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鈴木このみが語る、アニソンを歌う醍醐味と自身のルーツ「自分の中の可能性を広げられている」

2016年05月11日 15:01  リアルサウンド

リアルサウンド

鈴木このみ

 鈴木このみが、5月11日に10枚目のニューシングル『Redo』をリリースする。表題曲は、TVアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』(通称リゼロ)のOPテーマ。「死に戻り=タイムリープ」という作品の世界観を踏襲した歌詞で、逆回転サウンドや時計の針の音がちりばめられ、目まぐるしく変化してく曲構成など、これまでの彼女のレパートリーの中でも非常にテンションの高い仕上がりとなっている。また、カップリング曲の「メビウス」の歌詞は、理想と現実の狭間でもがきながら前へと進み続ける内容で、『リゼロ』の主人公スバルにも、鈴木本人にもオーバーラップする。アニソンシンガーとしてデビューして4年、楽しいことや辛いこと、様々な経験した彼女ならではのリアリティが、そこにはあるのだ。


 6月には、「キティラー」を宣言してきた彼女にとって念願である、サンリオピューロランドでのスペシャルライブが控えている鈴木このみ。ここまでの道のりを改めて振り返りながら、今作の制作秘話や、今後の展望についても大いに語ってもらった。(黒田隆憲)


・「アニメの世界観に合わせることを5割、自分の気持ちを出すことを5割」


ーー『リゼロ』のOPテーマであるニューシングル「Redo」は、ライブで無茶苦茶盛り上がりそうな曲ですね。


鈴木:最初頂いたときは、「難しい曲が来たなぁ」というのが率直な感想でした(笑)。でも、すごくかっこいい曲なので、是非とも歌いこなしたいなと。それに、歌詞を読んだら『リゼロ』の主人公スバルくんにピッタリな、アニメの世界観を思わせる内容だったので、歌もその世界観に寄り添ったものにしようと思いました。


ーー歌を歌うときは、作品の主人公を自分の中に憑依させている部分も大きい?


鈴木:そうですね、基本的にアニソンを歌うときは、アニメの世界観に合わせることを5割、自分の気持ちを出すことを5割で考えるようにしています。単にアニメに寄り添っているだけだと、自分が歌っている意味が無くなってしまうと思うので。


ーーとはいえアニメの世界観に合わせるのは、アニソンシンガーの醍醐味でもあるのでしょうね。


鈴木:そうだと思います。「スバルくんだったら、こういう風に思うんだろうな」とか、「アニメの背景はこんな感じで」っていうふうに、映像を頭に浮かべながら歌うのはすごく楽しいですね。自分100パーセントの表現では、やはりそういうイメージまでは広がらない。アニソンを歌うことで、自分の中の可能性を広げられているのかなとも思います。


ーーこの曲のMV撮影では、黒と白の人格を一人二役で演じてましたね。


鈴木:いやー、これは自分としては挑戦でした。意外と「黒い自分」がファンの皆さんに好評でしたね。ちょっと挑発的な笑みとか、意地悪な女の人をイメージしたんですけど、それが好評だったということは、みんなこっちを望んでたの...?って(笑) 


ーー「意地悪な女の人」というより、いつになく大人のセクシーさが出てましたよ!


鈴木:ありがとうございます! 最初はただ単に「ガンを飛ばしてるだけ」みたいになってしまったんですけど(笑)、なんとか形になってよかったです。


ーーカップリング曲「メビウス」の印象は?


鈴木:“嘘になんて染まらないでいてね”っていうフレーズにドキっとしました。というのも、私がデビューのときからのポリシーが、「みんなに嘘はつかない」っていうもので。でも、デビューして4年が経ち、最近ちゃんとそれを守れているのかなっていうのを、改めて考え直す機会にもなりました。「もしかしたら、無意識な行動をして嘘をみんなについていないだろうか」とか色々考えましたね。これからも、自分が思ってもみないことを言ったりすることなく、自分にもみんなにも正直に行動したいなって思いました。


ーーそう思うようになったのはなぜ?


