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若者の離職率が下がらないのは「コミュニケーション不足」のせい? もっと他に原因がある気がするけど…

2016年05月17日 17:40  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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新卒で就職した人が3年以内に離職する割合は32.3%。15年前に比べると4ポイントも減ってはいるが、人手不足を背景に採用コストをムダにしたくない企業は、若者の離職率を下げることに熱心になっている。

5月17日放送の「モーニングチャージ」(テレビ東京)では、若手社員の定着を図ろうとする企業2社の取り組みを紹介。経済評論家の門倉貴史氏は、若者の離職の原因についてこう分析していた。

「若い方の離職率が増えているのは、コミュニケーション不足が一番大きな要因。どうやって社内のコミュニケーションを円滑化するかが重要です」

入社3年目まで先輩と「交換日記」をする明治安田生命

この言葉を踏まえるように、番組は明治安田生命が約150人の新入社員が先輩社員と「交換日記」をする様子を紹介した。2年前から始まった「OJDノート」と呼ばれる制度で、入社3年目までの社員は先輩と週1回・1年間、この日記を交換する。

交換日記というと私生活を書くように思われがちだが、業務日誌のようなものだ。「業務内容」や「習得できたこと・できなかったこと、疑問に感じたこと」「次週にむけて」などを事細かに記載することが求められる。

入社2年目の佐藤くんが「各種ソフトの習得」や「マナーに関して得たこと」「論理的思考力に欠けている実感」などを記載すると、入社23年目の上原さんは温かく見守るようなアドバイスを書き送る。一見面倒にも見える手書きのノートだが、これにより業務内容の確認はもちろん、外からは見えない若手社員の気持ちの変化も分かるという。

人見知りする性格という佐藤くんは「おかげで先輩社員になんでも連絡、報告、相談できるようになった」と歓迎。先輩の上原さんも、メリットを次のように語った。

「何ができて、何ができないか客観的に振り返ることができたのが、彼にも私にもよかったことですね」

指導する世代の成長も実は「隠れた目的」に

冒頭の門倉氏のコメントには、番組を見た視聴者から「何でもかんでも若者のせいにすんじゃないよー!」と反発するツイートも上がっていたが、企業側はその辺も考えているようだ。同社人事の永島さんは、この制度のもう1つの狙いをこう明かす。

「若手の成長とともに、指導する側の成長も実は隠れた目的になっています」

コミュニケーション不足は若者のせいばかりではなく、指導する側の先輩や上司にも責任があることは認識されているのだ。

しかし若者が上の世代とのコミュニケーションを取りたがらないのは、「ゆとり世代」に限らず当たり前のこと。無理に交流しようとしても、かえってストレスが溜まるだろう。スタジオでは社員旅行や運動会を復活させる動きもあるという話題になったが、若手の林克征アナは正直な気持ちを漏らしていた。

「若い人はどうですか? それで休日に全部来なさいなると足が(重くなる)…」

若者たちの頑張りへのタダ乗りを改めるべきでは

このほか番組では、ソフトウェアを開発するサイボウズが、社員の都合に合わせた多様な働き方の改革を行い、離職率28%から4%に下げた例も紹介した。こちらは働き方を根本的に見直すことで、業績アップも実現したという。

この取り組みに比べると「交換日記」は単に人間関係で縛りつけ、辞めさせにくくする小手先の対策のような印象を受けてしまう。そもそも若手社員が離職する理由には、コミュニケーション以外の問題を多分に含んでいる。年功序列で若者たちを抑え込み、上の世代が彼らの頑張りにタダ乗りするような給与体系や文化を改めない限り、若い世代の離職率が下がることはない。(ライター:okei)

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