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メカ分析:パワーがあるからできる、“強者”メルセデスのディテール

2016年05月15日 01:21  AUTOSPORT web

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写真
F1第5戦スペインGPに持ち込まれたメルセデスAMG W07ハイブリッドのフロントウイングを観察してみると、仕様が2種類あることに気づく。一方の翼端板はシンプルな形状をしており、もう一方は後部が凝った処理になっている。W07のフロントウイングは機能がわかりやすく分かれており、塗装してあるエリアは、おもにダウンフォースの獲得用。無塗装の翼端板側はフロントタイヤの接地面が起点となって発生する乱流制御に用いている。



 翼端板がシンプルな仕様はオフシーズンのテストから見られるもので、要するに旧バージョン。多翼化した翼端板を持つ仕様が新バージョンだろう。



 それより気になるのは、フロントホイール内側のパネルに施された処理だ。トップ写真の丸囲み内に、ひっかき傷のような処理が確認できる。メルセデスはギザギザ状の細かな処理を多用する傾向にあり、その最たる例がサイドポンツーン開口部前にあるバージボードだ。リヤウイングに目を転じると、メインプレーンとフラップの間にあるスロットギャップ部もギザギザ状の処理が施してある。



 フロントウイングの裏にあるストレーキも同様の機能を持つが、ギザギザはボーテックスジェネレーターとして働くと考えていいだろう。空気の流れにエネルギーを与え、向かわせたい方向に空気を流そうとしているわけだ。その結果、ダウンフォースを効率良く発生させることにつながる。

 その引き替えとしてドラッグ(空気抵抗)は増えるが、ドラッグの増加によるロス(損失)よりも、空力性能向上したことによって得られるパフォーマンスのゲインの方が大きく、ギザギザの多用につながっているのだろう。パワーユニットの性能面で圧倒的に優位に立つメルセデスだからこそ乱発できるワザで、他が形だけ真似してもただ単にドラッグが増えて遅くなるだけ、に違いない。

 見方を変えれば、メルセデスはありあまるパワーを有効にダウンフォースに転換しているので、タイヤをしっかり押さえつけることができ、硬い側のタイヤ、最適温度レンジの高いタイヤでも有効に発熱させることができて、タイヤ戦略面でも優位に立つことができるというわけだ。