2016年05月16日 11:21 弁護士ドットコム
家具大手のニトリホールディングスがこのほど、この春に新しくできた「企業版ふるさと納税」という制度を使って、北海道夕張市に総額5億円を寄付する方針を示した。
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北海道はニトリの創業地。夕張市は財政再生団体となっており、この10年で人口が3割減少するなど苦境が続いている。ニトリによる納税は、2016~19年度にかけておこなわれる見込みで、厳しい財政状況の夕張市にとっては大きな支援となる。
個人のふるさと納税は、納税先の自治体から特産品などが送られてくるが、新しい「企業版ふるさと納税」は、企業側にどんなメリットがあるのだろうか。野口五丈税理士に聞いた。
「これまでも企業はふるさと納税を行えましたが、メリットが小さかったため、それほど普及していませんでした。しかし、2016年度からの新たな『企業版ふるさと納税』は従来に比べ2倍の節税効果があり、利用する会社が増えています」
2倍とはどういうことなのか。
「これまでの寄付金税制では、全額を損金に算入することができて、約30%が戻ってきました。今回の企業版ふるさと納税では、さらに寄付金額の20%を法人住民税から、寄付金額の10%を法人事業税から税額控除することができるようになりました。
つまり、(1)損金の算入で、課税される利益が減る、(2)寄付金の30%は納税したことになるという2つの節税メリットが得られることになります。
このように、企業版ふるさと納税では、額面よりも企業の実質負担額が小さくなります。地方自治体を支援する企業が増えるでしょう。
なお、寄付した企業に入札などで便宜を図ることは禁止されていますが、『寄付をした企業の社員に公的施設の優待券を認める』等のお礼をすることが認められています」
では、注意すべき点はないのだろうか。
「企業版ふるさと納税は、経済的に豊かな自治体への寄付は対象外です。また、企業版では特典、特産品等が受け取れない場合があるので、その点で個人のふるさと納税に比べるとメリットが小さいです。
もし特典や特産品などを受け取ることができて、実際に受け取った場合、税金の計算上、『受贈益』として扱われます。あまり価値の高い特典、特産品等を受け取った場合は、注意する必要があるでしょう。
寄付することで、地域貢献や企業のイメージアップも期待されますので、積極的に活用する企業が増えていくと良いですね」
野口税理士はこのように話していた。
【取材協力税理士】
野口 五丈(のぐち・いつたけ)税理士
ITベンチャー企業の支援に特化した会計事務所を主宰。節税だけでなく、クラウド会計やベンチャーキャピタルからの資金調達、補助金申請支援(創業補助金、ものづくり補助金)を強みとする。支援実績多数。
事務所名:野口五丈公認会計士事務所
事務所URL: http://itsutake.com/
(弁護士ドットコムニュース)