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w-inds.の新作は“時代性”を超えたサウンドに ニュージャックスウィング志向でチャート健闘

2016年05月15日 15:51  リアルサウンド

リアルサウンド

w-inds.『Boom Word Up』(初回盤A)

 2016年5月16日付の週間CDシングルランキングは、集計期間がゴールデンウィーク中だったこともあるせいか、4月リリースの欅坂46やNMB48、さらには3月リリースの乃木坂46もベスト10内にいる、AKB48~乃木坂46グループ色の強いチャートになりました。


【参考:2016年5月2日~2016年5月8日のCDシングル週間ランキング、2016年5月16日付・ORICON STYLE】(http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/2016-05-16/)


(関連:w-inds.が語る、J-POPの新標準 「“失敗する”というイメージがまったく沸かなかった」


 今回ベスト10の全曲を聴いた中で新鮮だったのは、3位のw-inds.「Boom Word Up」でした。これほどブラックミュージックの要素の濃いダンス・ミュージックを歌っているのか、と。w-inds.の3人にダンサー4人を加えて踊り、最後には多数のダンサーが現れるMVもその印象を強いものにしています。


 『Boom Word Up』は、今年でデビュー15周年となるw-inds.がリリースしたシングル。そして、ニュージャックスウィングを踏襲したサウンドなのです。ニュージャックスウィングといえば、テディー・ライリーなどが1980年代後半に世に送りだして流行したスタイルですが、当のw-inds.のメンバーは1984年~1985年生まれ。1980年代や1990年代の音楽のリバイバルもあるとはいえ、メンバーが生まれた時代のサウンドを選ぶw-inds.のミュージシャンとしての志向性の面白さには興味をひかれました。


 資料を読むと、橘慶太が「海外のトラックメイカーでもあまりニュージャックスウィングのトラックを作っている人がいなくて」と発言しているのですが、それでもニュージャックスウィングのトラックを探したとか。「Boom Word Up」の作曲にクレジットされているのは、Sam GrayとJoe Lawrence。Sam Grayは、2015年のEXILEのシングル「Ki・mi・ni・mu・chu」の作曲に名を連ねているひとりです。「Ki・mi・ni・mu・chu」は、1960年代後半のモータウンを連想させるような楽曲でした。


 w-inds.の3人の意向を反映して生まれたという「Boom Word Up」は、ニュージャックスウィングならではのグルーヴを残しながら、サウンド・プロダクションは2016年の音に書き換えているトラックです。何も知らなくても楽しめますが、ニュージャックスウィングのリアルタイム体験世代なら思わずw-inds.に興味を持つ楽曲でしょう。2013年にw-inds.に「We'll Be Alright」を提供しているAKIRAがボーカル・プロデュースを担当し、ソリッドな勢いがありつつも色気のあるボーカルにしています。


 さらに、初回盤Aのカップリング「Smile Smile Smile」もまたニュージャックスウィング路線で、ラップパートも挿入される構成。ニュージャックスウィングのリアルタイム体験世代には初回盤Aがおすすめです。


 初回盤Bのカップリングは、初期w-inds.に楽曲を提供していた葉山拓亮が作詞作曲編曲した「ヒマワリ」。w-inds.のボーカルのしなやかさを引き立たせるミディアム・ナンバーです。


 そして、通常盤のカップリング「FUNTIME」にも驚きました。大雑把なCDショップ店員なら、あっさりシティ・ポップのコーナーに置いてしまいそうなアーバンなソウル・ナンバーです。表題曲である「Boom Word Up」はもちろん、カップリング全曲を聴いても、「Boom Word Up」はかなりブラックミュージック色の濃いシングルです。


 音楽を聴くスタイルが、YouTubeの登場以降は時代性を超えてランダムにアクセスするスタイルに変わったことはすでに多くの人が指摘しています。そして、Apple Musicのようなサブスクリプションサービスはそれに拍車をかけていくことでしょう。どこのサブスクリプションサービスにも満足できず、CDやアナログレコードを買い続けている保守的な私にはいささか寂しい変化です。


 w-inds.がどういう経緯でニュージャックスウィングを志向したのかは、資料を見ても把握できません。しかし、仮にw-inds.「Boom Word Up」のような作品が若い層から生み出されるのなら、前述したような時代の変化も悪くないかもしれません。そう感じさせられたのがw-inds.「Boom Word Up」でした。(宗像明将)