はっきりと不快な症状が出ているにもかかわらず、病院に行ってもなかなか病名が診断されず、まわりの人たちの理解も得られぬ病気になってしまったら……。きっと不安に押し潰されてしまいそうになることだろう。
5月2日の「かんさい情報ネット ten.」(読売テレビ)で放送されたのは、まさにそんな症状で苦しむ高橋さんの日常だ。彼女は「化学物質過敏症」で、農薬・ハウスダストだけではなく整髪料や煙草、洗剤、食品添加物など、日常におけるあらゆる化学物質に体が反応し、呼吸困難・めまい・皮膚の痛みなどに悩んでいるという。(文:みゆくらけん)
突然発症。「心因性」と片付けられることも多い
もともとは化粧や香水も楽しんでいた高橋さんだが、7年前にこの病気と診断されてからは、化粧や香水はおろか、化学繊維の服さえ着られない。シャンプーや洗剤など生活用品はすべて無添加で、食品添加物の入ったものも口にできない。
他人の整髪料や柔軟剤などの匂いでめまいを起こし、ろれつが回らなくなるほどの重症で、普段から活性炭入りマスクが欠かせない。農薬散布日には未明から山に「朝逃げ」し、山に向かう道中も田んぼや畑を通るため、到着したらまずは髪の毛を洗わなくてはいけない。
「私の場合、皮膚が痛くなるから(農薬が)『今、来てるな』ってわかる。体中がヒリヒリするんです」
歯科医院での治療も大変だ。他人の化粧品や整髪料の匂いに反応するため、歯科衛生士や助手が帰ってから治療を始める。治療の椅子もアルミ箔で覆ってからでないと座れない。こうなるともう、普通の日常生活はできない。
高橋さんの毎日は「不便」の連続だが、化学物質を現代の暮らしから完全に排除するのは難しい。それは発症する人が少なく、高橋さんほど重症でない限り化学物質によるものだと認識されにくいためだ。この病気を専門とする医師も少なく、「心因性のもの」として片付けられることも少なくない。
「高校生の彼氏が教室にも入れなくなった」と書き込みも
しかしこの病気の患者は年々増加傾向にあり、ある日突然、誰にでも起こり得るものなのだという。数々の病院を回り、やっと病名がついたという他の患者たちはこう話す。
「空気のいいところに引っ越し、ケミカルレスな住宅も専門の人に建ててもらった」
「食事や生活、考え方の改善をしたら、そこから劇的に良くなっていった」
ネットにも「化学物質過敏症で日常生活が困難で会社を辞めた」「母親が罹っているが100%病気を信用できず、対応に困っている」という声もあった。若い男性の患者もいるらしく、「高校生の彼氏がこの病気で電車に乗れなくなり、ついには教室にも入れなくなった」という書き込む女子高生もいた。
高橋さんの願いは「この病気を理解してほしい」ということ。「添加物を取り過ぎたり、そういう環境の中にいると(発症)リスクが高まっていくということを、身にもって体験した。どうか多くの人に、この病気を知っていただきたい」と訴えていた。
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