鈴木:ファンの人たちとは、友達とか家族のように常に一緒では勿論なくて。ライブのMCだったり、ブログやツイッターへの書き込みでしか、言葉を伝えることってできないわけじゃないですか。そこで自分じゃない言葉を使ってしまうのは、違うかなと。ファンの皆さんとは、揺るぎない信頼関係を作っていきたいとずっと思っているので、そこはこれからも守るようにしたいですね。


・「アニメに出会えて本当に良かった」


ーー小さい頃は泣き虫なうえに人見知りで、それを克服するためにダンスを始めたんですよね。


鈴木:そうなんです。幼稚園に入りたての頃は、泣き虫のレベルがすごくて(笑)、何を見ても泣くので、鍼治療にまで連れて行かれるくらいだったんですよ。それでも治らなくて、体を動かしてストレス発散させるのがいいんじゃないかと母が考えてくれて、それでダンスの体験レッスンに行ったんです。そこで演技も習いました。


ーー泣き虫で人見知りだった鈴木さんにとって、ダンススクールに通うのは嫌ではなかった?


鈴木:鍼治療までやっても治らなかった人見知りや泣き癖が、ダンスを始めたら治ったらしいんですよ。それ以降は、極度の泣き虫にはならなくなったそうです。まだ物心がつくかつかないかくらいの時期なので、あまりよく覚えていないのですが。たぶん、ダンスが嫌だったらやめていたと思うんですよね。楽しくやってたんだと思います。


ーー確かにそうですね。


鈴木:ただ、母から聞いた話によると、私は運動神経がなくて振り付けもなかなか覚えられなかったらしくて。レッスン後は家にビデオを持ち帰り、母がまず振り付けを覚えて、それを見ながら私が踊っていたんですね。そういうのを毎週やってもらっていました。


ーーいいお母さんですね。ダンスや演技を習ったことは、今の歌にも生きていますか?


鈴木:今も歌いながら踊ったりするし、ミュージカルに出演した経験は特に生きていると思います。キャラクターの気持ちを想像しながら、自分の気持ちとリンクさせて歌ったりすることは、アニソンも同じようなところがあると思います。


ーーMVの動きにも、非常にキレがあるのはダンスの影響ですかね?


鈴木:ありがとうございます(笑)。そうですね。ミュージカルも結構ダンスが必要で。それでダンスも続けていたので、ダンスボーカルにも対応できるようにっていうことで、走りながら歌っても声がブレないようにする練習などをしていました。そういうのが生きているんじゃないかなって思います。


ーーアニソンを好きになったキッカケは、『マクロスF』だったんですよね?


鈴木:はい。中学二年生の時に、隣の席のアニメの詳しい子から「アニメ、絶対に面白いから観てみて!」って強く勧められて、最初に教えてもらったのが『マクロスF』だったんです。家に帰ってすぐに観たら、ほんっとうに面白くて。二次元にしかできないようなライブシーンに釘付けになったんですよね。『あ、アニメってこんなにかっこいいんだ!』と感動したのが、最初のキッカケです。そこからどんどんアニメにはまっていきました。


ーー中学生活も一変したのでは?


鈴木:はい。ちょうどそのとき、自分の中でも色々なことがモヤモヤしていた時期だったんですよ。特に嫌なことがあったわけでもないんですけど、毎日が何となく退屈で。そのときに『マクロスF』を観て好きになって、それがキッカケでアニメ好きのクラスメートとの話がどんどん広がっていって。毎日がすごく楽しくなりました。夏休みなんて、もう1日中見ていました。ちょっと仮眠とってまた見て、みたいな(笑)。アニメに出会えて本当に良かったと思いますね。


ーー自分でもアニソンを歌おうと思ったのは?


鈴木:それまでJ-POPばかり歌っていたんですけど、『マクロス』をキッカケにアニソンばっかり歌うようになって(笑)。友達とカラオケへ行っても、アニソンばっかり歌っていました。アニソンって耳に残るので、歌いたくなるんですよ。しかもアニメ好き同士でカラオケへ行くと、1曲ごとにそのアニメの話で盛り上がったりして。


ーー楽しそうですね。影響受けたアニソンシンガーは?


