今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、22人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選ぶ。レース結果だけにとらわれず、3日間コース上のプレーを重視して採点する。
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☆ キミ・ライコネン
今シーズン、4番手が定位置になってきている。ここでもFP1~予選すべて4位、Q3でバルテリ・ボッタスに先行された(2位タイムのセバスチャン・ベッテルがペナルティ降格でグリッド3位に)。決めのアタックラップに細かなミスが出て、1周をまとめきれない。それを認める最年長ベテランもレースでは黙々と燃費セーブ、表彰台を確保。メルセデス1-2を脅かすにはマシン戦闘力がもうひとつだったソチ。チームも彼も不完全燃焼が続く。
☆☆ バルテリ・ボッタス
コーナーのクリッピングポイント通過スピードが目に見えて速い。3年連続予選3位、ここのリズムをつかんでいる。16周目まで2位をキープするもスーパーソフト劣化が進みピットへ、FW38に潜む弱点だ。後半37周もロングスティントを強いられ、慎重にカバーし4位入賞(フェリペ・マッサは28周しかもたなかった)。
☆☆ カルロス・サインツJr.
ストップ&ゴーに弱いトロロッソ、加減速時にダイナミック・ダウンフォース中心が変動しすぎるのか。それをあやすかのようにFP2のロングランで好タイムを刻んでいた。スタート成功もクビアト事故のデブリを拾い、そこからレースが狂う。11周目に早くもタイヤ交換、さらにジョリオン・パーマーとの接触で厳しいペナルティ、それでも41周超ロングスティント遂行。地味でも堅実な12位。
☆☆ マックス・フェルスタッペン
13戦連続完走でストップ。信頼性ある昨年型フェラーリのPUトラブルはちょっと気がかり。それまで6位をしっかり堅持する危なげないレース・メイキングは大人っぽい。5日「スペインGPからレッドブル移籍」緊急発表、23レースで昇格の18歳レース人生ますます加速中。
☆☆☆ ジェンソン・バトン
アンダーステアからオーバーステアに過敏に変化、そのリバースステアに対応、予選まで全セッションで初めてアロンソを上回る。混乱1コーナーが明暗の分かれ道、アロンソに遅れた10位もポテンシャルとしては7位の可能性充分。5月攻勢に期待。
☆☆☆ ロマン・グロージャン
何度も1コーナーで混乱のきっかけをつくった彼だからこそ、いまは混乱をかきわけることができる。昔の経験則から得た一つの能力、15位→8位を得るとそのポジション防衛に全力傾注。数台接近戦レースを終盤しのぎ4戦22ポイント、ハース現在もランク5位。
☆☆☆ セルジオ・ペレス
長い円を描くユニークな3コーナーが速い。ここのベストラインをつかんでいるとしか思えない予選7位に、驚かされた。開幕から不運連続で無得点、上位レースを望めたが1周目にパンク。18位から事実上1回ストップ作戦で追い上げる健闘9位、今年のフォースインディアはどの国に行っても呪われているようだ……。
☆☆☆☆ ケビン・マグヌッセン
2年ぶりのソチ、FP1をセルゲイ・シロトキンに譲ってからコースへ。あちこちで前後が滑りまくるルノーを小刻みな修正操作でコントロール、マクラーレン新人時代からの彼の長所。1コーナーで17位→10位、切り抜けた後、グループバトルを巧みにブロックし復帰4戦目のベストレースを。
☆☆☆☆ フェルナンド・アロンソ
「ブレイク・チャンス」は待つものではなく、自分でつくりあげて、つかみとるもの。スポーティなゲームを魅せたアロンソ100%レース。ホンダ陣営は最優先で燃費コントロールに取り組まねば、それをミーティングの言葉でなくコース上のドライビングで訴えた。
☆☆☆☆ ニコ・ロズベルグ
これほど有利な条件もない。ハミルトンにトラブル、ベッテルも降格。無敵状態だからこそ完全試合(グランドスラム勝利)に挑み、初めて達成。終盤に起きたMGU-H不具合をコクピットで克服、こういう試練がますます彼を強くする。汗をかかずにまた楽勝、と言われてもミハエル・シューマッハによる5回グランドスラム達成のときもそうだった。
☆☆☆☆☆ ルイス・ハミルトン
開幕前に3連覇がいかに難しく、ドライバー自己能力だけでは成就できないものだと本誌に書いた。メルセデスは彼を絶対エースとしてはいない。あくまでロズベルグとはイコール。次々自分にふりかかるトラブルを受けとめ、逆境をはねのけるのは自分なのだ。この2位は、ほとんど死に体から脱して勝ち取った18点。ロズベルグはますます“勝負師”の顔に、ハミルトンはしだいに“哲学者”のような表情に見えてきた。43点ビハインド、ここから16年『17戦シリーズ』がスタートする。