自分で言うのも何ですが、めっちゃMICHIって感じの曲じゃないですか、これ。最初に聴いたとき、「これ、私の曲だ!」って思いましたもん。沖縄の海で歌いたいですね。それこそ大きな野外フェスとかで、みんなでタオルを振り回したりして楽しみたい1曲です。


ーーではレコーディングも楽しみながら歌えたんじゃないですか?


MICHI:実はこの曲は終始キーが高くて。なので嬉しい反面「歌えるかな……?」って不安もあったんです。あと「こんなに爽やかな歌、私が歌えるのかな? 私の声に合ってるのかな?」とも思っちゃって。でも気持ちだけは爽やかに臨んだので(笑)、最終的には楽しみながら歌えました。


ーーこの曲もアレンジがすごく凝ってますよね。2コーラス目のドラマチックな展開がすごく気持ち良いんですよ。


MICHI:そうなんです! 私もあそこがすごく好きで、そこからまた新たなストーリが始まる感じがしますよね。Elements Gardenさんにはいつも素敵な楽曲を作っていただいていて、本当に私は恵まれているなと思います。


ーー今回の2曲もそうですけど、Elements Gardenさんの楽曲って1曲の中での起承転結がすごくはっきり描かれていて、音を聴いただけでも曲のストーリーが何となく伝わってくるんですよね。


MICHI:確かにそうなんですよね。そこがアニソンにいいところで、例えば洋楽だとわりと淡々と進んで終わっていく曲も多いじゃないですか。


ーーワンコードで進行する曲も多々ありますし。


MICHI:はい。そういう曲調も好きだったりするんですけど、対してアニソンはすごくカラフルで。音数や音色で変化を付けていくところが独特だと思うんです。そのぶん歌も難しかったりするんですけど、だからこそ歌い甲斐があるし楽しいんですよね。


ーー実際、「リアリ・スティック」と「真夏のオーケストラ」の振り幅もすごく大きいですし、こういったいろんなタイプの曲に挑戦できるのも、アニソンシンガーの魅力なんでしょうね。


MICHI:はい! 国内だけでなく海外でも歌う機会も増えてくるので、「リアリ・スティック」で私の歌に引き込みつつ、「真夏のオーケストラ」ではみんなでタオルを振り回して気持ちをひとつにできたらなと思います。皆さんを「MICHIワールド」にいざないたいです!


・「ラジオを通してありのままの私を伝えられるのは嬉しい」


ーーそういえば3月30日に20歳の誕生日を迎えたんですよね。


MICHI:誕生日当日はNHKホールで『ANISON HISTORY JAPAN!!』というイベントに出演させてもらっていたんですけど、いろんな共演者の方に「おめでとう!」とお祝いしてもらえて。しかもお客さんからもお祝いしてもらえたのですごく嬉しかったです。


ーーいよいよ大人の仲間入りですね。


MICHI:ですね。もともと19歳で親元は離れてるんですけど、20歳になったら未成年ではできなかったことがいろいろ増えるぶん、その責任はすべて自分にのしかかってくるわけですから。そこは大きく違いますよね。


ーー20歳になって初めて経験することも増えるのでは?


MICHI:でも私、デビューしてから常に初めてのことばかりなんです。だからこの1年はいろんな新しいことへの挑戦の連続なので、毎日が楽しくて。


ーーお仕事でも、この4月からFM-FUJIで初のレギュラー番組『Music Spice!』が始まりましたし。


MICHI:まさかこんなにひとり喋りが苦手な私にラジオができるのか、皆さんすごく不安に思ってることでしょうけど(笑)。でも、わりと喋れてる気がするんですよ。番組にリスナーの皆さんからお便りがたくさん届くので、それに答えていくのがすごく楽しみなんです。Twitterの文字だけだと伝えにくい部分もあるので、番組を通して私のいろんな面を知ってもらえたり、ありのままの私を伝えられるのはすごく嬉しいです。でも「あ、この子バカなんだな」っていうのはバレますけど(笑)。


ーー(笑)。でもここでの活躍が話題になって、今後テレビへと波及していくかもしれませんし。


MICHI:まさか(笑)。でも私、『世界の果てまでイッテQ!』とか大好きで。できることなら(『世界の果てまでイッテQ!』に登場する)温泉同好会に入りたいんです! でも喋りは下手なんですけど(笑)。


ーーアーティスト写真とのギャップがすごいことになってますが(笑)、そこがMICHIさんの魅力なんだと思いますよ。そんなアニソンシンガーが誕生したら画期的だし、大きな話題になるでしょうね。


MICHI:その第一人者になれるよう頑張ります!(笑)


(西廣智一)