鈴木:May'nさんですね。初めてライブを見たのがMay'nさんで、シェリル・ノーム(『マクロスF』の登場人物)の歌を、生で聞けたというのがとにかく嬉しかったし、ライブであんなに動き回って、全く歌声がブレないってどういうことなんだろう?って感動しました。あと、すごく印象的だったのが、ライブが終わったあとにMay'nさんが、一人ひとりに声をかけるような感じで、本当に丁寧に「ありがとう」って届けていたんです。歌はかっこ良いし、人柄は温かいし……。私もMay'nさんのようなアーティストになりたいなって思いました。


ーー2011年、アニマックス主催の第5回『全日本アニソングランプリ』で、10,223組という過去最大の応募総数の中から見事グランプリを獲得し、注目を集めました。


鈴木:まさか自分が優勝できるとは思っていなくて。最初は全然実感できなかったですね。実は、その前の年にも『アニソングランプリ』に応募していて。予選にも行かず書類で落ちちゃったんです。当時はまだアニメに詳しくなくて、ゲームやマンガを多少楽しむくらいの状態だったので、それが見透かされたんじゃないかと、今になっては思いますね。当然の結果だったな、と。で、その直後くらいにアニメを好きになって、それでどんどんハマってもう一度チャレンジしたら、グランプリになったので嬉しかったです。


ーー気合の入り方が、これまでとは全然違ったのでしょうね。


鈴木:自分でもそう思います。書類の時点から『マクロスF』の歌を絶対に歌う!って決めていましたし。


ーー「好き」のパワーってすごいですね!


鈴木:はい。伝わってしまうと思います。


・「みんなでライブを作っているような気持ちがある」


ーーその翌年にはテレビアニメ『黄昏乙女×アムネジア』の、オープニングテーマ「CHOIR JAIL」でプロデビューを果たしました。歌詞は、アニソン界ではおなじみの畑亜貴さんで、かなり厳しいディレクションだったそうですね。


鈴木:はい。最初、歌詞の意味がよくわからないままスタジオ入りしちゃったんです。もちろん、原作を読んだり自分なりに準備はしていたつもりだったんですけど、ちゃんと落とし込めていなかったんですよね。それが見透かされ、とても厳しくディレクションをしていただきました。それがとにかく悔しくて(笑)、逆に「やってやるんだ私!」っていう気持ちになりましたね。だから、畑さんのご指導があったからこそ、歌詞の内容を理解して歌うってことがちゃんとできたし、今でもそれが生きているのだなって思うので、とっても感謝しています。


ーー8thシングルの「Absolute Soul」では、奥井雅美さんとのデュエットにも挑戦していますね。


鈴木:いやもう、緊張しまくりました。大先輩ですし、レコーディングも見学させていただいたんですけど、2、3回くらいしか歌わないのにあのクオリティで。その集中力、瞬発力っていうのはすごいなって思いました。それまでの私は、エンジンがかかるまで時間がかかってて、結構歌いこんでしまっていたんですけど、奥井さんのレコーディングを見てからは、自分の中でもレコーディングが変わってきたのかなって思います。


ーー他のシンガーさんの歌う現場を見る機会って、実はあまりないですものね?


鈴木:そうなんです、滅多にないことなので、とても貴重な経験をさせていただきました。


ーー2016年1月11日には、アーティスト活動に専念するため、大学を休学して上京していた事を告白し、事務所をMAGES.(アミュレート)に移籍したことも発表しました。


鈴木:より一層、歌手として成長していきたい気持ちが強くなったと思います。上京を決めたのが東名阪を回ったファーストライブツアーで、みんなの顔を見ながら歌っているときに、「やっぱり私は、歌っている瞬間が一番好きだな」っていうふうに思ったので。通っていた大学をお休みして上京することにしました。


ーー卒業を待ってから上京しようとは思わなかった?


