今から38年前の1978年、ルイ・ヴィトンが日本で初めての店舗をオープンしたのは、千代田区の紀尾井町だったことを知っていた? そんなゆかりの深いエリアで、創業した1854年から現在に至るまでの壮大なブランドの歴史を振り返る展覧会が始まっているそう。
2016年4月23日(土)から6月19日(日)まで、紀尾井町に隣接する特設会場では、「空へ、海へ、彼方へ──旅するルイ・ヴィトン展」を開催中。
開催に当たっては、モード史や服飾専門の美術館である「ガリエラ宮パリ市立モード美術館」館長のオリヴィエ・サイヤール氏をキュレーターに迎え、総展示数は約1000点にも上るという見応えたっぷりの内容ながら、入場は無料。
今回のエキシビションは、創業者一族のアーカイブから今日の「ルイ・ヴィトン」を創り上げる人々を通して、ブランドの歩んできた足跡をたどる旅のような構成になっているとか。
時代ごとの展示ではなく、ひとつの切り口に対して、歴史あるものと現代のものが一緒に見られるようになっているのが特徴とか。同じモチーフの変化なども、見て楽しめるそう。
写真のトランクは、1906年に製作されたもので、このときから、キャンバスのモチーフやリボンなど、現在のバッグデザインにも通じる象徴的なディティールがあったそう。そのすべてが現在のクリエイションに生きていると言われるほど、革新的なデザインの逸品。
トランクの後ろに見える文字は1960年代の広告に使われたロゴデザインで、今回の展覧会のタイトル「空へ、海へ、彼方へ――」は、これを引用したもの。この言葉が象徴する「旅」は、ブランドの歴史を読み解くうえで大きなキーワードとなっている。
9つある切り口の1つ「旅の創造」のコーナーでは、船、車、飛行機などさまざまな旅の形とともに、進化する旅行用品を展示する。
例えば、ヨットやクルーズ船による旅が流行するとともに、ルイ・ヴィトンが製作した20世紀初頭の「スティーマー・バッグ」。こちらは折りたたんで収納できるバッグで、そのモダンなサイズ感や利便性はハンドラゲージ(手持ち鞄)業界に衝撃を与えたとか。実際に現在のバッグと並べても、通じるところの多いデザイン。
さらに、飛行機での旅が始まると、改良を重ねて、より軽量で機能的なバッグも登場するように。
このほかにも、絵具や筆が機能的に収納できる絵画用トランクや、本を運ぶ書籍用トランク、帽子や靴の専用トランクなど、個性的なバゲッジが勢揃い。
また、会場のひとつは「インスピレーションの国、日本」というコーナーになっていて、アーティストの村上隆さんや草間彌生さんとのコラボレーションなどが並ぶ。なかには、1883年に渡欧した明治政府の高官・板垣退助が購入したトランクや、現代の人気歌舞伎役者・市川海老蔵さんの化粧用トランクなど、日本にまつわるアイテムも多数展示される。
最後のコーナーでは、実際にアトリエの職人さんが製作する様子も見学できるとか。
さまざまな切り口でブランドの歴史をたどりながら、モードの変遷や日本との関わりなどを知ることができる展覧会。私たちになじみ深いルイ・ヴィトンも、知らなかったルイ・ヴィトンも、ここへ来れば旅してきたすべてのストーリーが見渡せるはず。
トップ画像:(C)LOUIS VUITTON / Jeremie Souteyrat