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佐藤琢磨、常設ロードでのグリップ不足に苦しむ。解決の糸口はまだ

2016年05月16日 22:11  AUTOSPORT web

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佐藤琢磨(AJフォイト・レーシング)
インディアナポリス・モーター・スピードウェイのロードコースが舞台となったグランプリ・オブ・インディアナポリス。第4戦アラバマから2レース連続の常設ロードコースとなるが、アラバマがアップ&ダウンの激しいコースなのに対し、インディのコースは見事なまでにフラット。そして、アラバマ以上に高速だ。エアロバトルは今年もシボレー優位のまま進んできたが、アラバマではホンダ陣営、特にレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングがチーム・ペンスキーやチップ・ガナッシ・レーシング・チームズといった強豪との差を縮めた印象があった。

 佐藤琢磨が所属するAJフォイト・レーシングは、このレースに3カー体制で臨んだ。カナダ人ベテランドライバーのアレックス・タグリアーニが、今年はグランプリ・オブ・インディアナポリスとインディー500の両方にエントリーする、いわゆる”インディ・ダブル”をアルフェのスポンサーシップで戦うことになったからだ。

 今シーズンの予選自己ベストはロングビーチでの8位、決勝ベストは同じロングビーチの5位と、ランキング9位で第5戦を迎えた琢磨は、シリーズで最もスムーズな路面を持つ高速ロードコースにおいては幸先の良いスタートを切ることができなかった。木曜日は2回のプラクティスが行われたが、最初のセッションが19番手で、2回目は21番手。いずれのセッションでもトップとの間には0.8秒強の差があった。

 翌金曜日、琢磨はプラクティス3で5番手につける好タイムをマーク、セッティングの方向修正がうまくいったかに見えた。ところが、予選はQ1のグループ2でコンペティティブなタイムを出せず、13人中の11番手という惨敗を喫した。ソフトコンパウンドのレッドタイヤでマシンのバランスが悪くなっていたのだ。

 琢磨のチームメイトであるジャック・ホークスワースは、Q1のグループ1をトップで通過。勢いに乗ってQ3に今季初めて進み、予選6位を獲得。さらに、グラハム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)とジョセフ・ニューガーデン(エド・カーペンター・レーシング)の重量規定違反のため、2列目アウト側という好グリッドを確保した。それとは対照的に、琢磨は25台中の20番手と、後方グリッドから82周のレースに臨むこととなった。

「今朝のプラクティス3で、昨日までよりマシンが大きく進歩していると感じていました。チームメイトのジャックとは、その時点でセッティングが違う方向性に進んでいました。グループ1で先に走った彼は、ブラックでは酷かったマシンがレッドでは良かった。その情報も得て僕らはグループ2を走れたのですが、予選のマシンはブラックではそれなりに良かったものの、レッドを装着した走りではバランスが悪く、スピードを確保できませんでした。もう一度、3台全部のデータを検討し直して、レースでスピードを確保するための手がかりを見つけ出さないと」と琢磨は険しい表情で語った。

 決勝日は、予報通りの寒い1日となった。プラクティス・ファイナルの気温は摂氏9度。午後になってもそれは変わらず、コンスタントに吹きつける風によって体感温度は更に低くなっていた。木曜、金曜の両日とも20度前後まで上がっていたことを考えれば、決勝日のコンディションだけが大きく異なり、当然マシンのセッティングも大幅な調整が求められることとなった。プラクティス・ファイナルは30分間。ここではホンダ勢が1分9秒台半ばのラップタイムでトップ3を占めたが、琢磨は1分10秒3がベストで、順位は16番手。セッティングの決まり切らないフォイト陣営にとって、大幅なコンディション変動は助けにならず、状況を更に複雑かつ難解なものにしていた。

 ハードコンパウンドのブラックタイヤでレースに臨んだ琢磨は、プラクティス・ファイナルから更にセッティング変更を加えたマシンを走らせたが、スピードやハンドリングの劇的向上は見られず、レッドタイヤ装着勢にオーバーテイクを許す苦しい戦いとなっていた。一縷の望みとしては、1回目のピットストップ以降はゴールまでレッドタイヤを連続投入する作戦にあった。グリップの高まって行く路面でこれまで以上のペースを実現することが期待された。

 しかし、レッドタイヤでも琢磨のラップタイムは向上しなかった。その前に、1回目のピットアウト時に本コースとの合流地点でブレンド・ラインを外れ、ドライブスルーのペナルティも課せられてしまった。
「今日の自分たちにはスピードがなかった。グリップが得られていないから、それをエアロに頼らねばならず、ストレートスピードがライバルたちに比べて遅くなっていた。レッドタイヤでは内圧も違うものを試し、最後のスティントが一番良い走りになっていた」と琢磨はレース後に語った。

 琢磨より後ろの24番グリッドからスタートしたレイホールは、4位フィニッシュを達成した。彼らはコースを選ばず、コンディション変化にも的確に対応し切って高いパフォーマンスを発揮し続けている。

 セント・ピータースバーグでは6位、ロングビーチではホンダ勢ベストの5位フィニッシュを達成したAJフォイト・レーシングと琢磨は、ストリートこそ高い戦闘力を誇っているが、常設ロードコースでのパフォーマンスは前年までと変わらず、低い。解決の糸口を見出すべく、彼らはレース中にも新たなトライを行ったが、今回も大きな進歩を手にするところまでは行かなかった。

次の常設ロードコース・イベントは、6月下旬のロード・アメリカ。それまでにエンジニアリング・チームは何か解決策を見出さなくてはならない。