鈴木:最初はそれも考えていたのですけど、歌が大好きな自分に気づいてしまったら、「もう今すぐにでも歌手に専念したい!」って思ったんです。やっぱり、大学に通いながら歌っているときと気持ちの上でかなり違いますね。何か不安なことがあったときは、大学でリフレッシュできたりとか。逆に、単純に移動に時間を取られて、お仕事に今ほど時間を割けられなかったり。そういった意味では、前は逃げ場がある環境だったんだなと。


ーー退路を絶ったということですよね。お母さんは反対しませんでした?


鈴木:意外にも応援してくれました。「やりたいことをやったらいいよ」って。小さいときから、母ともう二人三脚みたいな感じでずっと一緒に夢を追いかけてきたので、上京して母と離れるってなったときは、正直、不安な気持ちがなくもなかったんです。心配性の母なので、「私が東京に行っちゃって大丈夫かな」と思って私の方が心配で(笑)。でも、あるとき母から手紙をもらったんですよ。「このみが頑張っているから、お母さんも頑張れる」っていうふうに書いてくれてて。それを見て心を決めました。


ーー上京してきて、最初のうちは不安じゃなかったですか?


鈴木:1日目の朝は、正直泣きましたね(笑)。引越しの手伝いで来てくれてた母が、大阪へ帰った日の翌朝。起きて誰もいてないのが、ちょっとホロっときちゃいまして。「あ、わたし本当にここで一人で暮らしていくんだな」っていうふうに、やっとそこで実感がわいたのでしょうね。いつも母親に起こしてもらってたし、しかも自分の部屋じゃなくてリビングにいて、家族の誰かしらとおしゃべりしてたから(笑)。それがなくなって、当たり前なんですけど寂しいなっていうふうに思いましたね。


ーー引越しして3、4ヶ月経ちましたが、もう慣れました?


鈴木:慣れました! 1日目は本当に寂しかったんですけど、泣いたらスッキリしたのか、次の日からはコロッと元気になって(笑)。意外と大丈夫でしたね。一人暮らし、楽しいです。幼なじみの友達もちょうど大阪から引っ越してきてたりしてるので、泊まりっこするなど自由に暮らしています。ありがたいことに、毎日何かしらの仕事や用事があって、外に出かける機会も多いので、あまり孤独を感じずにいられるのも大きいのかなと思います。決心して実際に出てくるまでの方が不安でしたね、未知のことですし。やってみると、意外と何とかなるんだなあって思いました。


ーーさて、デビューして4年が経ちましたが、自分でも成長を感じますか?


鈴木:例えばライブのとき、お客さんの反応を以前よりもちゃんと確認できるようになりました。「あの人、すごくいい表情してるな」とか、「あ、この曲はこういう反応なんだ、じゃあ次はセットリストを変えてみよう」とか。いい意味での余裕が出てきたのかなっていうふうに思います。MCに関しても、今の方が素直に言葉を届けられているのかなと思います。デビューしたての頃は、「これ、言ってもいいのかな」とか、「あれはやったらマズいのかな」とか考えてしまい、結局言わずじまいだったことも多かったんです。でも、この4年間でみなさんとの信頼関係が築けてこられたのもあって、最近はかなり安心して自分の言葉を伝えられるようになりました。みんなでライブを作っているような気持ちになってきていますね。ステージ前は、未だに緊張はしますけど(笑)。


ーー今後、挑戦したいことはありますか?


鈴木:20歳までに、ワンマンライブを20回やりたいと思ってて、今、ライブを沢山やらせていただいているんですけど、できればプラネタリウムでやってみたいんですよ。小学生の頃、自由研究でブラックホールについて調べるために、一度プラネタリウムに行ったことがあるんです。


ーーブラックホール! またマニアックですね(笑)。


鈴木:はい(笑)。それがすごく楽しかったのが、すごく印象に残っていて。プラネタリウムでライブやったら、すごくロマンチックなんじゃないかなって。わたしの曲の中には、「星」にまつわる曲が幾つかありますし、アコースティックセットでぜひ、やってみたいです!(取材・文=黒田隆憲)