「リッツ」や「オレオ」などの人気お菓子が、8月末をもって製造中止になるというニュースが大きな話題になったのは今年2月。山崎製パンの子会社ヤマザキナビスコと、米モンデリーズ・インターナショナルとのライセンス契約が切れるためだ。
9月からはモンデリーズの日本法人が販売を引き継ぐが、問題は生産が海外に移されること。「オレオ」は中国、「リッツ」はインドネシア、「プレミアム」はイタリアで製造。安全性を不安視する消費者からは「もう買わない」という声もあがっている。
「味は中国がウマい」という証言もあるが
5月11日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)は、モンデリーズの商品発表会を取材。新しくなったオレオは「今一番好まれる味」に改良したというが、見た目はほぼ変わらず、新パッケージも従来のものと並べないと違いは分からない。
番組が味見をしたところ、オレオのココアの苦みが少なくなったという。「そのまま変えないで!」と言いたくなるが、中国在住時にオレオを食べていたというライターの沢井メグ氏は、ロケットニュース24の記事で「味は完全にウマい」「バリエーションがハンパない」と意外にも賛辞を惜しまない。
日本の白黒オレオに対し、中国ではチョコ、ストロベリー、ピーナッツやスティックタイプ、はたまたレインボーとカラフルなものまで存在。日本でも9月からは、チョコレートクリームとストロベリークリームのオレオが発売される。
ヤマザキナビスコは、ヤマザキグループの利益の1割以上を稼ぐ優良子会社。ライセンスが使えなくなるのは痛手だ。9月から社名を「ヤマザキビスケット」に変更し、モンデリーズ製品に対抗する新製品を開発する予定だという。
しかし、契約の問題でヤマザキが競合商品を発売できるのは17年12月1日以降。ライセンス契約に詳しい東京理科大学の草間文彦教授は「ライセンスで取ったブランドは、メーカーにとって売れば売るほどリスクになる。(あらかじめ)第2、第3のブランドを作っておくことが必要」と警鐘を鳴らした。
ヤマザキの「繊細な味わいのお菓子」にも期待
欧米のブランドは、日本でのライセンスビジネスが成功後、契約を解除して自社で展開するケースが多い。日本人間での義理の世界は通用しない。したがってライセンスで得たブランドを、事業の柱にするのは注意が必要だと草間教授はいう。リスクを回避できる唯一のタイミングは「契約書に調印するとき」だ。
「目標の売上高を達成したらライセンス契約を継続しなければならないとか、ハードネゴ(強い交渉)をしないといけない。それが日本のメーカーに欠けているところかもしれない」
長きに渡る協力関係は、なぜ決別に至ったのか。山崎製パンの飯島延浩社長は2月の会見で「下請けとして製造だけやってくれ」とモンデリーズから提案があったことを明かした。これは、共にブランドイメージを作ってきた自負のあるヤマザキ側には、受け入れがたいものだったらしい。
モンデリーズとしては内需が縮小する日本より、東南アジアの大きな市場全体が重要だったのだろう。ヤマザキ側の事情は分からないが、ひとつのブランドイメージに頼り切った守りの姿勢だったのではと感じてしまう。
その一方で、ヤマザキが海外向けの大味なものではなく、日本人が大好きな繊細な味わいのお菓子づくりにこだわったのだとすれば、それはそれで歓迎だ。ヤマザキビスケットがどんな新商品を出してくるのか、心から期待したいものだ。(ライター:okei)
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