2016年05月15日 09:51 弁護士ドットコム
「ブラック企業からの退職時に2年間分の残業代を請求したい」。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、ある中小企業を退職しようとしている人からの相談が寄せられました。
入社してから5年間、ほぼ週6日、1日14時間以上働かされていたのに、残業代をもらうどころか、社長からパワハラまで受けていたそうです。
退職を機に残業代を請求しようとした場合、どのような方法があるのでしょうか。退職後に請求しても問題ないのでしょうか。田村優介弁護士に聞きました。
●退職後であっても請求することは可能
もちろん、退職後であっても残業代を請求することは可能です。むしろ、多くの方が退職後に請求しています。
残業代は2年で消滅時効にかかってしまいます。この時効は毎月の給料日を基準に計算しますので、毎月毎月、時効にかかって1か月分の残業代が消えてしまうといえます。
会社に内容証明を送るなどして支払請求の意思表示(「催告」といいます)をすれば、半年以内に裁判を起こすことによって、時効を中断することも可能ですので、できるだけ早めに専門家にご相談されることをおすすめします。
弁護士に依頼した場合の残業代請求の流れは、
(1)まず会社に対して内容証明郵便によって残業代を直ちに支払うよう請求します。会社と代理人弁護士で協議をし、任意での支払がまとまればここで解決です。
(2)協議がまとまらない場合には、労働審判や正式裁判など、裁判所を活用した請求を行うことになります。
弁護士を立てずにご自身で残業代を請求する場合には、労働基準監督署(労基署)に相談し、会社に対して是正指導をしてもらう方法も考えられます。
退職してしまった後ですと、タイムカードなどの残業時間がわかるものが入手できない、ということもありがちです。在職中に写真撮影するなどして証拠を確保しておくことをおすすめします。
【取材協力弁護士】
田村 優介(たむら・ゆうすけ)弁護士
ブラック企業被害対策弁護団副事務局長、日本労働弁護団。残業代請求、不当解雇、パワハラなど、労働問題を多く手がける。共著「働く人のためのブラック企業被害対策Q&A」など。
事務所名:城北法律事務所
事務所URL:http://www.jyohoku-law.com/